当記事は、弊社が過去に開催したオンラインセミナー「組織改善Week」より髙木敏光氏の『地方×製造業 働き方改革、人材確保の取り組み』を書き起こしたアーカイブレポートの再編集です。
(当アーカイブは、該当セミナーを2回に分けてお届けしています。なお、講師の先生方の肩書などについては講演当時のものです。)
高木氏:
少し古いデータにはなってきますが、香川県内企業の取り組み状況としては、長時間労働是正、多様な働き方への対応、また、賃金格差の是正といった順番です。ほとんどは長時間労働を是正していこうという流れです。

従業員規模別で見ても、どういった規模でも同じように長時間労働を是正していこうといった改革が多く見られます。
これは4年前のデータですから、ここからまた一つフェーズが先に進んでいる可能性はありますが、こういう形になっています。
では実際に、従業員の規模別に働き方改革はどれだけ進められているのか、進めていく上で取り組みに対する障害となっているものは何なのか、というところを見ていくと、規模を問わず一定数なのが、業務が手一杯であることが挙げられます。
人材難とも直結してくるところかとは思いますが、まず、業務で手一杯であることです。またその他、規模が大きい会社に見られる傾向として、従業員への説明が挙げられています。こういったところが障害になっています。
それから、50人未満の規模の会社では「支障なし」が24%ですが、他についてはほぼほぼ10%程度で、90%程度の会社さんが取り組みに対する何らかの障壁があると感じている傾向にあると思っております。

統計の資料およびデータについてお話をさせていただきましたが、こういった厳しい採用環境の中で、働き方改革とどのようにつながってくるのかを含めてお話をさせていただきます。
この厳しい採用環境を打破して採用を押し進めていくということに関しては、正直、飛び道具はないと私自身、実感をしております。
地道に一つずつ積み上げていくしかありません。そういった意味で働き方改革というテーマは非常に重要になってくるのかなと考えております。
飛び道具はないという理由に関わってくるのですけれども、この募集という行動を単体としてみれば、会社にとって入口です。
「募集単体だけの施策を見直すのではなく、採用活動は会社の組織、社員の役割、会社という容れ物の構造を見直していくことの延長線上にその募集の手法、募集の戦略があると位置付けていく必要がある」かと思います。
ですので、この採用改善をしていく中では、会社の組織、個々の役割の再定義、会社の制度の構造改革の必要性を強く感じています。業務内容に応じて勤務体系を見直し、多様な働き方に対応できるようにします。これは働き方改革の一環というところになってくると思います。
業務の内容です。例えば先ほど、弊社の組織図をお見せいたしましたけれども、営業職、製造職などざっくりある枠組み、また、この職種による壁の部分は、再度内容を細かく見直します。
例えば、勤務体系はオフィスワークでなければいけないのか、これはリモートでもいいのではないかなど、業務内容を細かく見ていくと、色々と手をつけられるところがあるのかなと思います。
既存の事務職、営業職といった括りではなくて、例えば社内営業職などの業務内容に応じて勤務体系自体を考えます。また、勤務体系に合わせて業務内容を整理していくなど、多様な働き方に対応できるように個々の役割自体も整理をしていく必要があるのかなと考えております。
それと併せて、採用だけではなく勤務する上で求められる職種別、役割別の人物像を定義していきます。
必要な人材の再定義という根本のところから手を付けていくというのが非常に大事かなと考えております。
ジョブスキルとヒューマンスキルと書かせていただきましたが、ジョブスキルは職務執行上必要になってくるスキルです。また、ヒューマンスキルは会社の中で生活・働いていく中で、必要になる立ち振る舞い、また、すべての職種に共通する、求められる人的スキルです。こういったところを色々な形で定義をしていく必要があろうかと思います。
そして、勤務形態に応じて採用活動の枠組みを再構築していくという形です。
例えば、開発職、設計職というものがありました。これまでであれば、社内の開発室内で業務を行っていました。この業務を一部リモート化してしまえば、この採用活動においてもこの香川県内というところの枠組みを取っ払って、全国から人材を募集することができます。一例ですけれども、この勤務形態に応じて採用活動の枠組み自体を再構築していくというところも必要かなと思います。
そして、先ほどの役割別の人物像についてお話をさせていただきましたが、これに求められる力を醸成していくという意味で、育成と定着が重要です。採用による社員数のプラスも大事ですが、社員の定着により社員数のマイナスを極力少なくしていくというところも必要です。育成と定着化に注力し、働きやすい環境を作る必要があります。
また、どのようにすれば従業員それぞれが評価されるのかというところを再構築して、さらにその項目・定義をオープンにしていくことで、自らのモチベーションのあり方を持ちやすくしていくということにも取り組んでいます。
また、働き方改革や人材難への対応と関連しよく挙げられるものとして、DXというテーマがあるかと思います。こちらについては社員を巻き込んで推進をしていくということが無駄なく成功する近道なのかなと考えています。

いくつかポイントをお話しさせていただきましたが、実際にどういったことをやってきたかという事例を簡単にお話させていただきたいと思います。
髙木綱業では、ここのところ新卒、第二新卒の採用、若手中心の中途採用を推進しており、現在社員の半数以上が最近10年以内に採用してきた人材となっております。
現在、平均年齢は46歳と書かせていただきましたが、10年前頃平均年齢は50歳を超えている状況でした。そこから積極的な採用を展開していくことで、社員の半数以上を最近10年以内に採用という形に若返りすることができたかなと考えております。
採用活動においては、自社サイトを構築して、そこに掲載をする内容の整理をしていく一連の業務自体を募集内容のフォーマットとし、そこで整理された情報を活用して、いろいろな採用方法、採用メディア、採用イベントなど多面的に展開するというやり方を進めてきました。
そもそも、ここは弊社の特殊な事情ですが、この業界は、基本的に経験者はいないというところです。そもそも繊維ロープ製造業は、超絶激レアな珍業種ですので、基本的には未経験人材しかいません。未経験者でも前向きに吸収して動ける人材を積極的に集めていくという手法を取りました。業界の正解が存在しないという形の会社で、新事業も仕組みも一緒に作っていこうと。そして、ベースとなるカルチャーを取り入れられる人材を尊重していきます。こういう面は、入ってからの評価の仕組みにつながっているところです。

それから、専門的人材です。
例えば開発エンジニアや企画の人材などの専門的業務、また、営業職については、この業務のオペレーション自体を見直して、遠隔勤務を交えた組織づくりというところを進めてきております。どうしてもこの地方、この香川県は、専門性を持った人材が少ないという背景がありますので、こうすることで地元には少ない専門性を持った人材を確保しています。
そして、Uターンとリモート勤務です。
例えばリモート勤務については、ある程度このリモートを解禁したことで、新たな募集が増えてきたこともありますし、リモート人材を受け入れられるように業務のオペレーション自体の見直しを図ることは、専門人材の確保やUターン採用を推進していく上で、キーになってくるのではないかなと考えています。
また、その他の職種についても社内のDXを推進していくことで、それぞれの職種の採用枠の多様化にもつながるのかなということで、現在進めております。
もう1つ、面接の時点で、求職者のキャリアの広がりについて重点的に問います。
どういうことかと言うと、営業職、事務職、製造職といった職種の名前です。
求職者が検索する上で入口になってくるところかと思いますが、職種名だけではどうしても会社の中身、仕事の中身が見えません。ざっくりと事務職と書いてあったとしても、いわゆるこちらの社内で考える事務という役割だけではなくて、例えば「オフィス内勤務であれば、営業的な業務もOKですよ」という意味合いも含む可能性もありますので、既存の業務自体を、外出や内勤などという枠を一度取っ払って、顧客との会社としての接点の多角化を考えます。
こういうところをベースに職種というところを社内で組み替えていくことは、受け入れの可能性を広げる上では重要になってくるのかなと考えております。
先ほどお話した中で香川県内の女性の希望職種の約半数が事務職とありましたが、こういった人材を本来他の職種が行なっていた業務にも業務の枠組を工夫することで積極的に活用し、活躍の場を広げていくということで、人材確保の可能性が広がるのかなと考えております。

人材育成・定着の面では、会社のカルチャー自体を色々な形で見えるようにしていくことが根本として重要になってくると考えています。
会社の世代交代を図っていく上で新しいカルチャーを意識定着させるために、顔の見えるオープンな組織、個々が役割を持って考えて行動ができる組織にしようというメッセージを発してきました。
会社のカルチャー自体を変えていくことで、既存の社員と新しく入ってきた社員に壁ができないようにする上でも、新しいカルチャーを作る基礎として、創業期から受け継がれた社訓のエッセンスを根本に置きつつ、再構築をしていく。それを人事評価基準作りと共有していきます。
どういったことをすれば評価されるのかを、この会社のカルチャーの要素を分解してそれを評価基準に反映させる、落とし込むといった形を進めてまいりました。その評価項目については、社員と共有、公開をさせていただいて、自分の評価が上がるためにはどうすればいいのか、次の年の各部門での育成プランや個々のキャリアプランに反映をするという形を進めています。

カルチャー面からの落とし込みで、特に重きを置いたのは「誇り」と「チャレンジ」というキーワードと書かせていただきました。例えばこのように定義づけをしました。
①「仕事や商品が社会の役に立つこと」で、会社の事業の方向性にも反映されています。
製造業として「作る」だけでなく、社会基盤を担う顧客の「役に立つこと」に関する全てのプロセスを商品と考えることで、各職種の業務の向かっていく目線が顧客への役立ちという位置づけ、全職種共通の目線としています。そういったところから評価制度とも連動させていきます。
②「会社が長く働きたい職場であること」です。
このためには社内制度と環境の整備、家庭環境や生活に合わせた幅のある制度の整備、能力や志向に合わせた力の生かし方を評価できる制度の作り方です。また、社内のコミュニケーションを実現するための仕組みやツール作りも進めてまいりました。
③「社員が社内から信頼や敬意を持たれること」で、全社員の行動姿勢といったところです。
こちらは、先ほどの評価基準の中のヒューマンスキルにもありましたが、特に評価を多方面にしていく中で重視したところが、「とにかく新しいことをやっていこう」さらに、「上昇志向を持ってやっていこう」という形です。こういった社員を評価するという比較的分かりやすいところでもありますが、やはり縁の下の力持ち的に一つのことに集中してコツコツやっていくタイプもいます。それぞれの志向を持った社員が会社を前に進めていく上で非常に大事なメンバーとなってきますので、そういった色々な要素が多面的に評価されるような仕組みづくり、制度づくりを意識しました。
評価制度を再構築したことで求める人材像や求めていく力がどういったものなのかが会社全体に共有されやすくなります。採用後の定着を考えた上でも非常に重要になってくるところかなと思います。


働きやすさへの取り組みというところで、ご紹介させていただきたいと思います。
一つは「ライフステージの変化に対応できる組織、社内制度づくり」です。
子育て、結婚などのライフステージの変化に対応しやすい社内体制づくりを推進してきました。
これは、若手の社員だけでなく、ある程度の中年層以上のベテランの社員に関しても、将来的に介護を控えている社員がいます。今後の働きやすさや、昨今特有の事情として感染症による社員の突然の休職などへの対応にも活用できます。こういったことを進めていくことで、社会の変化や突発的事項にも柔軟に対応できるベースができたかなと考えております。
この一環で、「くるみん認定」を取得しました。
「くるみん認定」は申請してすぐに取れるというわけではなく、取り組みとしては2019年頃から進めてまいりました。2019年から管理職、社員への育休関連の法・制度に関する研修、社内制度の整備をしました。
それから、有給消化向上策などといったところを並行して実施をしてまいりました。また、さらに実際により本格的に進めていく上で必要だったある程度の業務ローテーションが可能になるような社内人材のスキル管理を整備しました。これは先ほどの評価制度の整備ともセットになってきますが、社内人材のスキル管理を整備して、複数の業務が持てるようになります。業務の代わりはいても、人の代わりはいないということです。業務自体は他の人に代わってもやっていけるというところを徹底してきました。
昨年2021年、育休消化に関する目標数値を設定・公開して、対象者の積極活用を促してきたことと、管理職向けには本格的に進めていくという旨を周知をしてきました。この期間における目標を達成し、具体的には、ちょうど昨年は男女ともに育休取得率100%を達成をして、2022年に認定を取得しました。
ここまで取り組んできたことの事例を社内でのモデルケースとしながら、その定着や制度の修正を現在も進めています。
その他、雇用形態の選択肢を増やしました。
これはよく短時間正社員というところがあるかと思いますが、弊社の場合は短時間ではなく、一部のピンポイントでの「フレックスの導入」や出勤日数がフルタイムの正社員とは異なる「週3勤務の正社員」などといった形です。これまでにも正社員、パートだけでなくて、準社員や日数の少ない形の正社員など、様々な形の雇用形態の選択肢を増やしてきました。遠隔採用のまま、遠隔勤務といった社員も中にはいます。
また、残業を減らすという意味で、残業を完全に事前許可申請化いたしました。
どうしても繁忙期などはありますので、そういったところは残業して、不必要な残業が増えた者に関しては、査定上影響してくるという形になります。
そして、段階的な業務のクラウド化です。
ある程度リモートでの業務が必要になってくると、セキュリティ上の問題などもあります。そういうところを一元的に見られるようにするために、色々な業務について会社内の業務について段階的にクラウド化を進めています。
現時点で進めているところとしては、社内の生産管理などのシステムです。これをクラウド上で行える仕組みの開発を進めています。これまで社内のオフィス関連の業務などを皮切りに、できるものから随時やっていき、さらにフットワークを軽く、色々な働き方ができるような会社にしていこうという取り組みを現在も進めています。
いくつか細かいことなど抜け漏れがあるかもしれませんが、一旦今回のお話としては、ここまでで締めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
| 初出:2026年04月16日 |





















