当記事は、過去に開催したセミナーイベント「組織改善Weekオンライン」にて、弊社代表取締役・鎌田長明が登壇した講演「ストレスに悩まない職場をつくる~3つの大切なこと~」の内容を書き起こしたアーカイブレポートです。
当アーカイブは、該当セミナーを全4回に分けてご案内する第4回となります。
第3回 « 「ストレスに悩まない職場をつくる~3つの大切なこと~」【4】(鎌田長明セミナーアーカイブ)

情報基盤開発 代表取締役・鎌田:
3つ目のお話として、この「アクションを起こすことの重要性」があります。

実際にこのような活動やってみて起こることは、職場改善のアクション実施というのは非常に難しいということなのですね。というのは、色々な社会心理学的な条件というものが職場改善を阻んでいるからです。

1つ目が「恒常性バイアス」。
「正常性バイアス」ともいいますけれども、深刻な状況が起きているのに、それが異常状態ではなくて正常範囲のことのように軽く捉える心理であります。
例えば自分の体のことでいうと「健康診断に行かなくても大丈夫」「異常値が出ていても大丈夫」ですとか、さらには「痛いけど大丈夫」など、のように異常なことが起きているにもかかわらず「まぁ大丈夫」だと思ってしまう心理ですね。心の面でもそうですね。「ストレスを感じているけれど大丈夫」とか、「頭痛やめまいなどの身体症状が出てるけど大丈夫」とかですね、さらには「不安障害やうつが出ているけど大丈夫」と思ってしまう。これはどういうことかといいますと、過剰なストレスを回避する心のメカニズムが働いてしまうということであります。

また「傍観者効果」というものもあります。
傍観者効果というのはある事件に対して、自分以外にも傍観者がいるときに率先して行動がなくなる心理ですね。ですからよくいわれるのが、例えば駅で人が倒れているとき、「誰かが助けるだろう」ということで通り過ぎてしまう活動です。職場改善でいうと、過重労働になっている人がいても「誰かが助けるだろう」「上司が助けるだろう」と思って見過ごす。また顧客からのクレームが起きても、「誰かがやるだろう」と思ってしまう心理であります。自分の仕事でないというよりは、必要なことはわかっているけれども、自分ができることはわかっているけれども、誰かがやるだろうからやらなくていいのではないだろうか。そういう話になるわけですね。するとどういうことが起きるのかというと、多元的無知と責任分散という、ちょっと複雑になりますので割愛させていただきますけれども、こういう社会的心理によって傍観者効果が起こってきます。

そして3つ目が「評価懸念」というものですね。
何か行動起こして失敗してしまうぐらいならはじめから何もしないほうがいい。余計なことをしたら怒られるのではないか。「あの人いい格好をしいてる」と陰口を叩かれるなどの評価の懸念ですね。これは色々な原因ありますが、多くは過去の経験によるものだといわれています。良かれと思ってやったことでも、叱責をされたり陰口を叩かれたり、また批判されたり。こういったことが評価懸念につながります。特に日本人の場合はこの評価懸念が非常に大きいといわれています。

この3つに対して、ではどうすればいいのかということですけれども、まずこの恒常性バイアスに対しては、何が異常なのか・どう対処できるのかを知ることが有効であるといわれています。また傍観者効果に対してはシミュレーションですね。実際にこういうことが起きたらどう動かなければいけないのか、いわゆる避難訓練みたいなものですね。避難訓練だったり救助の訓練をする。こういったことで傍観者効果を防ぐことができるということです。
また評価懸念に対しては明確な行動ですね。こういう行動すればいいんだと、そしてそれが認められる、積み重ねることが有効だといわれています。
そこで職場改善という取り組みでは、職場ごとのアクションプランの検討会及び説明会をおすすめしています。また、傍観者効果や評価懸念に対してはピアボーナスであったり、実施の記録をつけて承認をするなどの活動をおすすめしています。

まずこの職場ごとのアクションプランの検討会及び説明会とはどのようなことなのかですけれども、ストレスチェックの集団分析をどう生かすか、というところで行われる活動です。
職場改善は4ステップあります。まずストレスチェックの結果を読み解いて、その意味を知ること。そしてその原因を考え、部署内で改善目標を計画してやってみること。この4ステップですね。

PDCAにしてみますと、①ストレスチェックや組織サーベイを実施して、②調査分析し、③アクションプランを検討して、④アクションプランの説明会を実施。そして⑤改善アクションを実施・⑥評価していく。こういうこと回していく形になります。

事例を紹介させていただきますと、「単純作業に働きがいを見つけ出す」というお客様がいらっしゃいました。
ある工場さんのケースなんですけれども、ストレスチェックを行ってみますと「仕事に意義」であったり、「技能の活用」であったり、「職場の環境」が悪いことがわかったそうです。そこで改善活動を計画しました。それぞれの仕事に働きがいや責任を持つためにはどうしたらいいのか、というようなことを検討していただいたわけです。

そこで発見されたことが、ただマニュアル通りの仕事を強要されると無気力に陥ってしまうという、「学習性無力感」が起きていました。

実際に起こっていることとして、「作業やりっぱなしで休憩に行ってしまう」とか「業務の改善策が言い出しにくい」という声が上がってまいりました。
これに対して改善策を考えました。交代で休憩に行くときには、同じポジションのメンバーに声をかけて些細なことも引き継ぎを行ったり、休憩室にマニュアルの改善見直しのために気づいたことを書き込めるノートを設置して、部署会議で話し合うということを決めたそうです。そしてこれを実施したところ、実際に改善があったことがわかりました。翌年の集団分析でも、「仕事の意義」や「技能の活用」に改善がみられたそうです。

このような検討会をどのように行うかですけれども、まず検討をするにあたって重要なことは、多人数でやらないということですね。あまりに多人数でやってしまうと、なかなか話が多方面に渡ってしまうことになります。
しかも、この検討会で重要なことは、「1.『何が問題になっているのか』を固定する」ことです。
こういう検討会を実施するとよくあるのが「あれが問題だ、これが問題だ」ということで問題が山積みになってしまうということですね。やはり個人の感想だけで改善策を作ろうとすると、その人が注目しているところばかりになってしまうことになるわけです。ストレスチェックを行って問題を抽出しているわけですから、その問題に集中して議論をすることが重要です。
そして、「2.問題を発生する状況を抽出する」、ここが重要ですね。
要は具体的に問題になっていることが何かがわからないと、先ほどのいわゆる正常性バイアスが働いてしまうからということなんですね。なので作業やりっぱなしで休憩に行ってしまうとか、業務の改善策を言い出しにくいだとか、こういう具体的な問題が発生している状況を抽出していくことに価値があります。
そして、ではそれを解決するための「3.アクションを検討する」です。
このような形で検討されたアクションに対して、このアクションをただ実施しようというだけでは不十分になります。

なぜこのようなアクションを行うのかをしっかりと説明することに非常に重要な価値があります。
何が問題になっているのかをまず共有して、そして先ほど抽出された問題が発生する状況、これを共有していただく。ここが重要です。「こういうことが問題なんですよ」ということを認識していただかなければ改善がないわけです。
そして、実際にアクションについては、単に「こういうアクションやりましょう」と言葉で言うだけではなくて、実際にやってみせることが重要です。例えば、交代で休憩に行くときに声をかけて「些細なことを聞きましょう」と口で言っても、実際にどうするのか、具体的な行動につながらない場合が多いんですね。なのでシミュレーションとしてやってみる。それによって非常にやりやすくなります。またノートに書き込むといったら、実際に書き込んでみる。こういうことによって、先ほどの傍観者の行動を防げます。
このような3ステップを取ることによってしっかりと説明ができて、そしてアクションが円滑に実施されるということになります。説明会をそんなに長くやる必要は実はありません。この3つはやるだけであれば、15分もあれば充分です。しかしながら、これをやっているのかやってないのかだけで、アクションの結果というのが全然変わってくるということがわかっています。

そしてこの3つ目の評価懸念というところですね。明確な行動と承認をしていかなければいけないわけです。このアクションをやるときこそ明確な行動が決まっているわけなので、アクションに対して承認をしっかり与えることが評価懸念を払拭する、職場の心理的な安全性を作るということにつながってくるわけです。

色々な方法があるわけですけれども、近年よく行われているのが「ピアボーナス」というものですね。
従業員が仕事における成果・貢献・サポートに対して称賛をする取り組みであります。このピアボーナスを取り組んでいる企業は結構ありますが、「ありがとう」というメッセージで終わってしまう場合が多くあります。
しかしながら、職場改善にこのアクションとピアボーナスを絡めると非常に効果が出るといわれています。また、心理的な安全の醸成にもつながることになります。ただこのピアボーナスはなかなかシステム利用料もかかりますし、ボーナスの金額もかかってきますので、コスト面で支障があるという場合が少なからずあります。
そこでおすすめしているが、次の「実施記録&承認」です。

アクションを実施したら記録をするというものですね。やった時だけ記録をする、もちろん自己申告で結構です。紙のチェックリストでもウェブフォームでも構いませんけれども、こういう形でアクションの記録をしていく、やったよということを記録してもらう。これが非常に有効であります。
そして、定期的にそれを確認して、「実施ができているね」と認めるということですね。やってないことを批判する場ではありません。やっていることを承認する、積み重ねていくことによって、心理的な安全性を作っていくことができるようになるわけです。
このような職場改善のアクションに特効薬はありません。色々な研究がなされていますけれども、どんな状況でも必ず効果のあるアクションというものはほとんどないことがわかっています。
しかしながら、PDCAを回していけば、2〜3回目でほとんどの場合は変化が起こるということもいわれています。特にアクションプランのアイディアがなくなったときが1つのチャンスであります。要はパッと出てくる解決策というのはそれができる時はいいですけれども、できなくなったときにそこで止まってしまうということがございます。
しかし、その止まったときに動かしていくことが職場を変える最大のチャンスです。職場改善のためのヒント集もございますので、そういうものをご利用していただいて、ぜひアクションプランを立てていただきたいなと思います。こういうことをやっていくと、単にメンタルヘルスお話だけではなくて、作業効率の向上といった、職場に課題解決の手法をビルトインすることができることにもつながります。


最後のまとめとしまして、「ストレスに悩まない職場をつくる」ということで3つをご紹介させていただきました。
1つ目に、経営層から長期的視点を共有すること。2つ目に、管理監督者を支援すること。そして3つ目に、職場の改善のアクションを具体的に起こしていくこと。
この3つを推進していくことで、職場は必ず変えられると思います。
すべての職場がよりストレスに悩まない職場となって、そして従業員の皆様が働きやすく、企業に長期的な利益が上がる。そういう社会を目指していけることを私たちは目指しています。
ぜひ皆様の会社でも取り組んでいただければ幸いです。
以上で、私の話を終了とさせていただきます。ありがとうございました。
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| 初出:2026年05月19日 |























