ビジネスの形や在り方は時代とともに大きく変化し、現在あらゆるビジネスが展開されています。特に、IT技術の進化がビジネス業界に及ぼす影響は少なくありません。
ですが、どんなに時代が変わっても会社は一人ひとりが集まって作る「組織」。
会社を維持し続けるためには、どんな経済状況でも柔軟に対応できる組織力が必要不可欠です。
組織力の向上のために、会社や部署、プログラムに関わる人の「チーム」についての分析を活かし【チームビルディング】を技術として取り入れることにフォーカスする企業が増えています。
チームビルディングには会社の組織力を高め、早いビジネス展開を可能にする効果があるため、変化し続けるビジネスにも柔軟に対応できるでしょう。
今回は、チームビルディングの概要から、チームビルディングを行うメリット、そしてその具体的な方法まで紹介していきます。
チームビルディングとは?
「チームビルディング」とは、目的達成のため「より良いチーム」を作るテクニックです。
一人では成し遂げられない目的を達成するとき、私たちは誰かと助け合います。同じ目的に向かって協力する人間の集まりが、「チーム」なのです。
チームの目的には「チームで達成する必要」があり、またその目的を確実に達成するためには達成できる力のあるチームでなければいけません。
チームのとらえ方はさまざまで、たとえば社内のプロジェクトを進めるための少人数の集まりをチームとするのはもちろん、企業全体を一つのチームとする見方もあります。
目まぐるしく変わるビジネスの世界で勝ち残るためには、企業において大なり小なり起こる「チームビルディング」の取り組みが必要とされています。
「達成」のための集まりが「チーム」
「チーム」とよく似た言葉として「グループ」があります。
チームとグループの大きな違いは、『目的の有無』です。
グループとは「人が集まっている状態」のことを指しており、共通点を持つ人々が集まっていることをグループといいます。いうなれば同じ部屋にいる、同じ苗字を持つというだけでもグループたりえます。
一方、チームとは「何かの目的を持った集まり」のことを指します。チームの目的を達成するために、みんなでアクションを起こすために集まっているところがグループとは異なる点です。
チームは集団内のひとりひとりが自身の能力を発揮できる関係性を持つため、一人では到底成し遂げられない目標もチームで活動するなら達成が可能です。
企業は理念に沿って収益を上げることを目指す「チーム」です。その中でも、各プロジェクトや課題、業務によって何個ものチームを組まなければならないでしょう。
その時、「よりスムーズに構造化されたチームを組み立てられるか」が企業のパワーとなってきます。
チームビルディングは企業にプラスの効果
チームビルディングをうまく活用できる企業には、どんなメリットがあるのでしょう。
- 経営やプロジェクトの運営に必要な情報が集まりやすく、判断に素早さが生まれる
- 従業員ひとりひとりが能力を発揮できる環境、関係に
- 問題点の発見やインシデントの報告がしやすく、対応にも応用される
メンバー同士のコミュニケーションが円滑になれば情報共有がスムーズになり、経営やリーダーの判断に必要な情報がつかみやすくなります。これからの情報化社会、判断の素早さや正確さには欠かせないメリットです。
また、チームとして活動することで、報告や相談のハードルが下がり個々の能力が発揮しやすい環境を整えることが容易くなります。従業員一人一人の持つ能力を存分に発揮できる環境では、質問力や問題解決能力が上がり業務効率化や結果にコミットする活動が盛んにおこなわれるというデータも見られています。
また、チームビルディングがきちんと機能すると、各従業員間のコミュニケーションが深まり他人の価値観や考え方を受け入れる能力が養われる効果が期待できます。
企業によるチームビルディングの取り組みは、会社としてだけでなく従業員にも大きなメリットをもたらすのです。
チームビルディングで目指すべきは「円滑化」
チームビルディングにも、目指すべき「目標」があります。
通常ただ作成しただけのチームでは、チームとして望まれるような効率的な機能を果たすことはありません。
チームを作成したとしても、メンバーのひとりひとりが能力を発揮できない環境であればそれは単なる個人の集まりです。円滑なコミュニケーションを取り、全員が同じビジョンを持つことで、はじめてチームとしての機能が果たされます。
そのために、チームビルディングでは「理想のチーム」を作るために以下の要うな問題の解決を目標とします。
- コミュニケーションの円滑化
- 適切な人材活用
- マインドセットの形成
- ビジョンや目標の共有
チームビルディングは「強いチーム作りの要素を分析」し、「チームが機能しない問題を解決」するためのメソッドが込められているのです。
チーム作りの要素を「ステップ」で理解
チームビルディングを始める時、ただやみくもに企画や交流を行っても効果はありません。
チームである、ということは「チームとして各々のスキルを活用しないと達成できない目標がある」ということです。
リーダーになった、またはチームビルディングを行おうとする立場なら、まずは チームを構成する一人一人がどんな要素をもっているのか、それを確認することが重要になります。
今、チームにはどんな目標があるのか、そのためにチームに誰が所属しているのかから始まって、所属するメンバー一人一人がどんな能力をもってどんなことを課題としているのか、メンバー同士の関係性はどうなっているのかを理解しましょう。
「集まり」から「チーム」になる5ステップ
チームビルディングの中核をなす、「タックマンモデル」というモデル理論があります。
チームとなっていく過程を【 5段階のプロセス 】に分け、その特徴をモデル化したもので、アメリカの心理学者ブルース・ウェイン・タックマンによって提唱されました。
タックマンモデルによるチーム形成の5ステップ
- Froming 形成期
チーム形成初期、メンバーは互いのことも共通の目的等も分からない状態です。穏やかに見えるような雰囲気のチームもありますが、緊張や遠慮といった感情でうまくコミュニケーションが取れていません。
- Storming 衝突期
チームの目的や各自の役割等について、意見や衝突が見られるようになる時期です。関係が対立したり、個人的な意見が衝突することもしばしば起こります。話し合う姿勢、責任を果たしたという実績が求められます。
- Norming 統一期
メンバー間の関係性が安定し、 チームや各人の目的に対して自分が どう動けばいいのかを各自が理解した時期です。メンバーの個性や情報共有が活発化し、チームの目標に向けて徐々に意欲や意識が高まっていきます。
- Performing;機能期
目標達成のためにメンバーの意識が一段となって活躍する時期です。自分から主体的に提案や活動を行ったり、他のメンバーと相互に高めあうなど成功体験に向けてメンバーシップも深まっていきます。
- Adjourning 解散期
目標の達成や契約・期限の満了といった様々な理由で、チームは解散をします。築いた関係や経験を自分のものとして次のチームで生かすべく振り返りましょう。
全てのチームはこの5ステップを経て、様々な人の間で繰り返されていきます。
逆に言えば、チームビルディングはこの5ステップを簡略化できても避けることはできません。
うまくいくチームには「安心」がある
様々なコンテンツを生み出すGoogle では、良いチームの条件として「心理的安全性」が確かである関係が必要と分析しています。
チームを作る目的として「一人ひとりの能力を発揮できる場を作ること」が、チームの利点として 「円滑なコミュニケーション」 や「互いの背景の理解」があります。
安心して発言できる関係性はチームの信頼関係を作る上で基礎となる、欠かせないキーポイント。形成期・衝突期がうまくいくかどうかは、「衝突してもチームメンバーとして認められている」という信頼あってこそです。
「このチームなら失敗や新しいアイデアも何でも言える」という信頼感、これを「心理的安全性」としてGoogle は社内チームの評価指標の一つに据えています。
また、チームには個人的な信頼の他に「きちんと業務をこなしてくれるか」というのもまた別個の“信頼”です。
メンバーが互いに信頼を獲得できるよう、それぞれに振り分けられた業務の内容と各人のスキルのマッチングや量・業務の目的の把握はチームを預かる「リーダー」の大事な役目でもあります。
具体的なチームビルディング
前述した通り、うまくいくチームへ成長するためには 「形成期」 「混乱期」の存在は避けられません。
この時期を「面倒になるから……」と避けずに、どう短縮するか・乗りこなすかが会社の中で効率よく“いいチーム”を作るポイントです。
なるべく業務をこなす中でチームビルディングが行えれば最良なのですが、関係を深めたり互いの意見を話し合う場というのは、改めて設けないと日常の中ではなかなか作れないもの。
そのために有効なのが「ワークショップ」と「イベント」です。二つの特徴を見てみましょう。
ワークショップ
チームビルディングの取り組みのひとつとして「ワークショップ」があります。
ワークショップとは、言い換えれば「参加型グループ学習」のことで、チームメンバーひとりひとりが考えて行動するプログラムを取り込んだ研修を指すことが一般的です。
ワークショップの特徴は参加した人全員が参加して、発表やディスカッションを行うことにあります。 コミュニティ作りや他者理解、自己理解などを目的としたプログラムが多く、全てのメンバーが積極的に参加することが理想となります。
短時間でも同じ目標に向けて協力し合うことや自分の考え方を人に説明する経験は思考の整理ができる他、衝突期の対立や意見の交換を疑似的に起こすことで本来のチームでの意見交換・関係性の進展をスムーズにする効果があるでしょう。
ワークショップのプログラムには、ゴールを目指すためのプランニングや課題に対してチームごとにプレゼンテーションを行うような内容のものが多く用意されています。
イベント
社内でイベントをも催すのも、チームビルディングの取り組みの一つと言えます。「行事・催しもの」という意味の言葉ですが、開催から実行するまで、またはそれに参加し楽しむといった経験を通してメンバー同士の交流を深め、その背景を知るいい機会となります。
チームビルディングを目的とするイベントではレジャーやスポーツといった体を使うようなものが企画されることがほとんどですが、これからの季節に多い忘年会などの飲食を共にする時間も、ある意味では「イベント」として活用することができます。
これらの社内イベントは会社の福利厚生として設置されることもあり、チーム以外の従業員と交流したり、お互いがお互いを理解し配慮の方法を考えるといった「社全体」「環境全体」に良い影響を与えてくれることも。
チームビルディングを主目的とするなら、形成期や解散期のアイスブレイクに最適です。特に体を動かすこと・一緒に作業することは打ち解けやすくなる効果がありますので、チームで行う球技や調理や食事を共にするBBQなどが一般的に用いられることが多かったようです。
チームビルディングが適正に行われると、従業員ひとりひとりがチームとしての役割を果たしかつ能力を発揮できる“チーム”になることができます。
業務や業績の向上に限らず、良いチームはその人の能力を上回るような結果を出すこともあるでしょう。
チームビルディングはこれからの「会社組織力」を高めるために必要な取り組み、自分の“チーム”は今どのような取り組みが必要なのか考えてみましょう。
初出:2019年11月21日 |