従業員が体調を崩してしまうことは企業にとって大きな損失です。
メンタル不調を未然に防ぐ・不調を早めに発見する・再度休職しないようなサポートをするためにも、一日の長い時間を過ごす職場で健康管理を行いたいですよね。
部下のメンタル不調に気づくポイントや職場でできること、メンタル不調の部下と接するときに気をつけることを知り、日頃から備えておきましょう。
部下のメンタル不調に気づくポイント
日々の大半を過ごす職場は、メンタルの不調に気がつきやすい環境です。
部下に以下のようなちょっとした変化が見られたときには要注意。生活習慣の変化は、「メンタルの不調が生じているサイン」の可能性があります。
- 遅刻や体調不良による休暇が増える
- 今までできていたことができなくなる
- アルコールやたばこの消費量が増えた
- 食欲がない/いつも眠そう
- 残業が増えている
また、本人から以下のような話や相談があったときは必ずその話に耳を傾けましょう。
- 楽しめていたことが楽しめなくなった
- 周囲の目が怖い
- 疲れがとれない、眠れない/食欲がない、食べ過ぎてしまう
- 死にたい/消えたい
上記のような相談があった場合、メンタルに何らかの不調を抱えている可能性が高いです。
また、メンタルの不調は精神的な原因以外にも身体的な異常から発生することがあります。
精神科・心療内科に限らず一度医療機関の受診を勧め、休養や治療が必要かという判断を含めて医師の診断・意見を伺いましょう。
職場でできる対策
厚生労働省の「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持推進のための指針~」では、3つの予防と4つのケア がメンタルヘルスケアの対策として掲げられています。
3つの予防
- 一次予防
メンタル不調を未然に防ぐ。個々による日頃のストレス解消や休暇取得の推進など。(ストレスチェック など) - 二次予防
メンタル不調の早期発見。メンタル不調の部下に気づき話を聴いたり、病院の受診を勧めたり。(ラインケア・医師の面接指導 など) - 三次予防
メンタル不調の再発防止。再度メンタル不調とならないような職場の支援。(復職支援 など)
4つのケア
- セルフケア
メンタル不調への理解、ストレスチェックによる自己チェック、ストレス対処法の学習 - 組織での上から下の人間によるケア
労務管理、職場環境の改善、職場復帰サポート - 職場の産業保健スタッフ等によるケア
事業場内のメンタルヘルスケア対策の提案、不調者や休職者のサポート - 事業場外資源によるケア
社外の専門機関との連携
特に重要とされているのが「発症前のケア」です。
メンタルの不調や問題は、「その環境にいる全員」にリスクがあります。
誰か一人が不調を訴えてから対応する、という状態では環境は改善されず、
復職をしても 「休職や不調を繰り返す」「不調を訴える人が増加する」といった問題の再発・深刻化が繰り返されてしまいます。
リスク管理、生産性の向上という観点からも、ケアに力を入れることはこれからの職場の課題です。
メンタル不調の部下と接するときに気をつけるポイント
メンタルの不調がある部下から相談を聴くときには、いくつか注意するポイントがあります。
相談した本人以外に、誰かが相談している様子や対応を見て「相談できる」「話を聞いてもらえる」と思うことは周囲で働く人にとってプラスの効果になります。
安心して相談を聴くために必要なポイントをまとめました。
相談を聴くときは“ながら”をしない
お酒を飲みながら ・作業をしながら……の相談では、不用意に励ました言葉が負担になったり、真剣に話を聞いていない印象をもたれる場合もあります。
メンタル不調の場合、そもそも飲み会などが楽しめなくなっていることも。
同僚のいるフロアや作業場といった、集中できない場所も避けましょう。
周囲に聞かれないプライバシーに配慮した場所を用意し、話を聴くための環境を整えることが大事です。
相談は否定せず、一度受け止めてあげる
相談している部下は、「悩みがある」「実際に苦しんでいる・困っている」ことを相談しています。
そんな中、「考えすぎでは?」「よくあるよ」「君の言っていることはよくわからない」など内容を疑ったり、無理解や否定的な態度を取られるのはつらいことではないでしょうか。
「そういう風に考えているんだね」など、一度「受け止める態度」で話を聴き、安心して話しだせる空気を作りましょう。
急かさずに話せる気持ちになるまで待つ
悩みを話そうとする部下の中には、自分の状況をスムーズに説明できないこともあります。
本人自身が何に悩んでいるのか、なんでつらいのかわからないケースもあるためです。
他の業務もある中でスムーズに話せない部下に対してイライラしてしまうかもしれませんが、部下の悩みを勝手にこれだと決めつけたり、早く話すよう急かしたりしないようにしましょう。
「ゆっくり、話しやすいところから話せばいいよ」など一言添えると安心して話せる雰囲気を作ることができます。
部下のペースを大事にする
メンタル不調の場合、今まで楽しめていたことが楽しめなくなっているケースがあります。
安易に気分転換を勧め、「○○をすればきっと良くなるよ」「体を動かしてみなよ」などと結論をつけてしまうことは控えましょう。
まずはどんな様子なのか、どんな助けが欲しいのかを聴いてみましょう。
どんな相談でも「力になれそうなことがないか」と協力的な態度で聴くことが第一歩です。
“通院”、“受診”の勧めは慎重に
部下に受診を勧める際にも注意が必要です。
「あなたの症状はうつ病だと思うから病院に行った方がよい」など病名を決めつけたり、自分で判断することは避けましょう。
「自分は病気なんだ」と思い、部下が更に落ち込んでしまう恐れがあります。
仕事をしていると、通院のために時間をとることが難しい・周囲に迷惑がかかると考える方もいると思います。
「体調が悪くて病院に行くのは当たり前なので、とりあえず病院へ行ってみてもいいんじゃないかな?」といった部下の不安を取り除くような声かけや、通院のための時間の確保に協力をしましょう。
自分ひとりで抱えず、産業保健スタッフに相談を
相談を受けることは、悩みを一緒に抱えることでもあります。
部下や大事な家族の悩みに対して真摯に向き合うほど、時にはその問題の重さに相談を受けたほうが悩んでしまうこともあるでしょう。
上司や家族といえども、自分だけでの対応が難しい場合があります。
そのような時は、職場の産業スタッフ(産業医・保健師など)に相談をしましょう。
50名以上の従業員がいる職場なら必ず 産業医 を選任されているはずです。ほかにも 保健師・衛生管理者などの専門資格者 を産業保健スタッフとして社内に設けている企業もあります。
人事労務スタッフといった個人情報を取り扱う権限のある方が産業保健の窓口を担当されている場合もあります。
産業医や保健師、精神保健福祉士といった専門資格を持たれる方は、相談の受け方やつなぐべき医療機関についての知識をもっています。またスタッフとして会社から選任されている方なら、専門資格の方同様に秘密保持義務がありますので安心して相談ができるでしょう。
部下に病院やカウンセリング機関を勧める際のアドバイスやサポート、面談についての窓口といった手続きを行なってくれるとともに、部下・上司ともに安心できる相談先となってくれます。
もし会社の中に相談できるスタッフがいない、サポートが受けられない時には、厚労省の提供する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』 など、外部のカウンセリングや医療機関に相談するのも一手です。
まとめ
組織内外で連携しながらのサポートが有効

メンタル不調は誰にでもありえること、職場で支え合ってともにケアしていくことが大切です。
4つのケアと相談を聴くポイントを軸に、会社全体でメンタル不調対策に取り組んでいきましょう。
部下の不調に気づいたときには一人で解決しよう、対応しようとせずに。「 部下の辛さを理解する 」「専門家・医療機関と相談する」ことが肝心です。
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- 厚生労働省:労働安全衛生法の改正について
労働者の心の健康の保持増進のための指針(2015年) - 独立行政法人 労働者健康安全機構:
職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~(2019年)
初出:2019年8月26日 |