ストレスチェックの義務化とは?
現在、常時50人以上の労働者を使用している事業場はストレスチェック実施が義務となっています。
労働安全衛生法の改正により、2015(平成27)年12月1日から義務化されました。
ストレスチェック制度は、労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに、 職場環境改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することを主な目的としています。
本記事では、ストレスチェックが義務化されるまでの経緯や労働安全衛生法改正の背景をふまえて、ストレスチェックの義務化に関する情報をお届けします。
2025年5月の国会において労働安全衛生法の改正法案が可決・成立し、これまで努力義務とされていた「従業員50人未満の事業所」においても義務化されることが決定しました。
本記事では、2026年4月現在の最新情報を交えて追記しています。
なぜストレスチェック制度が義務化されたのか?ーストレスチェック制度義務化の背景
ストレスチェック制度が義務化されることになった最初のきっかけは、昭和59年2月に日本で初めて認定された、当時31歳男性の過労自殺でした。初めての過労自殺労災認定を受けて、政府は労働安全衛生法を改正しました。そして昭和63年には改正法に基づき「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」を公示し、事業者が講ずるよう努めるべき措置の中の1つとして「労働者のメンタルヘルスケアに取り組むこと」を挙げました。
このように、1人の男性の過労自殺の労災認定が契機となり、政策としてのメンタルヘルスへの取り組みが始まったと考えられています。実際にストレスチェック制度が開始するまでのおおまかな流れは、下記の表のとおりです。
◆ストレスチェック制度義務化までの経過
| 日付 | 主な出来事 |
| 昭和59年(1984)2月 | 国内初、過労自殺の労災が認定される。 |
| 昭和60年(1985) | 初の過労自殺労災認定を受け、メンタルヘルスケア研修を実施。(昭和60年度にメンタルヘルスケア企画運営委員会設置、講師養成研修会開催。(財)産業医学振興財団。昭和61〜63年度に全国で研修会) |
| 昭和63年(1988) | 労働安全衛生法の改正に基づき「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」を公示し、事業者が講ずるよう努めるべき措置の中の1つとして「労働者のメンタルヘルスケアに取り組むこと」を明記。 |
| 平成10年(1998)2月 | 「精神障害等の労災認定に係る専門検討会」発足。 |
| 平成11年(1999)9月 | 「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」を公示し、精神障害等に係る労災認定の判断要件を明確化。 →その後、平成23年「心理的負荷による精神障害の認定基準」策定、令和5年「心理的負荷による精神障害の認定基準について」通達により廃止・改正される。 |
| 平成12(2000)年8月 | 労働省(現:厚生労働省)は、事業場における労働者の心の健康の保持増進を図るため、事業者が行うことが望ましい基本的な措置(メンタルヘルスケア)の具体的実施方法を総合的に示した「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」を公示。 |
| 平成17年(2005)11月 | 長時間労働者への面接指導を義務化した改正労働安全衛生法が施行される。 |
| 平成18年(2006)3月 | 改正法に基づき「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」を公示。 →労働者の受けるストレスが拡大する傾向にあり、仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者が6割を超えるという調査結果、および、精神障害等に係る労災補償状況が増加傾向にあったことを受け、平成12年公布の「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」の見直しを決定。 |
| 平成20年(2006)10月 | 各都道府県に「メンタルヘルス対策支援センター」を設置。 →同センターは、メンタルヘルス対策の導入・実施、メンタル不調者への対応、心の健康問題で休業した労働者の職場復帰支援など、事業場がメンタルヘルス対策を進めるうえで生じるさまざまな場面の課題、問題、悩みなどの解決を支援するための「地域総合窓口」的機能を担うものとして設置。 |
| 平成21年(2009)10月 | 厚生労働省は、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」を開設。 |
| 平成23年(2011)12月 | 「メンタルヘルス対策の充実・強化」を盛り込んだ「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」が国会に提出される。 →衆議院の解散で廃案に。しかし、法案は一度廃案になったものの、メンタルヘルス対策の充実・強化の必要性が認められ、その後も検討が重ねられる。 |
| 平成26年(2014)4月 | これまでの3事業(地域産業保健事業、産業保健推進センター事業、メンタルヘルス対策支援事業)を一元化し「産業保健活動総合事業」を開始。 |
| 平成27年(2015)12月 | ストレスチェック制度が盛り込まれた「労働安全衛生法の一部を改正する法律」施行。 →ストレスチェックの実施開始。 |
| 令和7年(2025)5月 | 労働安全衛生法の改正法案が成立し、50人未満の事業場へのストレスチェック実施の義務化が決定。 |
| 令和10(2028) 年 | 5月まで(改正法公布から3年以内)にストレスチェック義務化が施行予定。 |
◆ストレスチェック制度導入の背景にある、メンタルヘルス関連の状況
・働き盛りの年代の自殺率の高さ
上記の経緯に加えて、メンタルヘルス対策の必要性が高まった背景の一つとして、自殺者の実態があります。国内の自殺者数は平成9年までは約2万5千人前後でしたが、平成10年に入ると3万人を超えるようになりました。近年は3万人以下になり減少傾向にあるものの、それでも毎年約2万人が自殺している現状は依然として続いています。
日本の自殺死亡率(人口10万人当たりの自殺者数)は主要先進7カ国の中で高い水準にあり、20代・30代における死因の第1位が自殺となっており、働き盛りの年代の自殺率が高いということが問題視されてきました。
なお、現在も依然として深刻な問題の一つで、15~39歳の死因で最も多いのは「自殺」となっています。さらに男女別にみると、男性では10~44歳において死因順位の第1位が自殺となっており、女性でも15~34歳で死因の第1位が自殺となっています。
・精神障害等の労災補償件数が増加
また、精神障害等の労災補償件数も増加が目立つようになり、平成12年(2000年)では212件であった精神障害の労災補償請求件数は15年後の平成27年に1,515件となり、7倍超に増加しました。これに伴い認定件数も急増し、36件から472件へと約13倍の増加。認定件数の増加は労災保険の財政を圧迫しはじめていたことから、早急に対策を講じる必要が生じました。これらの状況を受けて、国は労働安全衛生法の改正に乗り出したのです。それ以前の労働安全衛生法では「時間外労働時間の制限」という量的な規制はかけてきましたが、メンタルヘルス不調となるのは量だけが原因ではなく、労働に関する質的なケアが必要になってきたためです。
・メンタルヘルス対策の重要性が浸透していない現状が浮き彫りに
厚生労働省が実施した「労働災害防止対策等重点調査」でもメンタルヘルスへの取り組みの必要性が明らかになりました。調査当時、メンタルヘルスへの取り組みを行っていなかった事業場がその理由として回答したのは、第1位が「必要性を感じない」で48.4%、第2位が「専門スタッフがいない」で22.1%、第3位が「取り組み方がわからない」で20.1%と、メンタルヘルス対策の重要性が浸透していない現状が浮き彫りになりました。
このような複数の状況を総合的に踏まえて、政府はメンタルヘルス対策を促進させることとし、労働安全衛生法を改正してストレスチェック制度の義務化を決定したと考えられています。
<ストレスチェック制度義務化の背景まとめ>
ストレスチェック制度が義務化された背景には、過労自殺の労災認定から始まり、国際社会からみた日本の自殺率の高さ、および働き盛りの年代での自殺が多いという現状、さらに精神障害等による労災認定件数の増加がありました。
50人未満の事業場も義務化決定。ストレスチェック制度義務化の今後の見通しについて
ここまで見てきたような背景・経過を経て導入されたストレスチェック制度。2015(平成27)年12月の労働安全衛生法の改正以降、「常時50人以上の労働者を使用する事業場は、1年以内ごとに1回、定期に、ストレスチェックを行わなければならない」とされてきました。
2023年3月27日に公示された「第14次労働災害防止計画(2023年~2027年度)」によると、下記のとおり、「使用する労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を2027年度までに50%以上とする」などの設定目標が示されています。

「労働災害防止計画」とは、労働災害を減少させるために国が重点的に取り組む事項を定めた中期計画です。労働安全衛生法に基づいて厚生労働大臣が定めることとされており、2023年 4 月~ 2028年 3 月までの 5 年間を計画期間とする「第 14 次労働災害防止計画」が2023年3月8日に策定されました。
さらに、2024年10月10日に行われた第7回「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」では、従業員数が「50人未満の小規模事業場」に対してもストレスチェック実施を義務化する方針を決定。2025年5月に労働安全衛生法の改正法案が成立しました。これにより、公布後3年以内(最長で2028年5月まで)に、50人未満の事業場に対してもストレスチェックの実施が義務化されることとなります。
また2026年2月に発表された「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」では、「原則として、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されます。」と記載されており、実施体制を早期に検討することが重要となります。
※なお、ストレスチェック制度施策に関する経過の詳細は厚生労働省「こころの耳」のページにまとめられていますので、下記〔参考文献・関連リンク〕よりご参照ください。
〔参考文献・関連リンク〕
- 厚生労働省:
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
・精神障害労災認定の第1号事案(鉄道駅の設計技師が反応性うつ病により自殺未遂に至った事例)
・メンタルヘルス対策(心の健康確保対策)に関する施策の概要
・ストレスチェック制度について 施策の経過(年表) - 厚生労働省:
小規模事業所ストレスチェック制度実施マニュアル - 厚生労働大臣指定法人・一般社団法人 いのち支える自殺対策推進センター(JSCP):
自殺対策概要 自殺の実態
| 初出:2023年04月10日 / 編集:2026年04月16日 |




















