ストレスチェック業種平均値レポート2023:総合健康リスクは改善の兆しも、高ストレス者割合は増加傾向―「職場の支援」強化と「負担感」の軽減がカギ?

総合健康リスクは改善の兆しも、高ストレス者割合は増加傾向① —「職場の支援」強化と「負担感」の軽減がカギ?:「ストレスチェック業界平均値レポート2023」考察【資料ダウンロードあり】

株式会社情報基盤開発は、2022年中に「AltPaperストレスチェックキット」をご利用いただいたお客様からデータをご提供いただき※1、「高ストレス者」※2の割合・「総合健康リスク」※3・「各種ストレス尺度」について業種別に平均値を算出した「ストレスチェック業界平均値レポート2023」を公開いたしました。

なお、前回まではストレスチェック実施年をレポートタイトルに入れていました(2021年中に実施したデータに基づく「ストレスチェック業界平均値レポート2021」を2022年に発表)が、今回からレポート発表年をタイトル末尾に入れるかたちに変更しています。
 

この度算出した業界平均値データは、当社サービス「AltPaperストレスチェックキット」を2022年中に実施いただいた事業者を対象に、集団分析結果のご提供の承諾を個別に伺い、例年通り同意いただいた事業者のデータのみを用いて分析を行いました。
 

※2023年公開の本データは、2022年内にストレスチェックを実施され2022年12月末日までに当社で集計を完了した1,684事業者(男性269,647名、女性216,093名)を含む約48万5千人のデータを対象としております。

※2022年単年の「AltPaperストレスチェックキット」導入事業者数は約4,110法人、受検者数は約110万人

 

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総合健康リスクは7業界が基準値以下、「職場の支援」施策が効果的?

ストレスチェック業界平均値2023:高ストレス者割合・総合健康リスク業種別一覧(総合健康リスク)

ストレスチェック業界平均値レポート2023:受検率・高ストレス者割合・総合健康リスク業界別一覧

※赤い囲み部分 … 総合健康リスク:110以上を赤色、100以上を黄色に色分け

 

ストレスチェック業界平均値レポート2023:総合健康リスク(「T.分類不能の産業」を除く)図表

ストレスチェック業界平均値レポート2023:総合健康リスク(「T.分類不能の産業」を除く)

 

総合健康リスクは「どの業界も厚生労働省の基準とする数値(全国平均値:100)前後」ですが、7業界は、全国平均値100(平成17年度/2005年に基準値として設定)を下回る良好な数値でした。
 
中でも良好だったのは「F. 電気・ガス・熱供給・水道業」(91.5)、次いで「J. 金融業・保険業, K. 不動産業・物品賃貸業」(91.8)「E. 製造業」は5年連続してワーストとなるも、数値は前回より改善がみられています。
 
2021年に実施した前回データと比較すると、「E. 製造業」「F. 電気・ガス・熱供給・水道業」「L. 学術研究,専門・技術サービス業」は2ポイント以上良好という結果が得られました。
業界全体が職場環境への関心をもって改善等を行った結果が、数値として現れているのではないでしょうか。

 
 

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パフォーマンスのよい職場改善は「職場の支援」?
結果から見えた改善のトレンド

「総合健康リスク」* と呼ばれるこの評価軸は、職場から感じるストレスを「仕事の量-コントロール」と「職場の支援(上司や同僚からの支援)」の2軸で評価するものです。
 

*「総合健康リスク」:
ストレスチェックから得られた「心理的な仕事の負担(量)」「仕事の裁量度」/「上司からの支援度」「同僚からの支援度」の4尺度を用いて算出される職場の環境が従業員の健康にどの程度影響を与えるかを総合的に評価する指標


今回、微細な変動ですが、「職場の支援」に関わる軸部分で、前回(業界平均値レポート2021)から1ポイント以上の改善がみられた業界が複数ありました。前回データと比較した変動幅をみると、「仕事の量-コントロール」に対し「職場の支援」は1年で最大3ポイントの改善結果を出しています。
 
今回改善がみられた全ての業界が……と一概には言えませんが、各企業・組織が業務量などの負担調整だけでなく、上司・同僚間のコミュニケーションやサポートの強化、企業・組織全体としてチーム体制の整備等に取り組りくまれてきた成果ではないでしょうか。総合健康リスクの改善を明確に意識していなくとも、「ハラスメント防止は企業が対策するもの」「休暇や休憩は意識的にとるよう勧める」など組織的に介入や支援の施策を講じたところもあるかもしれません。
 
職場で働くスタッフ間の関係性構築支援やコミュニケーションの改善は、ストレスやメンタルヘルス不調の予防の中でも特に行動と改善の「費用対効果」ならぬ、「時間対効果・行動対効果」が優れているのではないかと考えられます。
 
企業の管理監督責任の幅が広がることは、短期的には「組織の負担」の増加と思われがちですが、予防・投資という観点からすれば、離職や生産性の低下など大きな損失を未然に防ぐ長期的視野に立ったメリットがある対策です。
労働災害の未然防止の観点でも、長時間労働の是正やハラスメント対応について制度・法的な介入が定まって以降、企業・組織規模の大小を問わず「人や健康は資本・労働環境づくりが重要」と考える機運が広く醸成されつつあるのではないでしょうか。
 

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高ストレス者増加の傾向変わらず ― 個人の負担感に変容も?

ストレスチェック業界平均値2023:高ストレス者割合・総合健康リスク業種別一覧(高ストレス者割合)

ストレスチェック業界平均値レポート2023:受検率・高ストレス者割合・総合健康リスク業界別一覧

※赤い囲み部分 … 高ストレス者(A判定)割合:15%以上を赤色、10%以上を黄色に色分け

 

ストレスチェック業界平均値レポート2023:高ストレス者割合グラフ(「T.分類不能の産業」を除く)図表

ストレスチェック業界平均値レポート2023:高ストレス者割合グラフ(「T.分類不能の産業」を除く)

 

「高ストレス者割合」は前回に続いて全業界で基準値(10%)以上、7業界で15%を超える結果となりました(「T.分類不能の産業」を除く)。「高ストレス者は概ね職場の10%」という基準値は、あくまでストレスチェック制度が設立された2005年(平成17年度)の平均値を目安にしたものです。
 
最も良好だったのは「J. 金融業・保険業, K. 不動産業・物品賃貸業」(10.8%) 、次いで「F. 電気・ガス・熱供給・水道業」(11.6%)、「O. 教育, 学習支援業」(11.9%)と続きます。 ワースト1は「E. 製造業」(19.1%)ですが、昨年から若干の改善を見せるも、そこに「N. 生活関連サービス業, 娯楽業」(19.0%)「M. 宿泊業, 飲食サービス業」(18.9%)が僅差で迫っている状況です。良好だった2業界区分を除いて、全体的な傾向として高ストレス者割合は増加の一途をたどっています。

ストレスチェックで判定される「高ストレス者」は、心身の疲労感や不調などに関する項目を重視しています。業界によっては、身体を使う業務が多い・屋外等の過酷な環境下での就労が多いといった物理的な要因の影響を受けることがあります。しかし、パソコン機器等を使った事務作業や軽作業中心の業界においても「高ストレス者割合」の上昇が見られるなど、特定の業界に限らず「社会全体でストレスを感じている方が増加している」ようにも見受けられます。

ストレスチェック実施にあたって分析を行う全国平均の基準値は2005年(平成17年度)の実施結果に基づいています。長時間労働や過重労働の是正のみならず、この十数年で労働者・雇用者を取り巻く環境が少しずつ変化してきたことも要因の一端にはあるかもしれません。

一人一人の労働量の調整や業務負担の軽減・分散など、組織側からも職場環境改善に向けた取り組みを推進する動きが浸透し始めたようにも感じる一方で、高ストレス者割合は増え続けている背景には何があるのでしょうか。
 

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次回の「業界平均値レポート考察②」では、「高ストレス者割合」が増加傾向にある中で対策につながる “次の一手”を考えます。
 

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【調査方法】
この度算出いたしました「業界平均値」データは、当社サービス「AltPaperストレスチェックキット」を2022年中にご実施いただいた事業者を対象に、集団分析結果のご提供の承諾を個別に伺い、同意いただいた事業者のデータのみを用いて分析を行ないました。

比較の基準としている「全国(厚労省データ)」は、
“厚生労働省科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業
「職業性ストレス簡易調査票及び労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストの職種に応じた活用法に関する研究」平成19年度総括・分担報告書
表4 職業性ストレス簡易調査票下位尺度の職種別平均値及び標準集団との比較” が出典です。

集計につきましては、事業者様のデータについて男性参加者データ・女性参加者データに分け、高ストレス者の出現割合、健康リスク、各尺度の平均値を業種ごとに算出しました。なお パンフレット「ストレスチェック業界平均値レポート2023」掲載のデータ、及び、本記事につきましては「男性」データを用いて、比較・分析を行っております。

※1 データの取り扱いについて:
・各事業者様にご提供いただいたデータにつきましては、業種・規模・地域をお伺いして分類することとし、個々の事業者様・受検者様を識別できないようにして取り扱っております。
・各受検者様の回答につきましては、性別・職種と57項目・80項目の回答データのみ使用することとし、個人を識別できないようにして取り扱っております。

※2 「高ストレス者」とは:
厚生労働省(令和元年7月)が公表したマニュアルに基づいており、以下(1)及び(2)に該当する者を指します。(1)及び(2)に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度を基準とします。
 (1)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
 (2)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」
  及び「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下
 
※3「健康リスク」とは:
基準値として設定された全国平均値100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」とは、 男女別に求められた量-コントロール判定図と職場の支援判定図から構成されます。この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。
量-コントロール判定図 はストレスチェックから得られた「心理的な仕事の負担(量)」「仕事の裁量度」の2尺度の数値から、職場の支援判定図 は「上司からの支援度」「同僚からの支援度」の2尺度から求められます。

 

 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2023年08月17日 / 編集:2024年06月11日

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