社員が50人以上いる企業では実施が義務化となり、現在では数多くの企業で導入されているストレスチェック。
この制度は、企業が社員のメンタルヘルスに向き合う為の「きっかけ」として、導入されました。企業にとっては、職場環境や働き方・メンタルヘルス対策 など社員を取り巻く環境の改善について考える重要な手掛かりとなります。
効果的な職場の改善策の為にも「ストレスチェック」自体をできるだけ多くの社員に受検してもらいたいもの。
今回の記事では、ストレスチェックの受検率を上げる為に、押さえる2つのポイントについて解説いたします。
ストレスチェックの受検は拒否が可能!だからこそ対策が必要
ストレスチェックを実施することは企業側の義務ですが、社員には受検する義務はありません。
受検しなくても罰則やペナルティはありません。また企業は受検を勧めるよう定められていますが、受験しない従業員に対して不当な取り扱いや処分をすることは禁じられています。
つまり、社員はストレスチェックを拒否してもOKなのです。
平成29年7月の厚生労働省の発表によると、ストレスチェックを受検した人の平均は「78.0%」、100人の企業であれば22人が未受検だという計算になります。
これは義務として効率で定められている制度の中ではかなり低い割合です。
実施のコストに対して、正確なデータが取れないことは大きな損失だと言えるでしょう。
ストレスチェックの受検率向上を目指す企業なら、何らかの対策を講じることが必要になります。
受検率を上げるには「社員目線」で考える
ストレスチェックの受検率を上げるには、まず受験しなかった【社員の目線】でその理由を考えてみましょう。
ストレスチェック制度が始まって5年、ストレスチェックを受検しない理由として、
「ストレスチェックについてマイナスのイメージ」 がある ことが関わっているとわかってきました。
- 悪い結果が出たら、評価に響きそうで怖い……
- メンタルヘルスや精神疾患について「自分には関係ない」と考えている
上記のような不安や誤解を持っている社員はいませんか?
ストレスチェックのよくある誤解その1:
悪い結果が出たら、評価に響きそうで怖い……
もし「高ストレス」などの結果が出たら…… 自身の評価に影響がありそうで怖いですよね。
ストレスチェックは心の状態を素直に回答することで、初めて有効なデータになります。
安心して従業員の方々が受けられるように、法律でストレスチェックの結果は人事権のある方は閲覧ができないよう法律で定められています。
また、ストレスチェックはあくまで「メンタルの不調を把握・予防する」「社員全体の結果をうけて、職場環境の改善にどう取り組むか」と考える為のもの。
結果を企業に提供しても、人事権のある方には個人が特定できない状態に加工して提供されます。
ですが、社員の中にはストレスチェック制度や法律について知らない方も多いでしょう。
知らないことに不安を感じるのはだれしもあること、「制度の詳細を知らないこと」は受験率に大きく関与します。
ストレスチェックのよくある誤解その2:
「メンタルの不調なんて自分には関係ない」と考えている
「ストレスチェックは自分には関係ないので受検しない」という人も社内にいるのではないでしょうか。
そのような人達は、メンタルの不調やストレスチェックについてある種の「他人事感」「無力感」を感じています。
- ストレスチェックは休職する人、体調の悪い人が行うもの
- 自分はそこまでストレスを感じていないから大丈夫
- どうせ会社に心理状況を把握されてしまうだろう
- 受検しても職場環境が変わるわけがない ……etc
職場に対する不信やメンタルの不調に対する無関心はストレスチェックの受験率を下げるばかりか「休みにくい雰囲気」や「居心地の悪い環境」の原因にも近く、新たなメンタルの不調につながりかねません。
メンタルの不調は誰にでも起こりうること、それを防ぐためにストレスチェックが行われています。
またストレスチェックの最終目標は他ならぬ「職場改善」です。
上記のような考えを持つ方こそ受験してもらい、会社ができることがないか探っていきましょう。
少しの努力で受検率を上げる!「企業ができるアプローチ 」は?
受験率を上げる一番のポイントは【企業ができるアプローチ】を行うこと。
社員に対し「安心して受けられる制度」「信頼のおける検査」であることを説明し、なるべく多くの社員に受けてもらうためには以下2つのアプローチが有効です。
- 社員に向けて、ストレスチェックについての「案内文」の作成
- テスト結果の漏洩を防ぐ、信頼できる窓口を設置
社員に向けて、ストレスチェックについての「案内文」の作成
ストレスチェックについて、口頭での説明に加えて「案内文」を作成すると良いでしょう。
書面として受け取ると、社員の安心感も変わってくるものです。
「案内文」には下記内容を盛り込むと良いでしょう。
- 実施する目的
- 実施結果の取り扱い
- 実施時期・対象者
- 実施方法・質問数などの実施内容
- 実施者や実施事務の担当者情報
特に重要なのが「1、実施する目的」と「2、実施結果の取り扱い」についてです。
社員が不安に思う下記内容を盛り込みましょう。
~1、実施する目的について~
ストレスチェックは以下のために実施されます。
★社員自身が自分のストレス状態に気づいてもらう為
★職場環境のストレス原因を改善する為
~2、実施結果の取り扱いについて~
★個人の能力や仕事に関する評価には全く関係がありません
★人事・労務担当者をはじめ、自分の情報以外は他社員は一切閲覧できません
★内容の閲覧権限者は、有資格者である実施者に限られます
(※「実施者」は企業ではないこと、国家資格を有する専門家が監督すること
をきちんと説明すると良いでしょう。)
★もし会社が個人の結果を閲覧する場合は、本人の同意がなければできません
★「高ストレス者」と判断された方は、医師からの面接指導が受けられます
(面接指導は希望する人のみに実施されることも説明しましょう)
※この場合、以下についても説明しましょう。
- 面談指導を希望しない場合は、実施されません
- 面接指導を希望する場合は、会社にストレスチェックの結果が提供されます
目的や制度についての案内に加えて、【社内の担当が誰なのか】を明記することが大事です。
実際に人事権のない方が担当であること、誰に聞けばいいのかがわかると不安はだいぶ軽くなります。
また日常業務を行っているとストレスチェックは後回しにされがちなもの。
実施中・実施後にストレスチェックや医師の面接指導を受けるよう勧奨を行うと、より効果的です。
テスト結果の漏洩を防ぐ為、安全な窓口を設置
テスト結果は本人の同意が無い限り、企業は確認することができません。
また、内容確認は医師・看護師・保健士・精神保健福祉士といった専門知識のある国家資格を持つ方々に限られます。
しかし、そう言われただけでは不安な社員もいるでしょう。
その為に、社員のだれから見ても「安全な窓口」を設ける必要があります。
とは言え、会社の人事・労務担当者が自力で【安全な窓口】を設けることには、限界があるでしょう。
何故なら、ストレスチェックの専門的な知識を持ち合わせている人は、ほとんどいないからです。また、リスク回避に関する知識を要求される場面も多々あります。
こういった場合に「ストレスチェック専門の業者」への外部委託という形を選択すると【社員から見ても「安全な窓口」】を簡単に用意することが可能です。
業者は他にも、下記等を行ってくれます。
- ストレスチェックの実施
- ストレスチェック実施者への結果報告
- 産業医の紹介
- 案内文の作成
- 面談指導対象者である「高ストレス者」に直接案内を発送
日常業務を処理しながらストレスチェックを円滑に行う為にも、専門業者へ外部委託することは検討価値のある方法です。
ストレスチェックの受検率を上げる為には、下記の「2つのポイント」を押さえることが大切です。
- 社員目線で考える
- 企業ができるアプローチを行う
ストレスチェックは健康診断と同様の個人情報、メンタルというとてもデリケートな分野でもあります。
日常業務やなれないストレスチェックの事務に隠れた、受験の妨げとなる不安や不調の種に対処して、ストレスチェックの効率を高めましょう!
初出:2019年8月28日 |