バーンアウト(燃え尽き症候群)から心を守る「先人の知恵」:ストレスに負けない働くオトナのメンタルケア

バーンアウト(燃え尽き症候群)から心を守る「先人の知恵」

仕事にまじめな人ほど陥りやすい「バーンアウト(燃え尽き症候群)」、全力で取り組んできたからこそ「やらなきゃいけないのに……」「前はできたのに……」と自分を追い込んでいませんか?

熱中できる仕事こそ長く続けたいもの。乗り越えるためには仕事との「できる感・距離感」をつかむことが大事です。
 

燃え尽きやすいのは「人を相手にする」業種

バーンアウトを起こしやすい人がいるように、職場にもバーンアウトを起こしやすい特徴があります。

  • 「結果がわかりづらい」
  • 「やりがいを感じるのが難しい」
  • 「自分の感情や態度をコントロールしなければならない」
  • 「仕事内容が多岐にわたる」
  • 「業務と生活の区別がつきにくい」

お客様と直接お話しするような臨機応変を求められる教育業やサービス業、責任が大きく周囲からできて当たり前と思われてしまう医療・介護業は特に注意したい業界。従事されている皆さんが自分の心とやる気を守るために何ができるでしょうか?
 

燃え尽きないため、まず先輩に学ぼう

「すぐに気持ちを切り替えられる」「お客様から冷たい態度をとられても必要以上にへこまない」など、あなたの周りに「心が強いな、頼りになるな」と感じる人はいますか?

国内外で行われているバーンアウトの研究では、「経験年数が高い人ほどバーンアウトを起こしにくい」という結果が報告されています。

これは職場の経験を積むことで
把握可能感(自分の置かれている状況・今後の展開がだいたい把握できると感じる感覚)」
「処理可能感(自分に起きている問題について、自分で解決できると感じる感覚)」
「有意味感(自分の人生や仕事で起こる出来事に意味があると感じる感覚)
が高まり、「仕事上のストレスに対する抵抗力」が生まれるからだと考えられます。

「成長している気がしない、何もできない気がする……」
「やりたいことと現実が合わない……」
と感じるとき、何より心強い味方になってくれるのが同じ職場に勤めている先輩です。

今は職場のベテランとして働いている先輩も、以前はあなたと同じような無力感や成長できないもどかしさを乗り切った経験があるはず。「燃え尽きそう」「こんなはずじゃなかった」と思うときは、一度相談してみると今必要なアドバイスや経験者の視点からのお話を伺えるかもしれません。
 

「小さな積み重ね」で自己効力感をUP

バーンアウトにつながる何よりのきっかけは「無力感」。特に人を相手にする職場では、数字やデータとして成果が出る経験が少なかったり、成果に対する改善方法も手探り状態だったりするというところも多く見られます。

また、丁寧なサービスや心を尽くしたおもてなしが「できて当たり前」という風潮もあり、ちょっとしたことでクレームをもらうけれど、心を尽くしても「ありがとう」がもらえないというギャップに苦しんでいる人も多いのではないでしょうか。そうなると達成感ややりがいを得られず、自分の仕事が無意味なものに見えてしまう……というループに。

大きな成果やハードルの克服には、たくさんの時間と困難がつきものです。夢や目指す目標にたどり着くために、まずは一日で達成できる「小さな積み重ね」を自分で作って、自分で達成する習慣を続けてみましょう。「小さな積み重ね」は一日でできること、ちょっとがんばればできることがベターです。
 
「今日は『お客様3人に自分から声をかける』ができた!」
「『本を1ページ読む』『間違いやすいポイントの指差し確認』をやった!」


など、「できた!」と思うことや「これならできる」と思うプラスになることの積み上げが自己効力感を育みます。
併せて今までやってきたことや受けた指導などを紙に書き出し、どれができるようになったか丸をつけていくと、自分の進歩を実感する「できるリスト」が作れますよ。
 

仕事から距離をとることも重要なスキル

営業や看護、介護といったお客様と信頼関係を作ることが仕事に深く関わってくる業種は、特にバーンアウトが深刻化しやすいものです。「相手に誠実に対応しなければならない」「自分の心が感じることを態度や言葉に表してはいけない」……とまじめに職務に向き合う人ほど、仕事上で相手から向けられた攻撃や苦情を自分のこととして受け止めがちに。

「職務だと割り切る」というと、冷たい対応に見えるかもしれませんが、実はその割り切りこそバーンアウトから自分の心を守る最大のスキル。相手に対して打ち解ける・同感する心を活かしたまま、「自分の求められている役割でできること」を冷静に見つめる客観視は、「本当に相手のためになるか」考える力の向上につながります。

そのためには、自分のできること・できないことをきちんと把握する必要があります。技術的にできるか・できないかだけでなく、自分が就いている職務や業務上で「ここまで」と決められているラインも見直しましょう。業務範囲があやふやであったり、どこまで業務として行っていいのかわからなかったりするときは、先輩や上司といった経験者に「確認」を。

また、仕事と自分の間に距離を置くことも必要です。人と人とのやり取りがある以上、自分の感情をコントロールしなければならない場面は避けられません。
ですが、業務や仕事以外の場面で自分の感情を抑えつける必要はありません。仕事に感情が乗っ取られないよう、一日の中で1時間程度は「自分の感情に正直になる時間」を設けましょう。今日あった嫌なことは気が置けない友達にグチを言ったり、好きなことの「楽しさ」を素直に感じたりと自分の感情を仕事や役割から解放してあげる時間です。
 


「バーンアウト」は仕事上の役割と自分を切り離せなくなってしまったために、自分の人格から心を遠ざけてしまった状態ともいえます。
良いサービスに欠かせない「思いやり」や「誠実さ」があなたの心を追い詰めてしまうのはもったいないこと。知らず知らずのうちに陥っている燃え尽きのループに自分で気がつくのは難しいものです。

心のすり減るサイクルに陥ってしまったと気がつけるのは、同じ職場で経験を積んだ上司や同僚、家族です。働き始めの理想と現実のギャップは誰もが通る道、いつも一緒に働いている先輩に頼ってみてはいかがですか。
 

本記事は、「マイナビニュース ワーク&ライフ」連載の20~30代の若手一般社員の方々を対象にしたメンタルヘルスケアコンテンツ「ストレスに負けない働くオトナのメンタルケア」の記事を連動掲載しています。
 

初出:2019年09月26日

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