ここ数年で働き方や時間が変わり、テレワークや在宅勤務、時差出勤やシフト体制の変更などが続いている方もいらっしゃると思います。
そんな中で「上司や同僚との対面でのやり取りが減った」「オンオフを分けるのが難しい」「なんとなく疲れが抜けないまま、毎日朝を迎えている……」など、意思疎通や気分の切り替えの難しさ、心身の不調を感じている方々も多いようです。特に、睡眠の悩みを抱えている方がとても増えた気がします。
皆さまはしっかりと眠れていますか?
睡眠は私たちが健康な生活を送るために、とても大切です。
しかし、労働時間が不規則になり生活リズムが乱れていると、十分な睡眠時間を確保できなかったり、眠りが浅くなったりなど大きく影響します。自分ではそこまで強いストレスに感じていなくても、知らず知らずのうちに負担となって積み重なっていることもあります。
また、テレワークをしている方は、通勤や移動にかかる隙間時間がなくなったことでオンライン会議やパソコンに向かう時間が増え、気づいたら業務に費やす時間が長くなっている……といったことはありませんか?仕事と仕事以外の境目があいまいになり、結果的に長時間労働になりやすい点はメンタルヘルスを考えると心配です。
そこで、本記事では、おもに仕事にまつわる負担や「働きすぎ」で十分な睡眠がとれずに、心身のバランスを崩してしまうのを防ぐために、意識してほしい3つのポイント、
・労働時間の管理
・切り替え
・つながり
を交えて、考えたいと思います。
心と身体の健康を守る鍵は…睡眠と自律神経
長時間労働・過重労働によるうつ病や過労死のリスクが指摘されているのは、ご存じの方も多いと思います。
脳・心臓疾患になりやすいとも報告されています。
その要因のひとつは、十分な睡眠や休息の時間が取れず疲労回復ができないことにあります。1日6時間の睡眠が確保できない状態が続くと、疲労が蓄積し、やがて血流の悪化で血管が詰まりやすくなることなどが医学的にわかっています。
これにより設けられたのが「過労死ライン(過労による健康リスクが高まる時間外労働時間)」です。
月80時間以上の時間外労働をすると1日6時間の睡眠を確保するのが難しいことから、この時間が基準となっています。週40時間を超えた時間外・休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなるほど、業務と発症の関係性が強まるといいます。
ちなみに、月80時間残業を1日に換算(21日勤務/月)すると、約3.8時間ほど。
皆さんはこれを多いと感じますか?それとも、意外と大したことないと感じますか?仮に休日出勤をした場合には、1日あたりはもう少し短くなることから、もしかするとご自身では大きな負担と感じていなくても、気づかぬうちに残業時間が積み重なっていることもありえるため、注意が必要です。
なお、2019年4月より、「ひと月の残業時間は原則45時間以内」と法律で制限されています。(中小企業は2020年4月~)
労働時間が長くなると、体内の働きを調節する自律神経のバランスが崩れてしまいます。
身体の動きを活発にする交感神経が優位に働き、「仕事モード・戦闘状態」がずっと続くことによってさまざまな支障が出るのです。
しっかりと睡眠をとることは、心身の動きをつかさどる脳を休めるために、もっとも重要なことのひとつ。 「仕事モード・戦闘状態」 から「リラックスモード・休息状態」に切り替えてあげることが大切です。
また、オフィスや事業所で長時間仕事をする場合と違い、テレワークや在宅勤務で気をつけてほしい点は、勤務場所が自宅などのため、「管理していないと際限なく仕事ができる」環境であることです。勤務時間の管理は、自分で意識しておく必要があります。
VDT作業による健康障害にも注意が必要
また、パソコンなど情報機器を利用した業務(VDT作業/情報機器作業)の増加も健康に影響します。
VDT作業は力仕事や外出を伴うことが少なく「軽い仕事」「疲れない仕事」のように見られてしまいがちですが、長時間にわたる・集中力を必要とする負荷の高い作業です。パソコンなどのディスプレイを長時間使用し、細かい作業に集中しなければならないことから、目だけでなく自律神経や生活リズムの乱れなど、心身の不調が現れることがわかってきました。抑うつ状態・不眠・めまいといった症状が見られることもありますので、注意が必要です。
そのため、これまで以上に適度な休憩を意識することが大切です。厚生労働省もガイドラインなどを作成して呼びかけを行っており、自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備のポイントをまとめていますので、確認してみてはいかがでしょうか。
また、職場などで休憩中に役立つストレッチの方法も下記記事で紹介していますので、参考にしてみていただければと思います。
「労働時間の管理」「切り替え」「つながり」を意識して、心も身体も大切に!
テレワークや在宅勤務に限らず、時差出勤や少ない人数で業務を回さなければならないことも、増えたのではないでしょうか。
同じ職場内、隣の席などにいつも誰かが居て、質問や相談をしながら仕事を進めることができることばかりではありませんが、そのような環境が安心感につながっていることもあると、実感している方も多いかもしれません。
上司や同僚と直接顔を合わせて仕事を進める機会が減ってしまったり、コミュニケーションがスムーズにいかずストレスに感じたり、なかなかモチベーションが上がらなくなったり……。プライベートでも、以前のように思うように家族や友人などの親しい人と会えなかったりと、誰かに気軽に相談する、雑談の中で気持ちを打ち明けるタイミングを見つけるのが難しくなり、不安を抱えている方もいらっしゃると思います。
「人とのつながり」の有無は、メンタルヘルスとも深く関係しています。仕事とプライベートの切り替えや労働時間の管理を意識するのが大切であるのと同時に、これからは自分から声を上げること、些細なつながりを意識的に保つことが、自らの心身の健康を守ることにもつながるのではないでしょうか。
少しでも不安やストレス、体調に異変を感じた場合は、職場の産業保健スタッフや外部機関など、なるべく早めに誰かに相談してみることをおすすめします。
厚生労働省「こころの耳」をはじめ、市区町村やNPOなど各種団体が下記相談窓口を設けています。
- 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳:働く人の「こころの耳電話相談」
- 内閣府 男女共同参画局:「支援の関係機関」
- 厚生労働省:電話相談
〔参考文献・関連リンク〕
- 厚生労働省:「STOP!過労死 – 厚生労働省」
- 厚生労働省:自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備
- 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳:働く人の「こころの耳電話相談」
初出:2024年03月26日 |