前回、身体のストレスが心のストレスにつながることから、職場で実践できる2つの「ストレス解消ストレッチ」を紹介しました。
今回は、知っているようで意外と知らない、知らずに実践しているかもしれない、体のメカニズムを利用したストレス解消法について解説します。
知らずに実践している?
知っているようで意外と知らない、ストレス解消テクニック
皆さんは、日々の生活の中で自分の呼吸を意識したことはありますか?
仕事が忙しく、気が張っている状態が続くと、自分では気がつかないうちに呼吸が浅くなっていることがあります。緊張している時、イライラしている時、頭の働きが鈍っていると感じた時、まずは「深呼吸」をしてみましょう!
これだけで効果があるの?
と疑問を感じた方が多いかもしれません。
拍子抜けされたのであればまだしも、かえって怒りを募らせてストレスを余計に感じさせてしまったようでしたら…「胸式呼吸」ではなく「腹式呼吸」を意識して深く呼吸をしてみてください。
★呼吸で心を整えるストレス解消法 腹式呼吸
「ラジオ体操」の深呼吸のように、両手を広げて胸部に溜めるように口から息を吸い込むのが「胸式呼吸」です。「胸式呼吸」はリラックス効果が低いとされています。
一方、「腹式呼吸」は下腹部の動きによって呼吸をする方法です。
- 鼻から深く息を吸い、おへその下の丹田に入れましょう。
- ゆっくり細く長く息を吐いていきましょう。
丹田に息を入れる感覚が分からない場合には、自宅で仰向けになって寝転がった際など、おへその両脇に手を添えて下腹部の動きを意識しながら限界まで深く息を吸い、口をすぼめて下腹部の動きだけでゆっくりと息を吐き出してみてください。職場のオフィスなどでは、下図のように椅子に座った状態で実践してみてください。
精神疾患の治療や、アンガーマネジメントでも有効なリラクゼーション法
メカニズムには諸説あり、腹式呼吸によって下がった横隔膜が静脈に適度な圧力が与えられ、副交感神経の働きが強まってリラックス効果をもたらし、血流促進にもつながって酸素が脳に運ばれやすくなり、脳の疲れによって生じた活性酸素と新鮮な酸素との交換効率が向上して頭がすっきりし、結果として気分改善につながる、などなど。
軽症のうつ病の治療ガイドラインに運動療法やヨガ療法などの代替療法が提唱され、この代替療法の多くに共通するのが「呼吸法」だと言います。中でも「腹式呼吸」には心理的リラクゼーション効果や不安の低減、副交感神経活動の活性化などが報告され、心理面・生理面の両方でポジティブな効果を与える可能性が高いとする近年の研究があります。
怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」の一つ、「ディレイ(=遅らせる)テクニック」の中でも呼吸法が挙げられています。
人は怒りを感じると呼吸が浅くなりがちで、さらに怒りを感じた最初の6秒でアドレナリンが強く出て冷静でいづらくなるとされ、6秒間の怒りのピークを乗り切る上で「呼吸リラクゼーション」は手軽かつ有効です。 腹式呼吸の要領で鼻から大きく息を吸い、いったん止めてから口からゆっくりと吐き出す「呼吸リラクゼーション」の技法は、企業のライン研修などでも度々紹介されています。
少なからず、「腹式呼吸」によってもたらされる効果は、様々なところで有識者から推奨されているようです。
〔参考文献・関連リンク〕
- 関西学院大学「心理科学研究」Vol.45(2019年3月):
腹式呼吸が大学生の日常的抑うつ状態に及ぼす効果の検討 - 東洋経済ONLINE:
小林浩志(日本アンガーマネジメント協会認定ファシリテーター)「第2回 優れたパフォーマンスを発揮できる思考とテクニック」
初出:2017年10月31日 / 編集:2019年11月11日 |