2025年5月14日、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)が公布されたのはご存知でしょうか?
これにより遅くとも2028年5月(公布後3年以内に政令で定める日)までに同改正法が施行となり、従業員50人未満の事業場(パート・アルバイトを含む)におけるストレスチェックの実施も義務化されることが決定しました。
前提として、ここでいう従業員は「会社全体の従業員数」ではなく、「事業場(職場)に常勤する従業員数」である点に注意が必要です。当然、従業員10人未満の飲食店や小売店も含まれるため、法改正の対象範囲はかなり広いといえます。
【 目次 】
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改正労働安全衛生法「職場のメンタルヘルス対策の推進」ポイントと背景
ストレスチェック義務化の拡大、ではなく「50人未満の事業場は努力義務」と定めた特例(附則)の削除
メンタルヘルス不調に起因する労災支給決定件数の増加と、ストレスチェック実施状況の推移に課題あり
ストレスチェック実施を含む「メンタルヘルスに取り組んでいない理由」は?
全事業場におけるストレスチェック義務化に向けた、厚生労働省によるサポート体制の強化を明記
小規模事業者が円滑に制度改正に対応するための施策とは?
地域産業保健センター(地さんぽ)とは?
厚生労働省サイトの情報ページで最新情報をチェック
改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)
「職場のメンタルヘルス対策の推進」ポイントと背景
ストレスチェック義務化の拡大、ではなく「50人未満の事業場は努力義務」と定めた特例(附則)の削除
報道等で「義務化の拡大」という表現が多く使われていますが、実は現行法でも原則は全事業場でストレスチェックの実施を義務付ける内容となっています。下図のように、特例措置として「第十三条第一項の事業場以外の事業場」(=従業員50人未満の事業場)は「当分の間」は努力義務と定めていた附則が今回の改正で削除となり、「全ての事業場に(ストレスチェック実施と高ストレス者への面接指導の実施が)義務化」されます。

労働安全衛生法 附則
厚生労働省:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律
(令和7年法律第33号)新旧対照表 P.48
メンタルヘルス不調に起因する労災支給決定件数の増加と、ストレスチェック実施状況の推移に課題あり
今回の法改正に向けて協議を進めていた 第170回安全衛生委員会資料 等にも明記があるように、メンタルヘルスの不調に起因する労災支給決定件数は年々増え続け、令和5年度は883件と過去最多。連続1か月以上休業または退職者がいる事業場割合も近年上昇傾向にあり、事業規模の大小にかかわらず、従業員一人一人をケアする必要性が高まっています。
そのような背景がある中、令和5年度の労働安全衛生調査(実態調査)による「ストレスチェック実施状況」は50人未満の事業場は34.6パーセントと、第14次労働災害防止計画 で「2027年までに50%以上とする」としていた目標達成が難しい状況にあり、ストレスチェックを義務付けた50人以上の事業場でも81.7パーセントと実施率がここ数年は下降傾向にあることも課題の一つになっているものと思われます。

令和3年度・4年度・5年度 労働安全衛生調査(実態調査)「ストレスチェック実施状況」
厚生労働省:職場におけるメンタルヘルス対策の現状等
厚生労働省:ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策について
上記資料をもとに、情報基盤開発で作成
ストレスチェック実施を含む「メンタルヘルスに取り組んでいない理由」は?
また、同じ労働安全衛生調査(実態調査)の「メンタルヘルスに取り組んでいない理由」によれば、「該当する労働者がいない」「専門スタッフがいない」「取り組み方が分からない」「必要性が分からない」など、メンタルヘルス対策のさらなる浸透にも課題が見受けられ、特に50人未満の事業場においては「努力義務=実施不要」という誤解は多くないにせよ、対策の検討・着手を先送りしていた様子もうかがえます。

メンタルヘルスに取り組んでいない理由
【厚生労働省】ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策について
P.17「メンタルヘルスの実施状況②」
「専門スタッフがいない」という点では、現行のストレスチェックでは実施者(医師など特別な資格を持った方)の選任が必要です。50人未満の事業場は産業医の選任も「努力義務」とあって、全事業場でのストレスチェック義務化に向けた事業者の体制づくりは簡単ではありません。
厚生労働省は今回の法改正における「職場のメンタルヘルス対策の推進」の一環で、サポート体制の強化にも言及しています。
全事業場におけるストレスチェック義務化に向けた、厚生労働省によるサポート体制の強化を明記
厚生労働省が2025年6月付けで公開した改正法に関する資料 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要 で、「2.職場のメンタルヘルス対策の推進」の「改正内容」には下記のように記されています。
※小規模事業者が円滑に制度改正に対応できるよう、 ● 50人未満の事業場に即した、労働者のプライバシーが保護され、現実的で実効性のある実施体制・実施方法についてのマニュアルの作成 ● 医師による面接指導の受け皿となる「地域産業保健センター」(地さんぽ)の体制拡充等の支援策を講じていく。 また、50人未満の事業場の負担等に配慮し、十分な準備期間を設ける(施行期日は公布後3年以内に法令で定める日とする)。 |
厚生労働省:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要
P.4「2.職場のメンタルヘルス対策の推進」
小規模事業者が円滑に制度改正に対応するための施策とは?
前述の概要資料にある「ストレスチェックの実施体制・実施手法についてのマニュアルの作成」は今後の新たな情報発信が待たれるところですが、もう一つの「高ストレス者への面接指導の受け皿となる」地域産業保健センター(地さんぽ)については現在も利用可能です。
地域産業保健センター(地さんぽ)とは?
地域産業保健センター(地さんぽ)は、労働者数50人未満の小規模事業場を対象に、産業保健サービスを無料で提供している機関のこと。地域医師会などに委託されて運営されており、以下のような支援を行っています。
- 健康診断結果に基づく医師からの意見聴取
- 長時間労働者への面接指導
- メンタルヘルス不調者への相談対応や面接指導
- 事業場への訪問による個別指導
- 産業保健に関する情報提供
ストレスチェック実施の有無にかかわらず今からでも相談が可能ですので、まずは準備を進める過程で特設サイト 「さんぽセンターWeb」のチェックもお勧めいたします。
厚生労働省サイトの情報ページで最新情報をチェック
法改正についてはまだ不確定な点も多く、「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」ページなどでの続報が待たれます。
「施行期日は公布後3年以内に法令で定める日とする」とはなっていますが、ストレスチェック実施に向けた社内の体制確保など少なからず対応が必要になるため、情報収集をしながら早期に準備を進めていくことをお勧めいたします。
より詳しい内容を知りたい方は、下記〔参考文献・関連リンク〕に記載した厚生労働省の該当ページをご参照ください。本記事でも追加情報などがあれば更新していきます。

弊社でも ストレスチェックの実施者代行 や、産業医の紹介 を行っており、ご不明点がありましたらお気軽にお問い合わせください。
ストレスチェック実施のお悩みは、
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おかげさまで、昨年2024年単年度の導入実績4,800社・150万人!
厚生労働省マニュアル準拠、実施者代行や医師面接代行、産業医紹介等のオプションサービスも豊富な「ソシキスイッチ ストレスチェック」(旧称 AltPaperストレスチェック)のご利用を是非ご検討ください。
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〔参考文献・関連リンク〕
- 厚生労働省:
労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)
├ 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要
├ 労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて
└ 新旧対象条文
第170回安全衛生委員会資料「ストレスチェック制度を含めたメンタルヘルス対策について」
- こころの耳:
労働災害防止計画の概要-第14次労働災害防止計画(2023年度~2027年度)
- 独立表性法人 労働政策研究・研修機構:
ストレスチェック実施義務対象を50人未満の事業場にも拡大するよう提言
- 独立行政法人 労働者健康安全機構(JOHAS):
さんぽセンターWeb「地域産業保健センター(地さんぽ)」
初出:2025年07月29日 / 編集:2025年07月31日 |