株式会社情報基盤開発は、2024年中に「ソシキスイッチ ストレスチェック(旧:AltPaperストレスチェック)」をご利用いただいたお客様からデータをご提供いただき※1、「高ストレス者」※2の割合・「総合健康リスク」※3・「各種ストレス尺度」について業種別に平均値を算出した「ストレスチェック業界平均値レポート2025」を公開いたしました。(【調査方法】 については、記事の末尾に記載しております。)
本コラムでは、弊社発表の「ストレスチェック業界平均値レポート2025」から、「生活関連サービス業,娯楽業」の結果について、詳しく解説いたします。
【 目次 】
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「生活関連サービス業,娯楽業」の総合健康リスク、この2年で11ポイントの大幅改善!
「高ストレス者割合」は大幅に改善した前回の状態を維持
各項目(尺度)の値から読み取れること
【心理的な仕事の負担】は良・質ともに全業界中で上位、【不安感】【抑うつ感】の数値は全業界トップ
男性の【技能の活用度】が全14業界中ワースト1も、【自覚的な身体的負担度】は男女ともに改善
「生活関連サービス業,娯楽業」業界の背景について
【技能の活用】にも着目し、モチベーションやエンゲージメント向上につながる離職防止策等の検討も
調査方法
「生活関連サービス業,娯楽業」の総合健康リスク、この2年で11ポイントの大幅改善!
「総合健康リスク」は、職場に対して感じているストレスを「仕事の量-コントロール」と「職場の支援(上司や同僚からの支援)」の2軸に分け、職場の環境が従業員の健康にどの程度影響を与えるかを総合的に評価したものです。
同業界の総合健康リスクは今回95.7(前年比-4.5)となり、前回の数値(100.2)から大幅な改善がみられました。
実は前回「ストレスチェック業界平均値レポート2024」(2023年の実施結果)で前年比-6.6ポイントと非常に大きな改善を見せていました。それがさらに今回の結果で厚生労働省の基準値100を下回りました。この2年でおよそ11ポイント改善したことになります。

「ソシキスイッチ ストレスチェック」
業界平均値レポート2025:受検率・高ストレス者割合・総合健康リスク業界別一覧「生活関連サービス業,娯楽業」
※赤い囲み部分 …
総合健康リスク:110以上を赤色、100以上を黄色に色分け
高ストレス者(A判定)割合:15%以上を赤色、10%以上を黄色に色分け
※A判定割合 … 高ストレス者割合
当社のデータでは、厚生労働省公表のストレスチェック結果の分布で最も高い評価「A」判定を示した受検者の割合を用いています
「高ストレス者割合」は大幅に改善した前回の状態を維持
「高ストレス者」は、回答項目の中でも心身のストレス反応に関する項目を中心に評価しており、実際にストレス反応が現れている場合に高くなり、一定の基準を超えると高ストレス者と判定されます。各事業場の中で高ストレス者がどの程度いるかを示したものが、高ストレス者割合です。
「生活関連サービス業,娯楽業」 の高ストレス者割合は14.5%(前年比+0.1)と、前回(14.4%)と同程度の数値で大きな変化はみられませんでした。
ただ、総合健康リスクと同様、高ストレス者割合に関しても前回「ストレスチェック業界平均値レポート2024」(2023年の実施結果)で大幅な改善がみられていた(前々回19.0%→前回14.5%)ため、今回そこから再度悪化することなく、数値を維持している点は評価してよいポイントと思われます。
なお今回の結果では、全14業界中(「T.分類不能の産業」を除く)10業界で高ストレス者割合が14%以上となりましたので、「生活関連サービス業,娯楽業」の14.5%という数値は最頻値(データ上で最も出てくる頻度が高い数値)に近いといえます。

「ソシキスイッチ ストレスチェック」
業界平均値レポート2025:総合健康リスク・高ストレス者割合「生活関連サービス業,娯楽業」
弊社ストレスチェック業界平均値データの数値の増減は、事業者数(受検者数)の変動による影響も考えられます。そのため一概にはいえませんが、実際にはそれぞれ自社の環境変化とデータ値個別の変化を照合するなどして職場環境改善策を検討する必要があるものの、それぞれの職場環境課題と向き合って改善を進めてもらえたらと考えます。
各項目(尺度)の値から読み取れること

「ソシキスイッチ ストレスチェック」
業界平均値レポート2025:「生活関連サービス業,娯楽業」各尺度(偏差値)_男・女
上記は、「生活関連サービス業,娯楽業」のストレスチェックの各尺度の数値(偏差値)を表しています。
【心理的な仕事の負担】は良・質ともに全業界中で上位
【不安感】【抑うつ感】の数値は全業界トップ
まず特徴として、【心理的な仕事の負担(量)】【心理的な仕事の負担(質)】は他の業界と比べても負担が少なく、良好な数値である点が挙げられます。仕事の質量ともにバランスが取れており、特に男性は良好な数値を示しています。基準値50を3ポイント以上上回り、全業界を通してみても上位に位置しています。
男性に関しては【心理的な仕事の負担(質)】は全14業界中でもっとも数値がよく、【心理的な仕事の負担(量)】は「運輸業, 郵便業」に次いで2番目に良好です。
女性の数値に関しては、全体的にどの業界もやや低く出ている(=より負担が高い)ことや業界別の差が大きくはない印象ですが、それでも【心理的な仕事の負担(質)】と【心理的な仕事の負担(量)】はそれぞれ上位3番目と4番目(「T.分類不能の産業」を除く)に位置しています。
さらに、【不安感】【抑うつ感】は他の業界を上回る数値です。
数値としては基準値(50)よりもやや良好な程度ではありますが、【不安感】は男性が51.4と全14業界中1位、女性も51.8で「農業・林業, 漁業,建設業」「製造業」と並び同じくトップでした。【抑うつ感】も男女それぞれ、男性:51.1、女性:51.8(「保健衛生、社会保険・社会福祉・介護事業」と同数)で、全業界でトップの数値となっています。

男性の【技能の活用度】が全14業界中ワースト1も、【自覚的な身体的負担度】は男女ともに改善
一方で、【技能の活用度】については、男性の数値が全14業界中ワースト1という結果でした。
男女差はあるものの、自分のスキルや経験を十分に活用できていないと感じている方の割合が高いことがうかがえます。仕事の質的・量的な負担や心理的なストレス反応の項目で数値が悪くない反面、自身の技能や経験を業務に生かせていないと感じている様子です。
今回、総合健康リスクの改善幅が全業界を通じてもっとも大きかった「生活関連サービス業,娯楽業」ですが、その一因として考えられるのは、【自覚的な身体的負担度】の数値改善の影響があるかもしれません。上の「各尺度(偏差値)」のグラフ図では、基準値を大きく下回っているためとても不良な数値に映りますが、前回の結果と比較してみたところ、前回:41.8→今回:44.0(女性は前回:42.6→今回:44.1)と改善しています。
男女間で身体的負担に大きな差のない業界で、同じく人的なサービスを提供する「M. 宿泊業,飲食サービス業」と変化の幅を比べてみても、前回と同程度の数値でほぼ変化のなかった同業界(1ポイント未満)に対して、「生活関連サービス業,娯楽業」は約2ポイント改善していることが読み取れます。
「生活関連サービス業,娯楽業」業界の背景について
新型コロナウイルスのパンデミックは、私たちの生活だけでなく、サービス産業全体に大きな影響を与えました。なかでも、外出や対面によるサービス提供が主だった業務を多く占める生活・娯楽サービス業界は、特に甚大なダメージを受けた業界の一つです。
「生活関連サービス業,娯楽業」には、下記のような施設・職種で働く方が含まれています。
・生活関連サービス業:洗濯・理容・美容・浴場業、冠婚葬祭、家事代行など
・娯楽業:映画館、カラオケ、アミューズメント施設、パチンコ、テーマパークなど
総務省の「サービス産業動向調査」によれば、全体として見るとコロナ禍以前の水準に徐々に近づき回復しつつあるようにも見受けられますが、各業種・職種によって実状は異なり、その格差は顕著に出ているとの見方もあります。

生活関連サービス業,娯楽業の年間売上高推移(2018年~2024年)
※総務省「サービス産業動向調査」の資料をもとに、情報基盤開発にて作成
例えば同じ娯楽業であっても、大型テーマパークなどはイベントの解禁や家族連れの回帰、インバウンド需要などによりコロナ禍以前の売り上げ・来場者に迫る、もしくは上回る傾向もみられる一方で、地方の小規模レジャー施設やフィットネスクラブなどは収益が8割程度にしか回復しておらず、人手不足や設備投資、コストの課題なども多くのしかかっているようです。
また、雇用・労働力の供給に関しては需要の回復に追い付かず慢性的な人手不足が深刻化しており、需要と供給のミスマッチが拡大しているとみられ、企業規模や都市部と地方との間の格差・課題がより浮き彫りになっていると指摘する声もあります。

加えて、物価の上昇やライフスタイルの変化の影響は想像以上に大きく、コロナ禍で余儀なくされた自粛生活の反動として期待されていた消費活動「リベンジ消費」は限定的で、業界全体の需要回復の後押しとはなっていないのではないかとの調査報告もみられます。
【技能の活用】にも着目し、モチベーションやエンゲージメント向上につながる離職防止策等の検討も
今回のストレスチェック業界平均値の結果を踏まえると、「生活関連サービス業,娯楽業」は理美容やクリーニング関連、スポーツジムやエンターテイメントに関する職種も含まれ、スキルや資格を生かした職種・技術職で【技能の活用度】が良好な結果となることが多いと想像しがちです。ところが、弊社の業界平均値データ上では、「生活関連サービス業,娯楽業」における【技能の活用度】の数値は他の業界と比較して決して良好とはいえない結果でした。その他の尺度の値とのバランスを考えると、「自分のスキルや経験を十分に活用できていない」と感じている方の割合が高いように見受けられるのが気になった点です。
一方で、弊社のストレスチェックサービスを利用されている同業界のお客様の中には、福利厚生の充実や従業員から意見を募りそれを改善に活用できる仕組みづくり、表彰制度などの導入を通して、モチベーションを高めることに尽力され、その成果として、従業員が自らの知識・経験の活用や貢献度を実感することができ、ストレス緩和やエンゲージメントの向上など集団分析結果によい影響を与えたのではないかと考えている、といった話をうかがいました。
人的サービスは形のないサービスです。表からは目に見えづらい部分で努力や丹念が必要な場合もあったりすると、なかなか具体的な形で貢献度やその価値を実感しづらいのではないかと想像します。ですが、取り組みの工夫次第では、前述の企業のように数値の改善が見込めるのではないでしょうか。
各職場の現状や雇用・勤務体制、業界特有の構造などもそれぞれ異なるかと思いますので、まずは自社の集団分析結果と向き合い、必要に応じて対策を講じてみることをお勧めいたします。
ちなみに、労働安全衛生法の改正により、今後は50人未満の小規模事業所にもストレスチェック実施が義務付けられるようになります。また、これまで保護対象外だったフリーランスなど(個人事業者等)に対しても安全衛生対策が義務付けられますので、現場でフリーランスのスタッフを受け入れている場合には、常勤スタッフや従業員と同じように健康を守ることが必要です。
その点も併せて、自社の集団分析結果を改めて見直していただき、弊社提供の業界平均値データを職場環境改善策検討の一助として活用いただけますと幸いです。
【調査方法】
この度算出いたしました業界平均値データは、弊社サービス「ソシキスイッチ ストレスチェック(旧:AltPaperストレスチェック)」を2024年中にご実施いただいた事業者を対象に、集団分析結果のご提供の承諾を個別に伺い、同意いただいた事業者のデータのみを用いて分析を行ないました。
比較の基準としている「全国(厚労省データ)」は、
厚生労働省科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業「職業性ストレス簡易調査票及び労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストの職種に応じた活用法に関する研究」、平成19年度総括・分担報告書 表4 職業性ストレス簡易調査票下位尺度の職種別平均値及び標準集団との比較、が出典です。
集計につきましては、事業者様のデータについて男性参加者データ・女性参加者データに分け、高ストレス者の出現割合、健康リスク、各尺度の平均値を業種ごとに算出しました。なお、本記事につきましては基本的に「男性」データを用いて、比較・分析を行っております。(男女別の数値を示している箇所を除く)
※1 データの取り扱いについて:
・各事業者様にご提供いただいたデータにつきましては、業種・規模・地域をお伺いして分類することとし、個々の事業者様・受検者様を識別できないようにして取り扱っております。
・各受検者様の回答につきましては、性別・職種と57項目・80項目の回答データのみ使用することとし、個人を識別できないようにして取り扱っております。
・業種の分類は、総務省の日本標準産業分類(大分類、一部中分類) に従います。著しく事業者数が少なかった業種については比較的近い業種に集約しております。
※2 「高ストレス者」とは:
厚生労働省(令和元年7月)が公表したマニュアルに基づいており、以下(1)及び(2)に該当する者を指します。(1)及び(2)に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度を基準とします。
(1)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
(2)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」
及び「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下
※3「健康リスク」とは:
基準値として設定された全国平均値100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」とは、 男女別に求められた「量-コントロール判定図」と「職場の支援判定図」から構成されます。この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。
「量-コントロール判定図」はストレスチェックから得られた「心理的な仕事の負担(量)」「仕事の裁量度」の2尺度の数値から、職場の支援判定図 は「上司からの支援度」「同僚からの支援度」の2尺度から求められます。
ストレスチェック実施のお悩みは、
情報基盤開発にお問い合わせください
おかげさまで、昨年2024年単年度の導入実績4,800社・150万人!
厚生労働省マニュアル準拠、実施者代行や医師面接代行、産業医紹介等のオプションサービスも豊富な「ソシキスイッチ ストレスチェック」(旧称 AltPaperストレスチェック)のご利用を是非ご検討ください。
下記のフォームより、最新の「ソシキスイッチ ストレスチェック」サービス案内資料のダウンロード、ならびにお気軽にお問い合わせください。
〔参考文献・関連リンク〕
- 情報基盤開発:ストレスチェック業界平均値データ2024、および2023
- 総務省統計局:
大分類 N-生活関連サービス業,娯楽業
「サービス産業動向調査」2024年(令和6年)12月分及び10~12月期(速報)
- 帝国データバンク:
娯楽サービス業界の最新景況レポート
※2024年7月17日公開
「フィットネスクラブ・スポーツジム」業界動向調査 (2024年度)
※2025年5月16日公開
- SOMPOインスチチュート・プラス:
物価高でも好調な娯楽業 ※2025年5月7日公開
- 厚生労働省:
労働安全衛生法及び作業環境測定法改正の主なポイントについて
※2025年6月公開
初出:2025年7月29日 |