【セルフモニタリング編】では、心や身体の状態を観察・記録することにより、ストレスの原因や自分の考え方のクセ、感情・身体・行動の変化などにあらわれるストレス反応を可視化していく方法について解説しました。
ストレスと上手に付き合うためには、自分のストレスを知り、自分なりの対処法を身に着けることが必要です。
今回は、自分に合ったストレス対処法「ストレスコーピング」の見つけ方について解説します。
「ストレスコーピング」とは?
ストレスコーピングは、ストレスの原因(ストレッサー)やストレスを感じたときにあらわれるストレス反応から自分を守り、気持ちを落ち着けたり、ストレスから受けるよくない影響が少なくなるよう工夫して対処する方法のことです。
コーピングには、大きく分けて2つ(または3つ)の種類があるといわれています。
直面している問題(ストレッサー)自体を、自分の努力や周囲の協力を得て課題を明確にし対処しようとする「①問題焦点型」と、ストレッサーそのものに働きかけるのではなく、それに対する考え方や感じ方を変えて対処する「②情動焦点型」(ここに「③ストレス解消型」を含みます※)で、普段私たちは無意識のうちにこれらを組み合わせながら、ストレスに対処しています。
実はすでに無意識に使ってるコーピングも
無意識のうちにコーピングを組み合わせながらストレスに対処しているってどういうこと!?……とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、すでにご自身で意識せずに行っているコーピングが、実は私たちにはそれぞれあるはずなのです。
例えば、甘いものやポテトチップスを食べる、コーヒーブレイクをする、誰かに愚痴を言う、SNSに気持ちを書き込む、運動してストレス発散する、好きな映画やお笑い番組を観るetc…よくいう「ストレス解消」や「気晴らし」のために行う行動は、立派なコーピングの一種。
ストレスを感じてもため込まず対処できる人は、このコーピングの使い方が上手なのです。

ただ、ここで注意しておきたいのが、ストレスの種類や反応は、人それぞれみな異なるということ。あなたにとってストレスが大きい出来事は、他の人にとってはそれほど大きくはないかもしれません。逆に、まったく同じ状況にあっても、あなたはわりと上手く受け流して気持ちを切り替えられる場面でも、他の人にとってはイライラや悲しみなど、自分を苦しめる状況に陥ってしまうこともあります。さらにコーピングも同じで、他の人や他の場面ではそのコーピングを使って対処すればストレスを和らげるのに役立つのに、状況や人が変わると、モヤモヤは減らずいつまで経っても気分が落ち込んだまま…など、ストレスの影響を大きく受けてしまう場合もあるのです。
具体的にいうと、例えば「仕事が上手くいかず残業続きで集中力がなくなり、気分もすぐれない」場合、普段だったら十分な睡眠をとり、大好きなスイーツを食べて、友人と飲みに行けば回復するのに、同じ状況でも今回はそれに加えて「自分の能力が足りないのではないかという考えが頭に浮かんできてしまう」「上司の一言で傷ついてモヤモヤしている」などの状況が重なると、同じコーピングを使っても効果が出ない……といったことが起こり得ます。
そこで、ストレスの種類や状況に応じて、コーピングを意識的に使えるようになることが大切です。
コーピングを効果的に使い、ストレスに対処するためには?
前回ご紹介した「セルフモニタリング」を行い、ストレスと感じる出来事・状況や、ストレスを感じたときに自分の感情や身体に出る反応の傾向が自分なりにわかってきたら、今度はどのコーピングを使えばストレスが少し和らいでラクになるのかを試しながら、自分にとって効果的なコーピングを見つける作業をしてみましょう。
そのためには、自分がいざというときに使えるコーピングを書き出して、リストアップしておくことがおすすめです。
コーピングリストの作り方

① まずは、自分が「普段ストレスが溜まったときに実際にしている行動」や、「気持ちが落ち着く」「癒される・楽しい気分になること」を思い返してみましょう。
② 次に、それをメモしてリスト化していきます。書き方に正解はありません。思いつく限り、できればたくさん挙げてみましょう。下記の例を参考にしながら、書き出してみましょう。
<コーピングの例>
・音楽を聴く(好きなアーティスト/ジャンル/曲をなるべく特定する)
・ちょっと高めのスイーツを買う
・買い物に行く
・一駅先まで歩く
・散歩をする
・ずっと気になっていた本を読む
・ジムに行って身体を動かす
・バッティングセンターに行く
・漫画喫茶に行く/漫画をひたすら読む
・起きる時間を決めずにひたすら寝る
・ゆっくりお風呂に入る/お気に入りの入浴剤を入れる
・自分が落ち着くと思うアロマの香りをかぐ
・マッサージに行く/美容院に行って髪を切る/ネイルサロンに行く
・部屋の掃除をする
・一人カラオケに行く
・映画を観に行く
・日帰り温泉に行く
・旅行の計画を立てる/次の休みの予定を具体的に決める
・気の合う同僚とごはんやお酒を飲みに行く
・友だちとカフェでランチをする
・ヨガをする
・かわいい猫の写真・動画を見る
・youtubeで面白い動画を探す/お笑い動画を見る
・家族や友人に愚痴を聞いてもらう
・ホットココアを飲む
・やわらかい毛布やタオル、もふもふしたものを掴む
・深呼吸をする
・目を閉じて呼吸に集中する
・嫌だと感じたことをひたすらノートに書く
・紙を切り刻んで捨てる
・とりあえずその場から離れる …etc
ポイントは、できればその場ですぐにできること、お金を使わなくてもできることをリストの中に入れておくことです。また、お気に入りの場所やスイーツ、カフェのメニュー、音楽などはなるべく具体的に・細かく書くことも重要です。
前回解説した「セルフモニタリング」を行い、自分のストレスと反応を「見える化」すること自体もコーピングの一つですし、いざとなったら自分を助けてくれるリソースがたくさんあるのだと知ることも、大切なストレス対処法なのです。
ストレス状況に合わせて、コーピングを試しに使ってみよう
ある程度挙げることができたら、今度はコーピングリストを実際に使い、効果を試してみます。

③自分のストレスに気づいたとき、気持ちや身体が思うようにいかないとき、そのリストから1つ選んで試しに使ってみましょう。
④そのコーピングを使って効果があったかどうか、メモをしておきます。効果がなければ次は別のコーピングを選んで試してみる、効果があれば同じような状況になったときにはそのコーピングを使うことを習慣にしてみましょう。
出来上がった「コーピングリスト/コーピングレパートリー」は、ストレスから自分を助けるお守り・切り替えスイッチになります。また、効果を検証しながらその都度更新し、どんどん増やしていく習慣をつけると少しずつ自分の助け方が掴めてくるのではないかと思います。
今回お伝えした例を参考に、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?
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〔参考文献・関連リンク〕
- 熊野宏昭・伊藤絵美・NHKスペシャル取材班 監修(主婦と生活社出版、2017年)
「キラーストレス」から心と体を守る!マインドフルネス&コーピング実践CDブック
初出:2025年01月29日 |