テレワークの普及やライフスタイル、働き方の変化などで「家族みんながずっと家にいること」も珍しくなくなりました。
最も人との距離が近い場所である「家・家族」に対して感じるわずらわしさに、もやもやしている方もいるかもしれません。
「なんだか家にいるのがしんどい」と思うときに、できることは何でしょう?
家族でも「当たり前」は一人ひとり違う
近しい人との間に生じるイライラは、その背後に「当たり前」のズレがあることがほとんどです。例えばコロナ禍以降、特に気になるようになったのは、衛生観念や生活習慣の違い。「外から帰ったときに手を洗ってくれない」「危機感を持ってほしい」などに関するイライラは以前より増えたのではないでしょうか。買い物や家事の方法・分担、ものを頼むときの話し方などもイライラの原因としてよく聞かれますね。
家族・親子といえど、許せるラインは人それぞれ。特に入浴や食事、洗濯や掃除といった清潔さに関わる部分は嫌悪感の感じ方の差もあって我慢がしにくい面が強いです。また一緒にいると「言わなくてもこれくらいわかるでしょ」と思いがちで、親しい相手ほどコミュニケーションがおざなりになってしまうという声も聞かれます。
家の中や生活習慣はどうしても外から見えません。自分では「これが常識」「この方法が当たり前」と思うことこそ、「本当は違うのかも……」と確認すれば新しい発見があるでしょう。家族になったからといって相手の「当たり前」が変わったり、「何も言わなくても伝わる」ということになったりはしません。感染症予防として「手洗いや消毒の方法」「予防に効果的な習慣」は広まりましたが、今後は人それぞれ認識の違いにより再び差が出てくる部分が大きいでしょう。今一度、大事な人と「一緒に過ごすルール」を見直してみてはいかがですか。
一人で過ごす寂しさを「心の不調」にしないために
一人暮らしをされている方がお家にいることが増えると、人とのコミュニケーションがガクッと減ってしまいます。私自身も、仕事場やちょっとした外出で交わしていた会話がなくなってしまい、一日中誰とも話さなかったということは珍しくなくなりました。そうなってくると「なんとなく満足感がない」「やることはあるのに手が付かない」といった状態になりがちです。
「人と直接会う」「コミュニケーションをとる」ということの影響力は思うよりも大きく、話の内容に関わらず顔を合わせて話をするだけで人間の生得的な欲求のいくつかを満たすことができます。
逆に言えば、直接会う以外のコミュニケーションでは満たすことが難しい欲求があるということ。通信技術の発達した現在では、チャットや電子掲示板、音声電話、Webミーティングなど特色あるコミュニケーション手段が手軽に利用できます。目的やライフスタイルに合ったコミュニケーション手段をいくつか試してみて、それぞれの「いいところ」を体感してみてはいかがですか。
それと、人に会う機会が限られている今こそ「コミュニケーションの瞬発力」を磨くチャンスです。「ありがとう」「すみません」「お願いします」といった挨拶は、普段気にしていないからこそおろそかになりがち。機会を逃さないで対応できるように、宅配便の配達員や外出先の店員さんに「ありがとう」を言うチャレンジを行ってみましょう。
どうしてもつらければ、早めに相談を
コロナ禍で提唱された「ソーシャル・ディスタンス」は、人と人との距離を2メートルあけることを推奨したものでした。実はこの2メートルという距離は、「パーソナルスペースを十分に守って会話がしやすい」距離でもあります。2メートルを実際に測ってみるとそこまで離れているとは感じません。「ダイニングテーブルを挟んで向かい合う」くらいの間隔というのがちょうどそれくらいでしょうか。家族や近しい人ときちんと心地よい距離を保って暮らしていけたらいいですね。
人間のパーソナルスペースは、相手をどう感じるかによって日々変わってきます。昨日に気持ちよく過ごせても、どちらかの体調が悪かったり嫌なことがあったりすれば、今日や明日は一緒にいるのがつらいというのもうなずけます。「家族なのに一緒の部屋にいられないなんて」と思うかもしれませんが、これは人間の心理的な作用として正しいものです。
「どうしてもつらい」「ダメになってしまいそう」と感じるなら、なるべく早く外部の人に相談を。内閣府男女共同参画局や厚生労働省「こころの耳」、市区町村やNPOなど各種団体が相談窓口を設けています。
「相談するのは恥ずかしい」「こんなことで……」と思わず、誰かに話してみませんか。
働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳:働く人の「こころの耳電話相談」
内閣府 男女共同参画局:「相談機関一覧」
厚生労働省:電話相談
初出:2020年05月04日/編集:2025年05月19日 |