ストレスチェックの集団分析:集団分析結果を使った“職場の課題”の見つけ方

ストレスチェックの集団分析②:「ストレスチェックの集団分析」を使った職場の課題の見つけ方

ストレスチェック制度では、ストレスチェックの結果を用いて集団分析を行うことが推奨されています。

しかし、
「集団分析のグループ分けをどのように決めたらよいのかわからない」
「集団分析のデータの活用の仕方かわからない」
など、集団分析のグループ分けや職場環境改善への活用の仕方についてお悩みの方も多いのではないでしょうか。

そこで、ストレスチェックの結果から職場環境の現状を把握しやすいデータを得るために、まずは集団分析のグループ分けを工夫してみることがお勧めです。
また、集団分析を職場環境改善に活かすためには、グループ分けの方法だけではなく「比較」や「視点」にもちょっとしたコツが必要です。今回は集団分析を職場環境改善に上手に活用するために人事・労務ができる「まとめ方のコツ」をご紹介します。
 

 

 

ストレスチェックの集団分析で、何がわかるの?

集団分析を実施することで、職場のストレスの要因となっているのは何かを探ることができます。

例えば、
・【仕事の量的負担】に問題がある場合:仕事の量が多すぎる/人員が足りていない/業務効率に課題がある/特定の部署に負担がかかりすぎている etc…
・【上司の支援】や【同僚の支援】に問題がある場合:上司として部下のサポートが十分にできていない/上司のマネジメント力が不足している/職場内のコミュニケーションが不足している etc…
・【役割葛藤】【役割の明確さ】に問題がある場合:矛盾した要求や指示に混乱や葛藤が生じている/業務をする上での自分の役割が明確に示されていない・理解できていない/対応しなければならないことが多岐にわたる etc…

……などの理由で、ストレスや健康リスクが高まっていることを可視化することが可能になります。
そして、その結果をもとにして、「現在のストレス状況を改善するために何かできる対策はないか」「何を改善することが必要なのか」を検討する手がかりを得ることができるようになります。
 
社内の状況が気になっていても、原因がわからなければ対策を考えることはできません。
しかし、集団分析の結果と併せて、現場の状況をヒアリングしたり、社内体制や人事異動など環境の変化を複合的に分析することで、職場環境改善を具体的かつ効率的に、そしてきちんと効果あるものにすることが可能になるのです。
 
そのために大事なのは、集団分析の「グループ分け」と「比較」です。
それでは、実際に集団分析グループを設定するポイントを見ていきましょう。
 

 

部署・雇用形態・年代・性別ごと…
ストレスチェックの集団分析で、「共通条件」からストレスの原因を探ろう

ストレスチェックの集団分析をする際にまず必要になってくるのは、どの集団・グループで集団分析をするかを決めること。その基本は「共通条件のある従業員で集団・グループを作る」です。
 
事業所」や「部署」など、同じ環境のなかで仕事をしている人たちや、業務内容が共通している人たちを一つの集団としてグループ分けすることにより、その職場環境で生じているストレスを特定しやすくなると考えられます。
厚生労働省も例示しているように、一般的に多くの企業で実施されているのがこの方法かと思います。

雇用形態」や「役職」など、業務上の責任の有無や立場ごとに集団分析を行うと、その職場内の関係性や、立場上発生しているプレッシャーなど、雇用条件や責任による違いやストレス傾向の把握がしやすくなります。他にも「入社何年目か」などでさらに細かく分けることにより、社内独自の傾向がわかる可能性もあります。

また、「年代」や「性別」による分析で見えてくるものもあります。昨今は働き方改革や女性活躍が推進されているとはいえ、育児休業等などにより優秀な人材が存分にスキルを発揮できていない可能性も想定されますので、集団分析でグループとして見てみることにより、ストレス状況を可視化できる可能性も高まります。部署全体として結果が良好であっても、男女間で感じているストレスが異なる場合もありますし、年齢によってストレスチェックの回答が異なる場合は、社内の制度や職場の雰囲気、風土などにも原因があるかもしれません。
 
仕事のストレスの大小や原因は、従業員一人一人異なるものです。仕事以外に原因があることもありますが、それぞれが「職場の中でなんとなくストレスを感じているけど、特定の原因がわからないまま、気づいたころには心身に不調が表れて疲弊してしまっていた…」といったケースもあるようです。そこで、このように「集団」として分析してみることで、共通の課題が見えてくるようになることも多いのです。集団分析結果をもとに、負担を軽減するための設備の導入や、社内制度の拡充、職場内の人間関係の課題を解決するための方法を検討するなど、具体的な施策を考える第一歩となります。
 

 

ストレスチェックの集団分析は「比較」が大事!

ストレスチェックの集団分析は、従業員のデータを集計して「グループごとの特徴や傾向」を分析するための方法ですが、他にも大切な視点があります。
部署ごとや事業所ごとなどグループを決めて実際に集団分析を実施したあとには、「その結果をさらに比較すること」で見えてくるものがあります。ここでは「①似た条件の集団・グループとの比較」と「②経年比較」に分けてご紹介します。
 

①似た条件の集団・グループとの比較

  • 共通する業務の「部門」や「事業所」を比較する

    例えば、
    「A事業所の営業部門」と「B事業所の営業部門」の比較
    「C工場」と「D工場」の比較など、仕事内容や労働条件の近い集団を比較し、その職場特有の環境や条件の違いにより生じているストレスを把握するのに活用する方法です。

    部署・部門の共通の傾向を把握することが可能となるのに加えて、改善しなければならない課題やその要因を探ることに役立ちます。

    集団分析の比較を行うときは、部・課であれば部門、事務職であれば事務部門、店舗であればその店舗のある地域……などその部署と同じ属性の「部署の一つ上のサイズ」の集団と比較することをお勧めします。それ以上細かな集団で実施すると、個人が特定されてしまう可能性が出てきますので注意が必要です。
    (例:よく見知った部署同士で比較を行うと「【仕事の量的負担】の結果が良好のはあの部署が特別だからだ」「個人に裁量権がほとんどなく、【仕事のコントロール】の数値が悪いのはあの人がいるからだ」などと個人や部署の特有の原因と結びついてしまうことも。)

    一方で、集団分析では、集団・グループの人数が大きいほどその結果も平均的になります。分析を行ったグループをやみくもに総当たりで比較しても、傾向や特徴がどんな要因からストレスが発生しているのかを掴みにくくなってしまうため、比較する対象集団のサイズの違いも確認しておく必要があります。
     
  • 「企業全体」の集団分析結果と比較する

    部署や業務内容などで集団分析を試みても原因がわかりにくい場合は、「組織全体のストレスチェック・集団分析結果」と合わせて分析するという手法もあります。
    ※この分析は、ストレスチェックの実施者となることのできる、産業医もしくはそれに準じる資格を有する方による実施・確認が必要です。)
     
    この手法は社内全体にかかるストレスの特徴を掴むことができるため、会社の制度に対する不満やストレスを分析するのに有効です。

    例えば、ストレスチェックの項目の一つ【仕事の量的負担】の数値・結果が不良であった場合、有効な対策は「業務量や残業時間の見直し」です。しかし、なかなかすぐに対応ができる企業は少ないでしょう。

    ですが、【仕事の量的負担】を感じている年代・役職を併せて分析した結果、30~40代の中間管理職が多いようであれば、中間管理職層と限定して、研修や面談の実施、支援体制の検討など対策を重点的に行うことで改善する場合もあります。

    このように複数の集団の結果を突き合わせて比較することによって、より効果的な対策の検討ができ、高ストレス者に限らずとも産業医などとの面談実施・推奨を促すようにしたり、重点的な対策をするグループを決めるなど、職場環境改善の具体的な提案がしやすくなるでしょう。
     
    また、社風や賃金、業務の偏りといった組織全員が関わる問題については、各集団だけではなく全社・全部署との比較が必要です。
    逆に、【上司の支援】や【同僚の支援】など職場内のサポートの有無など、個々の関係性・業務内容に関わる部分の課題は、「企業全体」のような大きすぎる集団データを使用しても明確な分析結果が得られにくいと考えられますので、比較の際は改善のために知りたい情報に応じた比較が大事となります。
     

 

②経年比較

ストレスチェックを導入してから数年経ち、データがたまってきた頃にお勧めなのが「経年比較」です。昨年、今年、来年と実施したストレスチェックの集団分析結果を比較することで見えてくるものもあり、定点観測や職場環境改善施策の効果を見える化するのにも役立ちます
 
例えば、
・前回の結果を踏まえて、残業時間の見直しを行った。
・前回【上司の支援】【同僚の支援】【職場での対人関係】の結果がよくなかったので、コミュニケーションやサポートを強化した。
といった場合、その対策の効果がどの程度あったのかは、経年比較で測ることができます。

その他にも、管理監督者が変わった、体制が変更になった、休職者が出たことで今回は人員が不足していて大変そうだ、など環境の変化の影響や面談などでの従業員から聞き取った情報を踏まえて分析することで、今後の職場環境改善の糸口が見えてくるのではないでしょうか。
 

有効な職場環境改善施策には、問題の関連づけが重要!
「経年比較」「業界比較」も取り入れて

ストレスチェックの集団分析は、「その集団特有の環境や条件」と「ストレス傾向」を可視化することにより、現在の職場が抱えている課題や、職場環境改善に必要なことは何かをより明確化する手法です。一つの集団だけではわかりにくい特徴も、組織全体や複数の結果と合わせて比較することで、集団の強みと課題を明らかにし、各集団に合った効果的な対策を講じる大切な手掛かりになります。
 
さらに業界全体や全国データと比較することで、自社で働く従業員を取り巻く環境に加えて、業界に共通してみられる傾向・特徴や、自社の立ち位置を数値で知ることができ、対策を考える際の目安として活用できます。
 


今回は、集団分析を職場環境改善に活用するために必要な視点やグループ分け、比較の仕方のコツをお伝えしてきました。
集団分析をすることで社内の課題を見える化し、対策を考えることにより、従業員の満足度や働きがいを高め、離職防止やエンゲージメントにつながる可能性も期待できます。

この記事でお伝えしてきた「経年比較」や、弊社独自の「業界平均値」を盛り込んだ集団分析レポートのサンプルは、下記よりダウンロードできます。

ぜひ、御社のストレスチェックと集団分析の参考にしていただければ幸いです。
 

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〔参考文献・関連リンク〕

初出:2021年02月03日 / 編集:2025年12月25日

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