健康経営の背景
近年、超高齢化社会が進み労働力人口が減少しているため、企業としては労働力確保のために従業員の雇用延長等を積極的に図るなどの対策を取らなければならなくなっています。
従業員の健康状態の悪化は企業の生産性を低下させることになり、さらには人材定着率の悪化等、有能な人材の確保にも悪影響を及ぼす可能性があるため、企業負担の増加や生産性の低下を防ぐために企業が従業員等の健康保持・増進に主体的かつ積極的に関与する必要が生じています。
上記のような状況を背景として、健康経営に取り組む優良な法人を「見える化」することで、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人」として社会的に評価を受けることができる環境を整備することを目的として、健康経営銘柄や健康経営優良法人等の顕彰制度が設けられました。
健康経営に取り組む企業を「見える化」する制度
1.健康経営銘柄
2015年度からスタートした「健康経営銘柄」は東京証券取引所の上場会社のみを対象とした制度で、経済産業省と東京証券取引所が共同で健康経営に優れた企業を原則1業種1社選定します。
この取り組みでは、「健康経営」に優れた企業を選定し、長期的な視点からの起業価値の向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介することを通じ、健康経営に取り組む企業が社会的に評価され、より「健康経営」の取り組みが促進されることを目指しています。
選定にあたっては、経済産業省が実施する健康経営度調査の回答結果を、①経営理念・方針、②組織・体制、③制度・施策実行、④評価・改善、⑤法令遵守・リスクマネジメントという5つのフレームワークから評価したうえで、財務面でのパフォーマンス等を勘案して選定されます。
選定企業は年々増えており、第3回目の「健康経営2017」では24業種24社が選定され、第4回目の「健康経営銘柄2018」では26業種26社が選定されています。
2.健康経営優良法人とホワイト500
2017年からスタートした健康経営優良法人認定制度においては、規模の大きい企業・法人を対象とした大規模法人部門と中小規模の企業・法人を対象とした中小規模法人部門の2部門で、それぞれ健康経営優良法人が日本健康会議によって認定されます。大規模法人部門の健康優良法人は「ホワイト500」とも呼ばれています。ホワイト500は、上場企業に限らず健康保険組合などの保険者と連携して優良な健康経営を実践している大規模法人を2020年までに500社選定する制度としてスタートしました。
どちらの部門になるかは、法人の業種ごとに申請時点における「常時使用する従業員」の数に基づいて決められます(以下「健康経営顕彰制度の申請区分」参照)。また、自社がどの業種に該当するのかは、総務省の日本標準産業分類で確認できます。
2019年の選定からは、健康経営という概念を中小企業へ普及させるため、中小企業基本法上の「中小企業者」に該当する比較的小規模な企業も中小規模法人部門への申請が検討できる仕組みになりました。
健康経営優良法人の認定基準
健康経営優良法人の認定基準は、以下に示すように①経営理念(経営者の自覚)、②組織体制、③制度・施策実行、④評価・改善、⑤法令遵守・リスクマネジメントの5つの大項目から成り、実施が必須であるものと何項目か以上実施していることが条件となっている項目があります。また、大規模法人部門と中小規模法人部門ではそれぞれ基準が異なりますが、いずれの認定基準でも、「定期健診を実施していること」「50人以上の事業場におけるストレスチェックを実施していること」が必須項目となっています。
健康経営優良法人2019(大規模法人部門の認定基準)
健康経営優良法人2019(中小規模法人部門)の認定基準
健康経営優良法人の認定過程
大規模法人部門と中小規模法人部門では、それぞれ所属している保険者によって認定過程が異なります。以下に申請スキームを示しますので、ご確認ください。
中小規模法人部門では、所属している保険者(全国健康保険協会、健康保険組合)が健康宣言の取り組みをしていない場合は申請できないので注意してください(保険者による健康宣言の取り組みの有無については、各企業が所属している保険者にお問い合わせください)。
今後のスケジュール
2019年の健康経営銘柄、健康経営優良法人のスケジュールを以下に示します。健康経営銘柄については今年の秋頃から健康経営度調査が開始され、健康経営優良法人についても同時期から申請受付が開始されます。
中小規模法人部門については、申請期間を拡大する方向で今後の検討を進めるとのことです。
★ポイント★
健康経営銘柄、ホワイト500などの健康経営優良法人に認定されると、企業の看板や名刺などに健康経営優良法人のロゴマークをつけることができます。健康経営を行っていることをアピールすることにより、企業のイメージ向上や人材採用力の向上につながり、他社との取引が有利になる等の効果が期待できます。
また、経済産業省では、「健康経営優良法人」と認定された企業に対し、金融機関による低金利融資や人材関連企業からの人材確保支援を受けられる制度を導入する等、インセンティブの充実を図っていく方針です。
皆さんの企業でも、健康経営優良法人の認定を目指してみませんか?
※「健康経営」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
初出:2018年10月01日 |