これからの職業家庭両立支援!「くるみん認定」で働きやすさアピール!認定取得のメリットや補助金制度を紹介

「くるみん認定」で働きやすさアピール!メリットや中小企業に補助金も。これからの職業家庭両立支援を考える

皆さんは自社の「働きやすさ」「働きやすい職場環境」を伝えたいとき、どのような方法でアピールしていますか?
 
今、子育てと仕事の両立ができる、有給休暇の取得がしやすいなど、働く環境の整備が求められています。

育児や介護をしていても働きやすい職場づくりと、労働時間や有給休暇の取得促進も含めた積極的な働き方改革を行っている企業・組織の証のひとつとして、「くるみん認定」の取得という方法があります。
 
さらに注目したいのは、令和4年度から新しく始まった助成金制度についてです。
育児休業取得に積極的な中小企業を対象に、最大50万円を助成するもので、この助成金の受給対象となるのが「子育てサポート企業」の証として国から「くるみん認定」を受けた企業です。そして認定条件には、男性の育児休業率取得が大きなカギとなります。
 
今回は、「くるみん認定」について、男性の育児休業取得との関係も含めて解説いたします。
 

・くるみん認定企業とは?
・くるみん認定制度の背景と働き方改革
・くるみん認定のメリット―中小企業に補助金最大50万円も
・男性の育児休業取得率アップが必須!くるみん認定
・これからの職業家庭両立支援

 
※くるみん申請方法・認定基準については厚生労働省のページをご案内しています。

 

くるみん認定企業とは?

くるみん認定とは?

「くるみん認定」とは、次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づいて、従業員の仕事と子育ての両立のために行動計画を策定・実施するなど、一定の要件を満たした企業を「子育てサポート企業」として認定する制度です。
 

くるみんマークとは? 

くるみん認定を受けると、「くるみんマーク」がもらえます。
このくるみんマークは、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けた証です。広告や求人、パンフレットなどに使用でき、仕事と家庭の両立支援を行なっている優良な企業・組織として対外的にアピールできるので、イメージアップや優秀な人材の採用・定着などにもつながります
 
また、くるみん認定企業のうち、より高い水準の要件を満たした企業は、優良な子育てサポート企業として「プラチナくるみんマーク」(プラチナくるみん認定)を受けることができます。
 

赤ちゃんが大事に包まれている「おくるみ」と、「職場ぐるみ・会社ぐるみで仕事と子育ての両立支援に取り組む」という意味がシンボルマークに込められています

※2022年より、新たな認定制度「トライくるみん」が創設されました。なお、「トライくるみん認定」は助成金の対象外ですのでご注意ください。

くるみん認定制度の背景と働き方改革

では、ここからは「くるみん認定」制度ができた背景と関連する法律について、見ていきます。
 

次世代育成支援対策推進法(次世代法)

厚生労働省は、次代の社会を担う子どもの健全な育成・環境整備するために次世代育成支援対策推進法(次世代法)を平成17年(2005年)に制定しました。
この法律に基づき、国、地方自治体、そして企業は、次世代育成支援のための行動計画を策定することが求められています。当初は平成17年から10年間までの施行という時限立法でしたが、令和7年3月31日(2025年)まで延長されました。
 
この法律で、企業は労働者の仕事と子育てに関する「一般事業主行動計画」(仕事と子育ての両立を図るための環境整備に向けた行動計画)を策定することになっており、常時雇用する労働者が101人以上の企業は、この行動計画を策定し、その旨と都道府県労働局に届け出るとともに、計画を厚生労働省が運営するウェブサイト「両立支援のひろば」や、自社のホームページ等に掲載して公表し、従業員に内容を周知することが義務付けられています(100人以下の企業は努力義務)。

そしてこの行動計画の目標を達成し、基準をクリアした会社は、くるみん認定を受けることができます
 

改正育児・介護休業法の施行

改正された育児・介護休業法(令和3年1月、令和4年4月以降順次施行)も重要です。
育児・介護休業法とは、育児や介護が必要な労働者が、仕事との両立ができるよう配慮し支援するための法律です。この改正により、子どもの看護休暇や介護休暇を時間単位で取得することが可能となりました。以前は、半日単位での取得、1日4時間以下の労働者は取得できないなどの制限がありましたが、現在はすべての労働者が対象となりました。さらに、 令和4年(2022年)4月からは、すべての企業において育児休業を取得しやすい雇用環境の整備や「育休制度の周知・意向確認」が義務となり、同年10月からは「産後パパ育休(出生時育児休業)」も導入され、給付金の支給が始まっています。
また、2023年4月からは、大企業(従業員1000人以上)は男性の育児休業取得率を毎年公表することが義務に。
 
少子高齢化への対策が課題となる中、法律が施行されたことにより職場環境にも変革が求められています。
 
以上のような背景から、くるみん認定の取得が注目を集めています。

ここ数年、認定を受ける企業は年々増えてきており、令和4年3月末時点で、くるみん認定は3,801社、プラチナくるみん認定は484社が取得しています。(※認定決定をした企業のうち、企業名を公表することに了解を得た企業数)

一定の要件を満たせば、規模・業種等にかかわらず申請することができます。
 

くるみん認定のメリット―中小企業に補助金最大50万円も

くるみん認定のメリット

くるみん、プラチナくるみんなどに認定されることで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?まとめてみました。
 

くるみん認定企業のメリット

くるみん認定企業のメリット

上記の通り、仕事と育児の両立支援の一環として、従業員の育児休業取得に積極的な中小企業に対し、政府は新たに最大50万円を助成する補助制度「くるみん助成金(中小企業子ども・子育て支援環境整備助成事業)」を創設。(令和3年10月から令和9年3月まで)
人材の不足などで余裕がなく、育休取得のための環境整備に課題を抱えている中小企業を支援し、男性の育児休業の取得を含む、仕事と家庭の両立支援を進める動きを後押しする方針です。事業に関する詳しい内容、要件については、厚生労働省のページでご確認ください。

また、一般行動計画の届け出義務のない企業(常時雇用する労働者が100人以下)、このうち、くるみん認定企業が一定の要件を満たした場合に、株式会社日本政策金融公庫(中小企業事業・国民生活事業)が実施する「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を利用する場合、基準利率から引き下げを受けることができる制度もありますので、詳しくは日本政策金融公庫のページでご確認ください。
 

「くるみん認定」には、男性の育児休業取得率アップが必須!

「くるみん認定」取得には男性従業員の育休取得が必須!

「くるみん認定」取得には男性従業員の育休取得が必須!

男性の育児休業との関係

ここで、特に注目していただきたいのが 男性の育児休業等取得率です。
そもそも男性の育休取得がゼロの企業は「くるみん」認定の対象外となっています。つまり、男性の育児休業取得を推進することで、仕事と家庭の両立支援を行なっているより優良な企業・組織として認められるのです。
 

〇女性の育児休業取得率:
女性の育児休業取得率の基準は【75%】以上で、こちらはくるみん・プラチナくるみんともに、同じ基準となっています。
 
〇男性の育児休業取得率: 
一方で、男性の育児休業取得率については数値・条件が異なります。

◆「くるみん認定」では…
 
① 計画期間における男性労働者の育児休業取得率が【10%】以上
または
 
② 計画期間における男性労働者の育児休業取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度の利用率が、合わせて【20%】以上、かつ育児休業等を取得した者が1人以上いること
 
◆「プラチナくるみん認定」では…
 
計画期間における男性労働者の育児休業取得率が【30%】以上
または
 
② 計画期間における男性労働者の育児休業取得率および企業独自の育児を目的とした休暇制度の利用率が、合わせて【50%】以上、かつ育児休業等を取得した者が1人以上いること

と、いずれも①または②のどちらかの基準を満たしていることが条件となります。

※令和4年度から、くるみん認定では、これらの育児休業取得率の割合を「厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」で公表していること」が新たに条件に加わりましたのでご注意ください。(プラチナくるみん取得企業は別途、毎年公表が必要)

 

ここでは「男性の育休取得率」がいかにカギとなっているか、のご紹介でした。
 

■認定基準の引き上げ、新制度の創設で職場環境整備に積極的な企業を支援

このほか、令和4年4月以降は、例えば下記のような改正が行われています。

・プラチナくるみん認定基準のひとつ、女性の継続就業に関する基準の改正:
「子を出産した女性労働者のうち、子の1歳誕生日まで継続して在職(育児休業等を利用している者を含む)している者の割合が90%以上であること」、または、「子を出産した女性労働者および子を出産する予定であったが退職した女性労働者の合計数のうち、子の1歳の誕生日まで継続して在職している者の割合が【70%】以上であること」のいずれかを満たすこと
 
・新たに、不妊治療と仕事の両立に関する認定制度「プラス」を創設
通常のくるみん、プラチナくるみん、トライくるみん(新設)に加えて、不妊治療と仕事を両立しやすい職場環境整備に取り組む企業を認定する制度を新設。「くるみんプラスマーク」「プラチナくるみんプラスマーク」「トライくるみんプラスマーク」をそれぞれ取得できるようになりました。

くるみん認定「プラス」マーク

「くるみん認定」プラスマーク

また、労働者数300人以下の一般事業主については、特例認定の基準も設けられているので、詳しくは厚生労働省の資料等でご確認ください。
 
ちなみに、くるみん認定には、法定時間外・休日労働の時間数についても、フルタイム労働者の場合は各月平均45時間未満、全労働者について月平均の法定時間外労働60時間以上の時間外労働をする者がいないことなどを基準に定めており、認定されることによって、育児休業を取得するか否かに関わらず、すべての従業員にとって働きやすい環境を整備している、働き方改革を進めているという証にもなるのです。
 

 

 

これからの“仕事と家庭の両立支援”

今後は、さらに仕事と家庭の両立支援が求められていきます。
 
くるみん認定を受け、くるみんマークやプラチナくるみんマークを取得することで、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けた証を得られるだけでなく、自社の「働きやすさ」を証明することができるひとつの指標ともなります。

「改正育児・介護休業法」の施行により、従業員への育児休業取得の働きかけが義務化され、男性の育児休業の取得の向上への取り組みに注目が集まっているとはいえ、実際には制度整備にかかる資金面の課題もあり、現実的にはなかなか難しいと感じている中小企業の皆さまも多いことと思います。
ですが、すでにお伝えしたとおり、育児休業取得に積極的な中小企業に対しては、最大50万円を助成する補助制度「くるみん助成金(中小企業子ども・子育て支援環境整備助成事業)」 もスタートしていますので、助成金の活用も検討してみるとよいのではないでしょうか。(本助成金に関する事業は、令和3年10月から令和9年3月までと発表されています。)
 
ぜひこの機会に「くるみん認定」取得を目指されてはいかがでしょうか?
 

 

 

 

〔 参考文献・関連リンク 〕

 

初出:2021年3月12日 / 編集:2023年3月23日

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