2024年4月、「障害者の法定雇用率」が変わりました:民間企業対象の助成金・認定制度とは?

障害者雇用の助成金・認定制度、ご存じですか?改正「障害者雇用促進法」施行、民間企業対象の支援強化へ

2024(令和6)年4月1日より、民間企業における障害者の法定雇用率は「2.5%」となりました。具体的な人数で表すと「40人(常用雇用労働者)に対して、障害者1人以上を雇用」する義務があります。
この法定雇用率は、さらに引き上げられる予定で、2026(令和8)年には2.7%まで引き上げが決まっていますので、企業は先を見据えた対策が必要となります。
 
法定雇用率は、障害者雇用促進法に基づき、少なくとも5年毎にその割合の推移を勘案して設定することとされています。厚生労働省発表の「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業で雇用されている障害者の数は64万2,178人で、前年より4.6%増加(対前年比28,220人増加)し、過去最高を更新しました。実雇用率は、2.33%(前年は2.25%)、50.1%(同48.3%)の企業が法定雇用率を達成しています。
 
一方で、令和5年の法定雇用率未達成企業は53,963社。そのうち不足数が0.5人または1人である企業(1人不足企業)が、66.7%と過半数を占めています。
つまり、あと0.5人~1人の障害者を雇用できれば、法定雇用率を達成できる企業は少なくない、ということがわかります。
 
実際、これまで短い時間で働く障害者の雇用が実雇用率に算定されなかったり、算定の基準が設けられていたりなどにより、働きたい・働ける方がいるにもかかわらず、企業のメリットとならないために雇用に結びつかなかったケースも多くあるのではないでしょうか。
 
そこで、政府は、特に短い労働時間(週10~20時間)で働く障害者の方の実雇用率への算定や、雇用促進のために活用できる助成金の創設を新たに行う方針を示してきました。
そしてついに令和6年度(2024年4月1日)からは、その「特定短時間労働者(週所定労働時間が10時間以上20時間未満)」の雇用率への算定が可能になりました。また、新設される助成金も複数発表されています。

今後は制度を効果的に活用していくことで、障害者の雇用を確保し、法定雇用率を達成できる可能性があります。本記事では、民間企業の人事・労務担当者の方が知っておくとよい内容を改めて解説します。
 

※この記事は、2024年4月1日現在の情報を追記しています。

 

2024年4月1日施行!障害者雇用促進法の一部改正で何が変わった?

まず、令和6年度(2024年4月1日)より新たに変更・施行された内容は以下のとおりです。

1.障害者の法定雇用率の引上げ
 障害者の法定雇用率が、2.3%から2.5%になります。

2.特定短時間労働者の実雇用率への算定
 週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者及び精神障害者について、雇用率上、1人をもって0.5カウントできるようになります。

3.特例給付金の廃止
 上記2の開始に伴い、週所定労働時間10時間以上20時間未満の障害者を対象とした特例給付金が廃止されます。(なお、令和6年3月31日までに雇入れられた週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度以外の身体障害者及び知的障害者については、1年間の経過措置があります。)
 
4.一定数を超えて障害者を雇用する場合、超過人数分の調整金及び報奨金の支給額を調整
 調整金について、支給対象人数が年120人を超える場合には、当該超過人数分への支給額が1人当たり23,000円(本来の額から6,000円を調整)となります。
 報奨金について、支給対象人数が年420人を超える場合には、当該超過人数分への支給額が1人当たり16,000円(本来の額から5,000円を調整)となります。

(上記は、令和6年4月1日以降の雇用期間について適用されます。)

引用:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金制度改正の概要より

 
上記2.および3.のとおり、「特例給付金」については、今後は特別な給付金を支給せずとも「特定短時間労働者(週所定労働時間が10時間以上20時間未満)」も0.5人として雇用率にカウントすることが可能になったことから、廃止されます。一方で、新たに助成金の新設・拡充が発表されていますので、確認していきましょう。
 

事業主が受けられる「障害者雇用納付金関係助成金」とは?

障害者雇用納付金関係助成金は、事業主等が障害者の雇入れや雇用の継続を行うために特別な措置を行う場合に、助成金を支給することにより、事業主の一時的な経済的負担を軽減し、障害者の雇用促進・雇用継続を図ることを目的として支給されているものです。

現在、既存の助成金の拡充に加えて、新たに事業主に対する給付を新設することで障害者雇用の支援の強化を目指しています。
 
令和6年4月1日からの主な変更点の概要は以下のとおりです。

◆特定短時間労働者の追加(新規)
 助成金に共通する事項として対象となる「労働者」に週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者が「特定短時間労働者」として加えられます。※対象とならない助成金もあります。

◆中高年齢等障害者(35歳以上の方)の雇用継続を図る措置への助成を新設(整理・拡充)
 障害者作業施設設置等助成金・障害者介助等助成金の一部・職場適応援助者助成金について、加齢による変化が生じることで、当該障害に起因する就労困難性の増加が認められる場合で、継続雇用のために当該障害者の障害特性から生じる業務遂行上の課題を克服するために必要な支援措置と認められる場合に支給します。支給対象となるのは、35歳以上で雇用後6か月を超える期間が経過している障害者ですが、対象となる障害者、助成率、支給限度額、支給期間等については各助成金によって異なります。

◆障害者雇用相談援助助成金の創設(新規)
 一定の要件を満たす事業者として労働局から認定を受けた事業者(認定事業者)が労働局等による雇用指導と一体となって障害者の雇入れや雇用管理に関する相談援助事業(障害者雇用相談援助事業)を利用事業主に実施した場合に支給します。※助成金は認定事業者に支給されます。

◆障害者介助等助成金等において次の措置への助成を新設(新規)
●障害者を雇用したことがない事業主等が職場実習の実習生を受け入れた場合等【障害者職場実習等支援事業】
●障害者の雇用管理のために必要な専門職(医師または職業生活相談支援専門員)の配置または委嘱
 ・【健康相談医の委嘱助成金】
 ・【職業生活相談支援専門員の配置又は委嘱助成金】
●障害者の職業能力の開発および向上のために必要な業務を担当する方(職業能力開発向上支援専門員)の配置または委嘱【職業能力開発向上支援専門員の配置又は委嘱助成金】
●障害者の介助の業務を行う方の資質の向上のための措置【介助者等資質向上措置に係る助成金】
●中途障害者等の職場復帰後の職務転換後の業務に必要な知識・技能を習得させるための研修の実施【中途障害者等技能習得支援助成金】

(※詳しい「対象障害者」「支給限度額」「支給期間」等は、厚生労働省、または、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のリーフレットでご確認ください。)

引用:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「事業主の皆さまへ 障害者雇用納付金関係助成金の主な変更点についてより

優良事業主としての認定制度について

また、優良事業主としての認定制度もあります。
正式には「障害者雇用に関する優良な事業主の認定制度(もにす認定制度)」とされ、条件を満たした常用労働者300人以下の中小企業は、申請によって優良な事業主として認定されます。障害者の雇用の促進及び雇用の安定に関する取組の実施状況などが優良な中小事業主を厚生労働大臣が認定する制度です。「もにす」という愛称は、共に進む(ともにすすむ)という言葉と、企業と障害者が共に明るい未来や社会に進んでいくことを期待して名付けられたそうです。

 

優良事業主としての認定制度の概要とメリット

障害者雇用に関する優良な中小企業認定制度はポイント制で行われます。
評価項目は以下の項目に対して評価点を加算し、大項目ごとに定められた合格最低点と、全部を合計した最低合格点を超えた企業が優良事業主として認定されます。
 

障害者雇用の「取組(アウトプット)」
体制づくり1. 組織面 2. 人材面
仕事づくり3. 事業創出 4. 職務選定・創出
5. 障害者就労施設等への発注
環境づくり6. 職務環境 7. 募集・採用 8. 働き方
9. キャリア形成 10. その他の雇用管理
障害者雇用の「成果(アウトカム)」
数的側面11. 雇用状況 12. 定着状況
質的側面13. 満足度、ワーク・エンゲージメント 14. キャリア形成
障害者雇用の「情報開示(ディスクロージャー)」
取組(アウトプット)15. 体制・仕事・環境づくり
成果(アウトカム)16. 数的側面 17. 質的側面

 

優良事業主と認定された中小企業には以下のようなメリットがあります。
 

  • 自社の商品や広告等で認定マークが使用できる
  • 認定マークによって働き方改革などの広報効果が期待できる
  • 障害の有無に関係なく、幅広い人材の採用・確保の円滑化につながる

など、様々な方面で自社のアピールが可能となります。
 

2024年最新情報!新たな事業主向けの支援まとめ

2022年12月の臨時国会で成立した障害者雇用促進法の改正に基づき、令和6年度より下記の変更が施行されています。

◆助成金の新設・拡充:
中高年齢等障害者(35歳以上の方)の雇用継続を図る措置への助成について整理・拡充
障害者雇用相談援助助成金の創設
障害者介助等助成金等において次の措置への助成を新設
助成金対象の共通事項として、特定短時間労働者も加わる
 
◆障害者の算定方法の変更:
・民間企業の法定雇用率は「2.5%」になり、40人(常用雇用労働者)に対して、障害者1人以上を雇用することが義務に
特定短時間労働者の実雇用率への算定
精神障害者の算定特例の延長(令和5年4月~)

 
特に、中小企業や除外率設定業種に対しては、助成金の上乗せ等を行うことや既存助成金の拡充により、雇用率の引上げや除外率の引下げの影響を受ける事業主への集中的な支援を行うことを通じて雇入れや定着支援の充実等を目指しているとのことです。

また、このほかにも、

・障害者の雇用に関するノウハウが不足している障害者雇用ゼロ企業等に対して、ハローワークが地域障害者職業センター等の関係機関と連携し、採用の準備段階から採用後の職場定着まで一貫したチーム支援等を実施するなど、障害者の雇入れ支援等の一層の強化を図る
・令和5年度予算案に就職支援コーディネーター(ハローワークにおいて企業に対するチーム支援に取り組む者)の増員、障害者の雇入れや定着支援を行う障害者就業・生活支援センターの人材確保や支援力の強化を図るため、就業支援担当者の処遇の改善を盛り込む
 
など、障害者の法定雇用率の達成に向けて取り組む企業の皆さまのサポートとなるような施策も実施されているようですので、併せて最新情報に注目しておくとよいでしょう。


障害者雇用率を満たしていない企業がまだまだ少なくない中、先駆けて障害者の雇用促進を行う中小企業にはさまざまなメリットが享受されるようになります。
 
会社の生産性向上は「どんな人でも働ける職場」から。この法案改正を機に、新たな「人材の獲得」が進み、誰もが働きやすい職場づくりへの第一歩となることを願います。
 

 

 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2019年09月13日 / 編集:2024年04月03日

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