新型コロナウイルス感染予防で、企業が取るべき「対策」と「指針」

新型コロナウイルス感染予防で、企業が取るべき「対策」と「指針」は?

 

緊急事態宣言再発令に伴う内容は上記「関連記事」に追記しています

 

2020年2月現在、日本でも新型コロナウイルスの感染・発症報告が増えつつあります。水際対策や医療・看護関係者による対応も続けられていますが、大型イベントの中止や自粛が次々と発表されるなど、間接的・経済的なダメージは徐々に深刻になりつつあります。

企業として気になるのは、「従業員のコロナウイルス対策」でしょう。
従業員を感染から守るには?
発症した従業員への対応は?

厚労省の発表した指針及びガイドラインをご紹介します。
 

従業員が感染?新型コロナウイルスを疑う目安は「風邪症状 」

新型コロナウイルスの脅威は、肺炎などの重篤な症状を急速に引き起こし死に至るリスクがある点です。

初期症状は喉の痛み、鼻水、 咳、痰、息苦しさを感じるなど従来の風邪症状によく似ており、感染かどうかはきちんとした検査を受けなければわかりません。
また新型コロナウイルス罹患と診断された中で重症化する人の割合は約1.6%。
特に65歳以上の方に多く、発症後5~7日の間で急速に体調・症状の悪化、肺炎、低酸素症状などを引き起こします。

若年層にあたる方は重症化する割合は低く、感染後も無症状・軽症で済むことが多いようです。
しかし嗅覚や味覚に異常を感じるなど、後遺症に苦しむケースも見られています。

厚生労働省は
・症状の出始めがわかるように普段から体温測定を行う
・風邪のような症状が見られた時は、 学校や会社を休み、外出を控える。
・ 医療機関を受診する際にはマスクの着用、手洗いや咳エチケットを徹底する
 また複数の医療機関への受診を控え、保健所・かかりつけ医の指示に従う

事を心がけるよう発表しています。

またその他にも
・息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状がある
・特に重篤化リスクの高い高齢者や持病のある方、妊娠されている方
 発熱や咳など比較的軽い風邪の症状が続いている
ような場合、保健所・医療機関・帰国者・接触者相談センターなどへ相談をするように呼び掛けております。
 

企業は「体調の悪い従業員は休ませる」対応を

従業員から「熱や咳がある、新型コロナかもしれない」と相談を受けた場合、企業はどう対応すればいいのでしょうか。

まず行わなければならないのは「伝染させない」ことです。

会社は様々な環境・年代の人が一所に集まる「感染場所」です。外回りをする営業職などが感染すれば取引のある企業へ感染を広げてしまうでしょう。
自社が感染源になる・他社から感染してしまうリスクを最小限に抑えるためにも「体調が悪いと言いだしやすい」・「体調が悪いとき、実際に休みやすい」環境を設けるよう努めましょう。

実際に就業中に体調不良を訴えてくれた際は感染防止のマスクなどを着用させ、すぐに帰宅させる・自宅療養するように指示しましょう。

また、 資料やきちんとした説明を行い、 コロナに対する正しい情報と「相談センター」の連絡先などを伝えることも重要です。
不安によって無暗な受診を行ったり安易な外出や体調不良を我慢しての就労をしないよう理解を求めることは、二次感染・重篤化防止につながります。
 

自発的に「熱があるから休む」場合は病欠
「企業判断で休ませる」場合は手当を

発熱などのコロナ様症状がある従業員については、「会社を休んで休養する」よう政府や都道府県の保健機関が声明と呼びかけを行っています。

新型コロナウイルスかどうか分からない労働者が自主的に休む届出を行った場合、厚労省の指針では「通常の病欠と同様に取り扱う」旨が発表されています。この場合は既にある「病気休暇制度」などの社内規定に沿った取り扱いを適用しましょう。

新型コロナウイルスに関連して組織側が配慮として労働者に休業させる際には、 「欠勤中の賃金については企業・組織ごとに内情や事案の詳細を見て判断すべき」とされています。

労働基準法第26条では、「使用者の責に帰すべき事由」による休業の場合、期間中の休業手当(平均賃金の6割以上)を支払わなければならないとされています。

この「 使用者の責に帰すべき事由 」とは、
①その原因が事業の外部より発生した事故であること
②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること
の2つの要件を満たす「不可抗力であると判断されるもの」以外の事由を示します。

例えば、今回のウイルス感染を避けるために休業を選択する場合、「自宅勤務などの方法が可能か十分検討したか」など「使用者として行うべき最善の努力」を尽くしていないと認められません。

もし、従業員が新型コロナウイルスに感染していた場合、対象の従業員は都道府県知事の指示のもと就業制限を受けて休業することになります。
一般的にこの就業制限は「使用者の責に帰すべき事由」に該当しないと考え、休業手当を支払う必要はないとみなされます。

なお、従業員が被用者保険に加入していれば、
・病気療養のため働けなくなった日から起算して3日を経過した日から
直近12カ月の平均の標準報酬日額の3分の2について、
傷病手当金により補償されます。

具体的な申請手続き等の詳細については、加入している保険の制度をご確認ください。
 

 

病欠・就業停止に年休利用を奨励するのはNG
有給休暇は従業員の申告に基づいて

年次有給休暇は、原則「従業員が請求した時季」について与えるものです。
使用者が「休むから」と、従業員の年休を調整・一方的に取得したとみなすことはできません。

病気休暇などの制度によって対応するなど、事業場の就業規則などの規定に基づいて適切な対応と補償を行いましょう。

また、職種によっては、リモートワークや時差通勤を検討することも必要かもしれません。
 


新型コロナウイルスの致死率は2021年1月現在全世界的に見て2~3%、日本国内で1%程度と1900年代初頭に大流行したスペイン風邪レベルと見込まれています。
また2020年12月には、新型コロナ感染症の原因となるウイルスにより感染力の強い変異種が発生したとWHOに報告されました。

新型コロナウイルスに限らず、感染症はウイルスに適した消毒・適切な衛生管理・感染する、させるリスクのある行動の制限によって予防と拡散の抑止が可能です。
いたずらに不安を感じる前に企業・組織として、正しい情報に基づいて従業員の人命・体調を優先して守ることに注力すべき時期だと考えられます。

そしてまずはご自身が罹患しないために、手洗い・うがい・湿度の管理の徹底を。
  

初出:2020年02月27日

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