良い人材を確保することは企業の大きな課題の1つです。
近年では企業の人材不足に関する悩みはより深刻で、人手不足による倒産も増加傾向にあります。そのため企業にとって、
・離職率を下げること
・優秀な人材を逃さないこと
といった人材確保に関する悩みは早急に解決したい問題です。
人材確保のために注目したい概念が、企業と人材との関係を測る「従業員満足度」と「従業員エンゲイジメント」です。
この記事では、
- 従業員満足度と従業員エンゲージメントの違い
- どんなことをどんな方法で調査するのか
- 調査後どういった活用ができるのか
を解説します。
従業員満足度と従業員エンゲージメントの違い
「従業員満足度」と「従業員エンゲージメント」の違いについて掘り下げていきましょう。
従業員満足度
従業員満足度(Employee Satisfaction)とは
- 仕事内容
- 職場やその周囲の環境
- 職場の人間関係
- 福利厚生
といった点で従業員が企業に満足しているかという指標です。
この指標は、ハーズバーグの動機づけ・衛生要因理論(二要因理論)を基に考案され、様々な国で取り入れられています。
☆ハーズバーグの動機づけ・衛生要因理論とは?
ハーズバーグの動機づけ・衛生理論は、「仕事の満足の理由である要因と不満の原因である要因は異なる」とする理論です。
アブラハム・マズローの欲求段階説と合わせて、個人のモチベーションや動機付けのメカニズムを説明する理論として注目されています。
この理論によれば、仕事の満足度は 動機づけ要因 (仕事の「満足」感に関わる要因)と衛生要因(仕事を「不満足」として感じる原因)の2種類によって構成されます。
動機づけ要因は仕事への前向きな姿勢に関すること、衛生要因は働く環境に関することです。衛生要因の面で満足している=動機づけ要因の面でも満足ではなく、衛生要因で不満足=動機づけ要因でも不満足とは限りません。
動機づけ要因と衛生要因はそれぞれ独立しており、それぞれのプラス・マイナス面が満足度に影響する、というイメージです。
動機づけ要因には以下のようなものが当てはまります。
- 仕事のやりがい
- 達成感
- 周囲からの承認
- 昇進
- 責任
対して衛生要因は以下のようなものが挙げられます。
- 会社の方針
- 上司の監督能力
- 給与
- 人間関係
- 労働条件・作業条件
では、この2つの要因のどちらを満たせば満足度は向上するのでしょう。
企業側で改善活動がしやすいのは衛生要因ですが、衛生要因は「満たされている場合は不満にはならないけれども、満足度が高まるわけではない」といわれています。衛生要因を整えるだけでは、「不満のない職場」にはなるけれど、従業員「満足」度を高めるという点では不十分です。
反対に、動機付け要因は個人の捕らえ方やモチベーションに関わるので対策をとることが難しいものですが、これらが欠けていても「職場に対する不満足感 」が高まるものではないとされています。
従業員満足度を向上させるには「満足と感じる要因を増やし」「不満足に感じる要因を減らす」、2方向の対策が必要になるのです。
また、動機づけ要因・衛生要因となっている項目は、文化や時代によって変化もあります。例えば、日本人は仕事での人間関係に気を遣う人が多いため、人間関係が快適であるかという点は動機づけ要因の側面も強いと考えることもできるでしょう。
働いている従業員が「何を不満に感じているのか」を調査する意味でも、従業員満足度は有意義です。
従業員エンゲージメント
比較的新しい概念の従業員エンゲージメント(Employee Engagement)は従業員が会社や他の従業員に対し信頼や共感をしており、仕事へ前向きな態度があるかという指標です。会社への愛着とも捉えられます。
企業と従業員との関係性や企業の心理的価値がどれくらいかを調査し、モチベーションやチャレンジ精神の向上のための改善に用います。
従業員満足度と従業員エンゲージメントの違いとして、
・従業員満足度は従業員が企業に対して納得して働けているか・働きやすい環境か
・従業員エンゲージメントは従業員が自発的に企業に共感し共に結束しているか
を 調査する 、というイメージが近いです。
従業員満足度と従業員エンゲージメントが必要な理由
従業員満足度や従業員エンゲージメントは以下に関係していると考えられます。
- 離職率
- ハイレベルな人材を自社から逃さないこと
- 顧客満足度
- 労働生産性
不満が募り、愛着の持てない会社では良い人材が他社から引き抜かれたり、コンプライアンスの順守や情報の保護など会社の危機を招いてしまうかもしれません。
会社への共感度が高く、満足している人は熱心に丁寧に働き、顧客満足度にも影響することは想像できます。気持ちが安定して働けていると生産性の向上にもつながりますよね。
従業員エンゲージメントが高いと社員のモチベーションも高く、売り上げにも影響するという研究も発表されています。
従業員満足度・従業員エンゲージメントの調査
授業員満足度・従業員エンゲージメントを高めるにはまず調査が必要です。
調査の目的・調査内容・調査方法・調査結果の活用方法について見ていきます。
調査目的
従業員満足度・従業員エンゲージメントを高めることで、企業に良い影響をもたらすことが最終目的となります。
従業員満足度や従業員エンゲージメントの現状を知り、従業員の声を反映させ、従業員が気持ちよく働ける環境を考察していくためにも【現状の把握】から始めていきましょう。
調査内容
従業員満足度と従業員エンゲージメントでは、重視する調査内容は少し異なります。
従業員満足度は従業員から見た会社に対する満足度を評価するものです。
具体的には以下の点で満足しているかを調査します。
- 会社の方針や経営層に対する共感
- 業務内容へのモチベーション
- 上司の指導の的確さ
- 職場の人間関係
- 職場環境や福利厚生の充実
従業員エンゲージメントは、会社と従業員の間の相互的な感情を前提としています。以下の質問から従業員が自発的かつ前向きに働ける環境・状況であるかということを検討します。
- 従業員は会社で自分が尊重されていると感じているか
- 一人ひとりの能力が発揮できる環境が整っているか
- 努力の結果が見えるなどモチベーション向上につながる要因があるか
- 会社の方向性は従業員にとっても強い関心を持てるものであるか
- 今の会社で勤務していることに喜びを感じているか
調査目的や調査票のタイプなども含め、自社に合いそうな調査を選びましょう。
調査方法:多くはアンケート方式
調査方法は従業員満足度でも従業員エンゲージメントでもアンケートが一般的です。
安心して受検できるように匿名での実施がおすすめですが、場合によってはインタビューや意見交換会なども併せて取り入れるとより改善に効果的な結果が得られるかもしれませんね。
調査結果の活用方法:結果から分析し改善策を検討する
調査後、分析と検討を行ないます。
分析は質問項目別や部署別に行うといった方法があります。
同業種や企業規模が同じ他企業と比較してみる、環境や部署だけでなく男女・年代など様々な切り口で捕らえてみると、自社の抱えているマイナス面が把握しやすくなります。
分析結果から実態を把握し、洗い出した問題点に対して今後の改善策・対策を話し合いましょう。
“意味のある” 調査にするために
☆分析だけで終わらせないようにしましょう。
実施しただけ、分析しただけでは改善にはいたりません。
改善策を実施し、その結果をどう評価するか、改善したかった部分は改善されているか、次の改善点はどこか……PDCAサイクルを組み、結果の振り返りと実践を繰り返しましょう。
特にやりがいや職場の環境、社内の人間関係は一朝一夕で変えられるものではありません。長いスパンで取り組むべき問題です。
定期的に調査を行うことによって、改善されている部分を検証しましょう。。
☆「得られた結果の原因がどこにあるのか」を正しく捕らえる
調査結果のケースによっては、従業員自身の考え方を変えてもらう必要があったり、従業員と管理職や経営層では考えている視点が異なるために不満・不平感が生じていることもあります。
そのためにも結果のフィードバックを行い、互いの環境や感覚のズレに対する理解を得ることで不満が解消することも考えられます。
まずは実態の把握から
離職率を下げ、優秀な人材の流出を防ぐためには従業員が生き生きと働ける職場であることが重要です。そのために従業員満足度・従業員エンゲージメント調査は大きな役割を果たします。
職場改善に取り組むためにまずは従業員満足度調査で実相を知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
AltPaperストレスチェックサービスでも、従業員満足度調査キットをご用意しています
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初出:2019年08月13日 / 編集:2023年05月17日 |