男性版産休制度成立!「育児・介護休業法」の改訂点を解説:男性の育休取得を考える

“男性版産休制度”成立!改正「育児・介護休業法」と、2022年4月から順次施行される改正点を解説

男女を問わず、従業員へ産休・育児休業取得を促す義務付け等を盛り込んだ改正「育児・介護休業法」の法案審議が今春からの通常国会で進められてきましたが、6月3日の衆議院本会議で可決・成立しました。

政府は令和7(2025)年までに「男性の育休取得率30%」を目標に掲げてきましたが、令和元(2019)年度の男性育児休業取得率はわずか7.48%。取得したとしても8割は休業期間1カ月未満にとどまっているのが現状です。
 

育児休業取得率(男女別)
育児休業取得率(男女別)

※厚生労働省「雇用均等基本調査」をもとに作成

 

「休みを取得したい期間に大切な商談や会議がある…」
「休業中に業務が途切れてしまうことが不安…」
「そもそも休みを取得しづらい雰囲気がある…」

新しい法律では、これまで取得の障壁となっていたこれらの課題を少しでも取り除き、柔軟に休みを取ることができる仕組みづくりと職場環境を整えることで、男女ともに育児休業の取得を促進していくことを目指しています。

今回の改正内容は、2022年4月から順次施行される予定ですが、育児休業を取得しやすい職場環境の整備などは事業者側の義務となること、実際に取り組みを行い実績を出した事業者に支給する助成金も発表されています。「家庭と仕事の両立支援」強化が重要視されつつある昨今、企業としては同改正法の成立背景などを把握しておく必要があります。
 

改正育児・介護休業法で変わる、5つのポイント

では、今回の改正で具体的には何がどう変わるのか、5つのポイントをまとめてみました。
 

改正育児介護休業法5つのポイント

※「2022年秋以降」とあるのは、公布年月日の2021年6月9日から「1年6か月以内の政令で定める日」に準じます。
 今後の政令を通じて施行日が確定となります。

 

◆子どもが生まれることが分かったら、制度の周知と意思確認

妊娠や出産を申し出た従業員(男女問わず)に対して、育児休業が取得できる旨と、その内容の周知や取得の意思を確認することが企業に義務付けられます(2022年4月~)。

休みを取得しやすい雇用環境の整備や研修・相談窓口等の設置、従業員が希望する期間を取得できるよう配慮することなどが事業主側の義務となります。
 

◆育児休業を取得できる期間はいつ?

生後8週間以内に取得できる「出生時育休」制度が新設されました(2022年秋以降)

いわゆる「男性版産休」とも呼ばれているように、この法律の対象は男性です。

最大4週間まで、子どもが生まれた直後の期間に育休を取ることができます。2週間前までに申請すれば取得ができ、2回に分けて取ることも可能です。
出産後8週間は母体の回復のためにとても大切な時期と言われているため、この「出生時育休」は、配偶者の協力が不可欠な時期に柔軟に休みを取得できる制度なのです。

さらに、労使の合意があれば休業中でも働くことが可能です。重要な会議やその人にしか対応できない業務がある場合も柔軟に利用できるようになります。

また、このほか、従来の育児休業制度では原則分割取得することはできませんでしたが、2022年秋以降男女を問わず分割して2回まで取得ができるようになります。

これにより、「出生時育休」と併用することで、男性は子どもが1歳になるまでに合計4回の育休取得が可能になります。
 

育休夫婦

 

◆有期雇用労働者も要件緩和し対象へ

これまで、育児休業制度は「引き続き雇用された期間が1年以上」でなければパートなどの非正規・有期雇用の労働者は対象になりませんでしたが、2022年4月からその要件が廃止されることとなりました。
(ただし、「1歳6か月までの間に契約満了することが明らかでないこと」の要件は存置、および労使協定で対象外とされた場合は除外)
 

◆育児休業取得状況の公表、大企業は義務に

大企業(従業員1000人を超える)には、男性の育児休業取得率を毎年公表することが義務付けられます(2023年4月~)。
 

以上が今回改正された5つのポイントです。

実は、これまでも「パパ休暇」という制度が特例措置として存在していました。今回新設された「出生時育児休業制度」はそれに置き換わり、これまではできなかった分割取得を可能にしたもの。
 
また、男女ともに取得できる権利がある通常の育児休業制度も、分割や雇用形態による要件の緩和により取得しやすくなっただけでなく、取得開始日の条件も柔軟化されました。夫婦交代で取得するなど、タイミングやそれぞれの家庭の状況に合わせて上手く活用することが期待できそうです。

加えて、雇用保険法上の育児休業給付も分割取得に対応できるよう改正が行われています。

詳しくは厚生労働省の情報をご参照ください。
 

 

男性の育児休業率がカギに!
制度周知や取得でもらえる助成金も。
今後の動向に注目

今回の法律により、男性の育児休業取得率を高めるための取り組みは、企業にとっても職場の雰囲気づくりや業務の見直しを考えるチャンスです。
 
実際に、この男性の育児休業取得率は、今後さまざまな場面でカギとなってきます。例えば、ー定の要件を満たした企業に対して「子育てサポート企業」の証として国から与えられる「くるみん認定」。さらに政府はこのくるみん認定を受けた企業を対象に、新しい補助金制度創設するとしていますので、今後その動向に注視していく必要があります。
 
雇用環境の整備が求められるようになるとお伝えしましたが、今後は育児休業の内容の周知や取得意思の確認が事業主に義務付けられるだけでなく、当記事の冒頭にも書いた「2025年までに男性の取得率30%」達成に向けて、 政府は「男性従業員が(名目としては男女を問わず)子育てのために休みを取りやすい職場風土づくり」に力を入れていくものと思われます
 

 

初出:2021年07月06日 / 編集:2021年07月09日

関連記事

  1. メンタルの不調を防げ!ストレスチェックはメンタルヘルスの“リトマス紙”…

  2. 新型コロナ感染防止と第二波対策に向けた「Withコロナ時代」の新生活様…

  3. 医師による健康診断の結果は事業者に提供しなければいけないの?

  4. 3種類の障害者手帳の違い!障害者の雇用義務とプライバシーへの配慮につい…

  5. 従業員の健康維持・増進と企業の成長につながる「健康経営」とは?

  6. 中小企業必須!10名以上の従業員がいる時の「義務」&50名未満の時にや…

  7. 「EAP(従業員支援プログラム)」とは?:AltPaperEAP支援サ…

  8. 【9月6日(水)16時開始】ウェルネット山根裕基氏登壇セミナー「202…

Pick Up 注目記事 メンタルヘルスケアコラム
  1. 改めてチェック!ストレスチェック制度:産業医=実施者ではない?「ストレスチェック実施者のリスク」を考える
  2. 「健康経営優良法人」取得は意外と簡単?―「健康経営銘柄」「ホワイト500」は?
  3. ストレスチェック業種平均値レポート2023:総合健康リスクは改善の兆しも、高ストレス者割合は増加傾向―「職場の支援」強化と「負担感」の軽減がカギ?
  4. 気になる他社の実施状況は?『ストレスチェックのリアル』をデータから解説
  5. 2019年実施の「ストレスチェック業界平均値」から考える“これからの従業員ケア”:AltPaperストレスチェックサービス業界平均値レポート2019
  1. 「共感疲労」とは?つらいニュースから心を守る対処法:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム
  2. 出勤しているのにコストを損失している「プレゼンティーズム」とは:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム
  3. 人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム:まずは知ってみよう、職場で見られる「メンタルの不調」の種類
  4. 「適応障害」と「うつ病」は違うの?その違いや、企業の対策を解説:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム
  5. 新型コロナ禍で「自殺者」が増えた?背景にある「つらさ」と企業ができる自殺予防策とは:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム

最近の投稿記事