出勤しているのにコストを損失している「プレゼンティーズム」とは:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム

出勤しているのにコストを損失している?!「プレゼンティーズム」とは

皆さんは、「体調が良くないな…」と感じながらも、「仕事を休むわけにはいかない!」と無理して出勤したことはありませんか?

しかし、いざ仕事を始めてみると、なかなか集中できない、身体がだるくて仕事が手につかない、頭がぼーっとして周囲の人の話が耳に入らない…など、仕事のパフォーマンスが上がらないことが多いのではないでしょうか?
このように、心身の健康状態が優れないことが影響し、出勤したものの最善のパフォーマンスができない状態のことを「プレゼンティーズム(presenteeism)」といいます。
近年、欧米を中心として、プレゼンティーズムが企業の生産力に影響を及ぼし、経営上のコスト損失につながるということが注目を集めています。

今回は、健康経営推進の一環として日本でも注目され始めた「プレゼンティーズム」についてご紹介します。
 

◎プレゼンティーズムとは

プレゼンティーズムとは、「欠勤には至っておらず勤怠管理上は表に出てこないが、健康問題が理由で生産性が低下している状態」を意味し、WHO(世界保健機関)によって提唱されている概念です。

また、WHOが提唱している類似の指標として「アブセンティーズム(absenteeism)」があります。これは、「健康問題による仕事の欠勤」、すなわち、病欠のことをさします。

東京大学による研究では、企業における健康関連総コストの中で最も大きいのがプレゼンティーズムであることがわかりました。一方で、医療費等の直接的な費用やアブセンティーズムによるコストの占める割合は低いことがわかりました(図1参照)。

つまり、従業員が体調不良によりパフォーマンスが低下した状態で勤務することは、経営上大きなコスト損失につながっているのです。作業効率が悪い状態で無理して働くよりも、欠勤・午後出社などでゆっくり休む時間を作った方が、経営上のコスト損失は少なくて済むと考えられます。また、従業員の回復を待つことは、企業における従業員の健康関連のコストを削減することにもつながります。
 

健康関連総コストの内訳

図1 健康関連総コストの内訳

しかし、職場の雰囲気や仕事のスケジュールなどでなかなか休むことが難しい業種・職種が多いことも事実です。では、プレゼンティーズムによるコストの損失を抑えるために、事業者は、労働者にどのようなサポートをすればよいのでしょうか?

アメリカの先行研究では、「栄養バランス不良」「やせ・肥満」「高コレステロール」「運動不足」「高ストレス」「予防ケア未受診」「生活不満足」「高血圧」「喫煙」「糖尿病」「飲酒」のうち、該当する健康リスクの数が多い人ほど、コスト損失割合が高くなっていることがわかりました。(図2参照)
 

健康リスク数別労働生産性(プレゼンティーズム・アブセンティーズム)損失の平均割合

図2 健康リスク数別労働生産性(プレゼンティーズム・アブセンティーズム)損失の平均割合

つまり、労働時間の管理の他に、生活習慣の改善を促すことがプレゼンティーズムによるコストの損失を未然に防ぐことにつながります。

業務の効率化・生産性の向上を実現するためにも、まずは自社従業員のプレゼンティーズムの状況を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
 

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当社では、職業性ストレス簡易調査票の57項目に事業者様独自の設問(4項目・4選択肢)を追加することができる「AltPaperストレスチェックキット独自設問版」や、日本人に適したプレゼンティーズムを調査するために東京大学政策ビジョン研究センター健康経営研究ユニットが開発提唱した「東大1項目版」のご提供を行っております。

業務の効率化・生産性の向上実現を検討中のご担当者様は、お気軽にお問い合わせください。
 

 

 

 

 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2018年8月15日 / 編集:2024年1月09日

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