株式会社情報基盤開発は、2023年中に「ソシキスイッチ ストレスチェック(旧:AltPaperストレスチェック)」をご利用いただいたお客様からデータをご提供いただき※1、「高ストレス者」※2の割合・「総合健康リスク」※3・「各種ストレス尺度」について業種別に平均値を算出した「ストレスチェック業界平均値レポート2024」を公開いたしました。
※2024年ご報告の本データは、2023年にストレスチェックを実施され、2023年12月末日までに当社で集計を完了した1,953事業者(男性334,392名、女性250,794名)を含む約58万5千人のデータを対象としております。業界平均値は、当社のストレスチェックキットをご利用いただいた事業者様に「集団分析結果のご提供」の承諾を個別にお伺いし、ご同意いただいたデータのみを用いて分析を行っております。 ※2023年単年の「ソシキスイッチ ストレスチェック(旧:AltPaperストレスチェック)」導入事業者数は約4,600法人、125万人。 |
総合健康リスクは半数以上に改善の兆し?一方、高ストレス者割合はほぼ全業界で13%を上回る結果に
※ 赤い囲み部分 … 総合健康リスク:110以上を赤色、100以上を黄色に色分け
高ストレス者(A判定)割合:15%以上を赤色、10%以上を黄色に色分け
※ A判定割合 … 高ストレス者割合。当社のデータでは、厚生労働省公表のストレスチェック結果の分布で最も高い評価「A」判定を示した受検者の割合を用いています。
「総合健康リスク」は、全14業界中(「T.分類不能の産業」を除く)10業界が厚生労働省の基準とする数値(全国平均:100、平成17年度/2005年に基準値として設定)を下回る良好な数値でした。基準値を1割(110)以上上回る業界もみられず、前年のデータと比較しても半数以上が改善している結果となりました。
「ソシキスイッチ ストレスチェック」
業界平均値レポート2024:総合健康リスク
一方で「高ストレス者割合(A判定割合)」は、全業界が基準値の10%を超え、20%に迫る業界もみられました。「J. 金融業・保険業, K. 不動産業・物品賃貸業」(10.8%) と「F. 電気・ガス・熱供給・水道業」(11.4%)の2業界を除く全ての業界で13%を上回り、多くが14%前後で推移しています。前年と比較するとおおむね同程度の数値で、大きく悪化している業界はないものの、15%を超える業界も依然としてありますので、下記の業界は特に注意が必要です。
<高ストレス者割合ワースト5>
E. 製造業(19.3%)
M. 宿泊業, 飲食サービス業(18.3%)
P84-85. 保健衛生、社会保険・社会福祉・介護事業(16.8%)
H. 運輸業, 郵便業(15.4%)
I. 卸売業, 小売業(15.9%)
「ソシキスイッチ ストレスチェック」
業界平均値レポート2024:高ストレス者割合
前年比、増減幅が目立つ結果に。自社の集団分析と職場環境の変化を改めて確認を
「ソシキスイッチ ストレスチェック」
業界平均値レポート2024:総合健康リスクの比較
総合健康リスクは全体的に良好な結果となりましたが、本年は前年比3.0ポイント以上大きく増減した業界が目立つ印象です。
「L. 学術研究,専門・技術サービス業」(前年比+3.1)、および、「P84-85. 保健衛生、社会保険・社会福祉・介護事業」(前年比+3.9)についてはそれぞれリスクがやや増しているものの、「G.情報通信業」(前年比-3.2)、「M. 宿泊業, 飲食サービス業」(前年比-4.4)、「N. 生活関連サービス業, 娯楽業」(前年比-6.6)、「Q.複合サービス事業,R.サービス業(他に分類されないもの),S.公務(他に分類されるものを除く)」(前年比-4.4)と、大きく改善した業界が多くありました。
「M. 宿泊業, 飲食サービス業」「Q.複合サービス事業,R.サービス業(他に分類されないもの)」については、改善した結果、総合健康リスクは基準値100を下回りました。
また、特に改善幅が大きかった「N. 生活関連サービス業, 娯楽業」は、高ストレス者割合も大きく改善しています。前回はワースト2だった高ストレス者割合は19.0%→14.4%となりワースト5を脱出、総合健康リスクも106.8→100.2と、基準値100に迫る数値となりました。
<総合健康リスクが大きく改善した業界>
N. 生活関連サービス業, 娯楽業(前年比-6.6)
M. 宿泊業, 飲食サービス業(前年比-4.4)
Q.複合サービス事業,R.サービス業(他に分類されないもの),S.公務(他に分類されるものを除く)(前年比-4.4)
G.情報通信業(前年比-3.2)
なお、今回は前年と比べて受検率がわずかに下がっている業界が多数見受けられる点は少し気になります。全業界で84~91%前後と良好ではあるのですが、例えば休職者や未受検者の方がいらっしゃる場合、各数値に正しい結果が反映されていない可能性も懸念されますので、より信頼できるデータを集めて、職場環境を正確に把握するためにも受検率の向上に努めていただければと思います。ストレスチェックの受検は義務ではありませんが、ストレスチェック実施の意味・職場環境改善への活用について従業員に正しく理解してもらうことが受検率の向上につながります。
「業界平均値レポート2024」の総評:ストレスの感じ方も多様化?組織の課題・状況に合った対策の検討を
まず「総合健康リスク」は、職場に対して感じているストレスを「仕事の量-コントロール」と「職場の支援(上司や同僚からの支援)」の2軸に分け、職場の環境が従業員の健康にどの程度影響を与えるかを総合的に評価したものです。
人事労務に携わる方々にとっては、職場環境の改善や人間関係を含めた人的ケアを行うことが結果的にコスト削減・業務効率化につながり、効果があるという認識は今や一般的かと思います。生産性向上・離職防止等の対策や効果についての認知が広まりはじめていることと並行して、プレゼンティズム等の新しい指標によって就労環境や従業員の不調がもたらすリスクや、それが職場にとってもマイナスの影響となりうることが、さまざまな調査で明らかになりつつあります。
今回、総合健康リスクが全体を通して良好な結果となったことは、業務からくるストレス・健康に関するリスクの低下を示しており、これは各企業が自覚的・積極的に職場改善活動に取り組んできた結果といえるかもしれません。
一方で、業務や職場に関係する精神的なプレッシャーの増大や心的な疲労感といった個人が感じる「職場のストレス」は未だに強くデータ上に現れています。
「高ストレス者」の判定は、心身のストレス反応を中心に評価しており、実際にストレス反応が現れている場合に高くなります。全業界が基準となる10%を超え、2倍の値に迫る業界もみられたことから、前年と比較しても「業務環境は改善したがストレスを感じる人は多い」傾向は大きく変わっていません。
負担感や不安感、人間関係などパーソナルな問題は実態がつかみにくいですが、これらを解決することで、ストレスの軽減だけでなく、仕事に対するエンゲージメントやモチベーションの向上につながります。より良い組織を目指す上で組織独自の問題を見つけ、改善計画の立案と取り組みを継続することが重要です。一つの視点からの調査だけではなく、ストレスチェックの実施・活用と併せて、より横断的で柔軟に対応できるサーベイの併用、変化する組織の内情・課題に合わせた分析を続けることも成功のカギではないでしょうか。
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本業界平均値と併せて、改めて貴社の集団分析データと向き合っていただき、 各事業場や従業員に合わせた改善策をご検討いただけたらと思います。
本考察の視点が、貴社の職場環境改善につながるヒントとなれば幸いです。
当社・株式会社情報基盤開発は、「ストレスに悩まない職場をつくる」というミッションの実現に向けて、今後もストレスチェックをはじめ、職場のメンタルヘルスケア、健康経営、業務効率化の実現につながる各種法人向けサービスをご提供してまいります。
【調査方法】
この度算出いたしました業界平均値データは、当社サービス「ソシキスイッチ ストレスチェック(旧:AltPaperストレスチェック)」を2023年中にご実施いただいた事業者を対象に、集団分析結果のご提供の承諾を個別に伺い、同意いただいた事業者のデータのみを用いて分析を行ないました。
比較の基準としている「全国(厚労省データ)」は、
“厚生労働省科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業「職業性ストレス簡易調査票及び労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストの職種に応じた活用法に関する研究」平成19年度総括・分担報告書 表4 職業性ストレス簡易調査票下位尺度の職種別平均値及び標準集団との比較”が出典です。
集計につきましては、事業者様のデータについて男性参加者データ・女性参加者データに分け、高ストレス者の出現割合、健康リスク、各尺度の平均値を業種ごとに算出しました。なお、パンフレット「ストレスチェック業界平均値レポート2024」掲載のデータ、及び、本記事につきましては「男性」データを用いて、比較・分析を行っております。
※1 データの取り扱いについて:
・各事業者様にご提供いただいたデータにつきましては、業種・規模・地域をお伺いして分類することとし、個々の事業者様・受検者様を識別できないようにして取り扱っております。
・各受検者様の回答につきましては、性別・職種と57項目・80項目の回答データのみ使用することとし、個人を識別できないようにして取り扱っております。
・業種の分類は、総務省の日本標準産業分類(大分類、一部中分類) に従います。著しく事業者数が少なかった業種については比較的近い業種に集約しております。
※2 「高ストレス者」とは:
厚生労働省(令和元年7月)が公表したマニュアルに基づいており、以下(1)及び(2)に該当する者を指します。(1)及び(2)に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度を基準とします。
(1)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
(2)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」
及び「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下
※3「健康リスク」とは:
基準値として設定された全国平均値100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」とは、 男女別に求められた量-コントロール判定図と職場の支援判定図から構成されます。この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。
量-コントロール判定図 はストレスチェックから得られた「心理的な仕事の負担(量)」「仕事の裁量度」の2尺度の数値から、職場の支援判定図 は「上司からの支援度」「同僚からの支援度」の2尺度から求められます。
〔参考文献・関連リンク〕
初出:2024年06月11日 / 編集:2024年09月27日 |