「ポジティブメンタルヘルス」とは?職場のワークエンゲージメントを考える:エンゲージメント経営を考える

「ポジティブメンタルヘルス」とは?職場のワークエンゲージメントを考える

メンタルヘルスケアと聞くと、「悪い状態を改善すること」とマイナスをプラス方向に転じる、あるいは現状よりも更にマイナス方向へ下降することを未然に防ぐ…とイメージする方も多いのではないでしょうか。

十数年前から職場で取り組まれてきた従来型の「従業員のメンタルヘルス対策」とは若干異なる、「ポジティブメンタルヘルス」という概念は皆さんご存じでしょうか?

この記事では、

  • 「ポジティブメンタルヘルス」とはどういった概念なのか
  • 「ポジティブメンタルヘルス」と「ワークエンゲージメント」がどのように関連するのか
     

等々について、 職場環境改善に向けた取り組み事例を交えながらご案内致します。
 

組織に活気をもたらす「ポジティブメンタルヘルス」

「ポジティブメンタルヘルス」とはどのような意味なのでしょうか。

メンタルヘルス対策というと、多くはメンタル不調にならないための予防や、メンタル不調になった人の回復や職場復帰のための対応という印象が強いと思われます。

一方で「ポジティブメンタルヘルス」の取り組みは、メンタル不調を抱えていない元気な人も含めた、すべての従業員を対象としたメンタルヘルス対策です。

「仕事を楽しいと感じるか」「仕事にやりがいを感じているか」を表すワークエンゲージメントなど、ポジティブな心理社会的側面に着目します。労働者が心身ともに生き生きとしていて、組織も元気になるような内容となります。

メンタル不調への対策は、不調が生じているというマイナスの状態をゼロの状態にするようなイメージです。
一方で「ポジティブメンタルヘルス」は、ゼロの状態をプラスにするような取り組みです。
 

「ワークエンゲージメント」と「ポジティブメンタルヘルス」

「ポジティブメンタルヘルス」の中でも重要度が高いのが、先ほども例に挙げた「ワークエンゲージメント」という概念です。

「ワークエンゲージメント」は、生産性を高めながら、従業員の健康を良好な状態とします。熱意をもって仕事に没頭し、仕事からエネルギーを感じているという状態で、燃え尽き状態である「バーンアウト」と対照的な概念とされています。仕事に夢中になるという状態からはワーカホリック(仕事中毒)と似ていると感じた人もいるかもしれません。

「ワークエンゲージメント」とワーカーホリックの違いは、「ワークエンゲージメント」では「仕事をしたい」という感情であるのに対し、ワーカーホリックは「仕事をしなければならない」という感情に捉われているような状態を指します。「ワークエンゲージメント」での仕事への熱中は「より前向きなもの」であるといえます。

「ワークエンゲージメント」を高めるには、周りのサポートや連携など職場の良好な人間関係や、自分で仕事をコントロールできるかといった面が良い状態であると上昇するといわれています。
 

「ポジティブメンタルヘルス」への企業の取り組み

「ポジティブメンタルヘルス」に関して、実際に企業はどのような取り組みを行っているのでしょうか。

高知県庁では、平成23年度から「職場ドック」という取り組みを行っています。
「職場ドック」とは人間ドックがもとになっており、1年に1回、身体の健康管理を行うように職場の点検を行う、というような意味です。 現在では、高知県の事例を参考に北海道や京都府、広島市などいつくかの官公庁を中心に広まっています。
 
職場ドックによって、ストレスがなく、職員同士のコミュニケーションが活発で、職員が出勤したいと思える職場にすることを目標としています。ストレスチェックと似ている部分もありますが、プロセスに違いがあります。

ストレスチェックが「ストレスの度合いが高い者に注目して、職場のストレス要因を取り除こうとする」のに対し、職場ドックは「どの職場でも職場環境をより良いものにする」ことを目指しています。地方自治体は毎年4月に人事異動があるため、職場ドックは1年ごとに完結するかたちです。

流れは毎年4月に職場ごとに「職場ドックリーダー」を選出し、リーダーと管理職への研修を行い、きちんと職場ドックの趣旨や手順を理解するところから始まります。全ての職場に、犬の3兄妹「かい(改)」「ぜん(善)」「まる(。)」が職場ドックについて解説をするマニュアルを配布し、職員が前向きに取り組めるような工夫を行っています。
 

ハタラキヤスクスルドック3兄弟
ハタラキヤスクスルドック3兄弟

職場全員が参加し、職場の良い点と改善点を明確にしたり、グループディスカッションによって職場の良い点を共有したり、改善点を整理したりします。夏からは改善策を実施し、冬には改善事例として職員厚生課に報告するという流れです。年度内には表彰が行われ、職場改善の事例集も全体に共有されます。実際の改善点は職場内の物の配置や空調といった環境面から、会議などの情報共有、職員同士の協力、危機管理など多岐にわたります。

職場のコミュニケーションを活性化するというのは多くの職場で課題にされるのではないでしょうか。

活性化させなくてはいけないと思いつつも、一人ひとりのやる気だけでは解決できない部分もあります。

勤務時間終了後に飲み会に行くというコミュニケーションの取り方は、今の時代には合わないと感じる方もいますよね。職場ドックは、勤務時間内に職場の改善のために話し合いを行うという点で、コミュニケーションが活性化される効果があります。
 

ポジティブメンタルヘルス推進のために企業ができること

職場のメンタルヘルスにとっても、個人のメンタルヘルスにとっても、「ポジティブメンタルヘルス」に取り組むことは有効な手段です。

「ワークエンゲージメント」を高めるためにできることはどんなことがあるのでしょうか。
企業ができる取り組みとしては、やりがいのある業務内容、仕事に関する決定権、職場の良好な人間関係といったことを整えることです。
 
これらを改善するために活用できるのがストレスチェックです。ストレスチェック実施後の集団分析を活用することによって、職場環境の改善点がおおまかに見えてきます。その結果をもとに、各部署や組織全体の課題をより深く掘り下げて検討し、従業員参加型の職場環境改善のための施策を検討することが大切です。
 
「ワークエンゲージメント」が高まると、人員流出の防止、売り上げ向上や生産性向上、顧客満足度が上がるといわれており、「ポジティブメンタルヘルス」に取り組むことで、企業にとってさまざまなメリットがあることが近年わかってきました。

メンタルヘルス不調者に対する職場復帰支援や早期発見を目的とした従来型のメンタルヘルス対策とは違う、すべての従業員を対象とした「ポジティブメンタルヘルス」への取り組みを、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
 

 

 

〔参考文献・関連リンク〕

 

初出:2022年06月28日 / 編集:2023年05月31日

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