2015年12月から、労働者へストレスチェックを実施することが義務付けられました。
厚生労働省では、そのストレスチェック制度の施行にともなって、事業者に対してストレスチェックを簡易的に実施できるプログラムを無料配布しています。
そのプログラムである「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」は、労働者の受検から、結果の集計・分析、労働基準監督署への報告書作成までできるプログラムです。
産業医が在籍していない事業所や、ストレスチェックに関する知識を有した実施者がいない事業所は、このプログラムを利用することでストレスチェックをスムーズに導入・実施することができます。
しかし、「プログラムを導入しない」という選択をした企業も多いのではないでしょうか?
2019年3月にはVer3.2にバージョンアップしたプログラムがリリースされたので、今回はその変更点やプログラムの内容について紹介していきます。
ストレスチェックの目的と実施
まずはストレスチェック制度が義務化された目的について理解しましょう。
2015年12月に制度の義務化が施行されたストレスチェックは、労働者のストレス状態を知り、職場の労働環境の改善を目的としています。
自分のストレス状態を知ることで、ストレスチェックを受けた労働者が自身で対策をしたり、専門医師の面談を受けて問題解決を目指すことができるようになることが最大の目標なのです。
労働者を50人以上抱える事業所は、ストレスチェックを労働者に対して年1回以上必ず行わなければいけません。
しかしながら、産業医が在籍していないなどの理由で、ストレスチェックについてまだ具体的に取り組んでいないという事業所は多いでしょう。
ストレスチェックの実施方法については、以下の実施手順を参考にしましょう。
ストレスチェックの実施手順
ストレスチェックは以下の手順で実施します。
- 実施方法や社内ルールの策定
- 労働者による受検
- 調査・分析
- 面接指導・職場環境の改善
ストレスチェックをすべて自社で行う場合は、厚生労働省公式の ストレスチェック制度導入マニュアル を参考にしましょう。
本マニュアルでは、ストレスチェックの方法や目的、注意点などが記載されています。
冒頭で紹介したとおり、これらのストレスチェックはITシステムが活用された「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」で行うこともできます。
当プログラムは、ストレスチェックを簡易的にする厚生労働省公式のプログラムで、どの事業所も無料で利用ができます。
厚労省のウェブサイトよりダウンロードできるこのプログラムは、アプリを使って回答・分析を行い、エクセルデータとして出力できるシステムです。
インストール時に多少の労働安全衛生法の定める基準を満たした調査、結果の集計・分析、労働基準監督署への報告書作成までできるので、自社内でストレスチェックを行う際にプログラムの利用を検討された企業は多いのではないでしょうか。
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムがバージョンアップ!
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムは、2019年3月よりVer3.2にバージョンアップしました。
プログラムは度々バージョンアップや情報の更新を行なっており、エラーの修正や利便性の向上が図られています。
Ver3.2バージョンアップの変更点
Ver3.2の主な変更点は以下のとおりです。
- 集団分析のバックアップを可能化
- 過去情報をと取り込んで比較が可能化
- 集団分析の切り口・組み合わせが自由に選択可能化
- 報告書の作成や産業医情報の登録が可能化
- 厚労省の情報URL集が追加 など
今回の更新では、「集団分析」に注力したバージョンアップが施されました。
分析データのバックアップや組み合わせが自由になったことで、分析や比較の幅が広がりました。
よりストレスチェック実施後のサポートが手厚くなっていることがわかります。
厚生労働省版ストレスチェックプログラムのデメリット
一見便利そうに見える厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムですが、いくつかのデメリット・不安要素があります。
そのうちの一つが、紙媒体のデータ入力を手作業で行わなければいけない点です。
プログラムはパソコン上で回答されることを前提としており、パソコンに慣れていない従業員や担当にとっては「用紙で回答・回収するほうが実施しやすい」といった希望もあるのではないでしょうか。
当プログラムではパソコン上で回答・分析を行うように作成されているため、紙の調査票を使用する場合、「実施事務従事者が人力で入力する」工程が必要となります。
データ入力の手作業となると、実施者や実施事務従事者の負担が大きいことに変わりない上に、パソコンなどに疎い人は現場での導入は難しいです。
また、プログラム自体は保管の上限数があるので、労働者の多い事業所では部署ごとにプログラムを分けて利用する必要があります。
つまり大きな企業の場合は一括での分析が難しく、そのたびに実施事務従事者を設置しなくてはいけないので、プログラムの「簡易的」という部分のメリットは薄れてしまいます。
ほかにも、分析の自由度が高すぎて本当に有効なデータの切り口が見えない、社内でデータを管理するため個人情報のセキュリティがやや不安という点も大きなウィークポイントです。
厚生労働省版ストレスチェック実施プログラムはバージョンアップによって便利な機能は増えたものの、事業所の形態や使い方によっては不便ともいえるでしょう。
本当に簡単なストレスチェックなら 【外部委託】
厚生労働省が公式に提供している簡易ツールがあるといえど、その利便性は特別高いとはいえず、慣れない事業所によっては使い勝手の悪いプログラムともいえます。
仮に少人数の事業所であっても、ストレスチェックを外部に委託してしまった方が、社内の効率・実施者の負担が減ることは明らかです。
また、プログラムには厚労省発表のストレスチェックに関する通達・URLなどを集めたデータベースが内蔵されていますが、必要な情報をその中から見つけ出すのは時間や手間がかかるでしょう。
委託業者のほとんどがストレスチェックに関する知識やノウハウを有しているので、プロの視点からの分析結果が得られたり、分析結果の保管もセキュリティ度が高くて安全です。
紙媒体に関係なく、外部委託すれば実施者の業務的負担がないので、電子機器が苦手な人でも利用できる上、初めての実施でも安心して簡単にストレスチェックを行うことができます。
そのため、ストレスチェックに関して、業務的もしくはセキュリティの面で不安があるなら外部委託するというのも選択肢の一つです。
ストレスチェック制度の義務化によって、厚生労働省はストレスチェックを自社で簡易的に行えるツール「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」をリリースしました。
プログラムの提供によって、自社で簡単にストレスチェックを行うことはできるものの、紙媒体で実施する場合は手作業で行う必要があります。
さらに、データ保管の上限があるために、大企業では一括での分析が難しく、セキュリティ面も不安という点が大きなデメリットです。
そのため、ストレスチェックを安心して簡単に行うためにも、外部委託するという方法がオススメといえるでしょう。
初出:2019年8月19日 |