ストレスチェックを行ったら必ず届け出を!
ストレスチェックの実施は大変です。基本方針の表明から始まり、規程を作成して調査を実施。医師による面接指導や集団分析を行い、一通り終わったと安心している担当者の方も多いでしょう。しかし、まだ終わっていません。
ストレスチェックを実施したら、労働基準監督長に「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(以下、ストレスチェックの報告書)」を提出しなければならないのです。労働安全衛生法第52条の21には「常時50人以上の労働者を使用する事業者は、1年以内ごとに1回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第6号の2)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない」と記載されています。
ここで注意するのは「常時50人以上」の数え方で、ストレスチェックの対象者の範囲とは異なるため、注意が必要です。
すなわち、ストレスチェックの対象となるのは、「1. 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めがあっても1年以上引き続き使用される者を含む)」、もしくは「2. 通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上である者」で、4分の3未満の者や派遣労働者は含まれませんが、労基報告書の提出に関しては、この「常時50人以上」に4分の3未満の者や派遣労働者を含めてカウントする必要があるのです。そのため、届出義務に該当するか確認するためにカウントした人数と、検査の対象者の人数は異なるということになります。
なお、報告様式は規則に規定されているOCIR帳票(光学式文字イメージ読み取り装置に対応した帳票)の様式を使用しなければならないので、厚生労働省ホームページに掲載されている「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を利用しましょう。
ストレスチェックの報告書に関する疑問を解決!
ストレスチェックの報告書は記入部分がA4用紙1枚分で、内容はそれほど難しいものではありません。しかし、所轄の労働監督署長への提出書類なので、間違いには慎重になるでしょう。そこで、以下にストレスチェックに関してよくある疑問とその回答について、厚生労働省が公表している「ストレスチェックQ&A」に掲載されているものの中から報告書に関するものを抜粋しました。
(1)産業医がストレスチェックに関与していない場合も、報告様式には産業医の記名・押印が必要か?
→ 産業医がストレスチェック実施者でない場合も、産業医の名前は記入が必要です。なお、現在は産業医の自署・押印は不要となり、氏名や意見欄の記入は担当者の代筆・印刷での対応が可能となりました。
(2)報告を怠ると罰則があるのか?
→ あります。報告の法的根拠は労働安全衛生法第100条となっており、報告を怠ると法第120条第5項の規定に基づき、五十万円以下の罰金となります。
(3)面接指導の実施者において、産業医と他の医師の併用をした場合には、報告様式の「面接指導した者」の欄にどのように記入すればよいか?
→ 「面接指導した者」の欄には、主として面接指導を実施した者を記入してください。
(4)報告は本社でまとめて提出してもよいか?
→ 事業場ごとに所轄の労働基準監督署へ提出してください。
(5)ストレスチェックを複数回実施している場合には、どのように報告すればよいか?
→ 複数回のうち1回について報告すれば大丈夫です。報告の義務は「1年以内に1回」なので、実施の都度報告する必要はありません。
(6)部署ごとに時期を分散してストレスチェックを実施している場合、報告様式の「検査実施年月」の欄にはどのように記入すればよいのか?
→ 「検査実施年月」の欄には、報告日に最も近い検査実施年月を記入してください。
(7)報告様式の「在籍労働者数」には、派遣労働者やアルバイト・パートも含めた全ての労働者数を記入すればよいのか?
→ 報告の目的は、法令に定められている事項の実施状況を確認するためです。したがって、「在籍労働者数」の欄には、ストレスチェックの実施時点(実施年月の末日現在)でのストレスチェック実施義務の対象となっている者の数(常時使用する労働者数)を記入してください。
(8)派遣先事業場において派遣労働者にもストレスチェックを実施した場合、報告様式の「検査を受けた労働者数」の欄には、派遣労働者数も含めて報告するとよいのか?
→ 「検査を受けた労働者数」の欄には、⑦と同様の理由から派遣労働者は含めないでください。
(9)ストレスチェックの受検率が低い場合、労働基準監督署から指導されることがあるか?
→ 指導されることはありません。
(10)面接指導の実施率が低い場合、労働基準監督署から指導されることはあるか?
→ 指導されることはありません。
まとめ
ストレスチェックの報告書は年度末に合わせて提出することもできますが、忘れないようにするためには実施月を決めて、実施後速やかに出すようにした方がよいでしょう。報告書を労働基準監督署長に提出しないと、最悪の場合は五十万円以下の罰金が課されるので注意が必要です。
また、「在籍労働者数」や「検査を受けた労働者数」は、ストレスチェック実施義務の対象となっている労働者のみになっています。遣労働者などは実施したとしても含めないようにし、また、届け出が必要な事業場の要件である「常時50人以上」のカウントと混同しないように注意しましょう。
なお、ストレスチェックの受検率や医師による面接指導の実施率が低くても指導されることはありませんので、報告書には結果を正確に記載するようにしましょう。
初出:2017年10月14日 / 編集:2023年4月19日 |