医療機関のストレスチェック:ストレスの多い看護師・高ストレス者の少ない医師

医療機関のストレスチェックは大丈夫?外部委託で「安心」の実施を

医療職、特に看護師は高ストレスな状態にあるといわれています。
医療職は精神的・肉体的にも負荷の高い業務が多く、普段からストレスを抱えやすいため疾患の危険性が高いといわれています。

本来なら積極的にストレスに対するケアをしなければならない医療業界ですが、医療の専門家であるが故にメンタルヘルスケアを浸透させるにはしばしば課題を伴います。

病院が内部でストレスチェックを実施する際にはどんな困難を抱えてしまうのか、そしてストレスチェックを外部委託した場合に解消できる利点はどんなものかについて、考えてみましょう。
 

医療職のストレスケアの重要性について

ストレスの多い看護師・高ストレス者の少ない医師

メンタルヘルスを測る指標の一つに、その職種や業界ごとの要素に着目した「職業性ストレス」があります。

職業性ストレスの職種差に着目・検討した研究によると、医療職に従事している方、特に看護師はストレスによる健康の影響を受けやすい「高リスク群」であるといわれています。
ですがその一方で、医師は職業としては過酷であると考えられるものの高ストレス者の割合が低い傾向がある、という分析結果も報告されています。

看護師を含む医療・福祉業界は、職務内容が過酷である・ストレスや負荷がかかることは他職と比較しても顕著です。
厚労省の調査「過労死等の労災補償状況」において、職種における精神障害の労災請求件数の多さでは「医療,福祉」分野は毎年1位・2位など上位に入り、さらに職種別で見ても「保健師,助産師,看護師」は「介護サービス職業従事者」に次いで多く請求・支給決定がなされています。
 



看護師の職業性ストレスは、その業務が「仕事量が多く、仕事量の変化の大きさをコントロールしづらい」「対人的な業務、責任が重いが評価されにくい」ことが原因ではないかと考えられています。
「責任の重い職務内容」「長時間、変則的な労働時間」の他にも、医療職全体にでみられる「チーム医療に関する他職種との摩擦」「患者や患者家族との関係や過剰な要求に関わってしまう」といった人間を相手にするが故の要因・側面は、高ストレスな他職種にも通じるストレスの原因です。

看護師に限らず医療に関わる労働環境全体に、過重な負荷が生じている可能性があるのではないか、と分析できるのではないでしょうか。

医療の現場からも、ストレスについて十分なケアができていないという課題や声が上がっています。
公益社団法人日本看護協会などでも、「ヘルシーワークプレイス(健康で安全な職場)」を展開し、ガイドラインの配布などを通して全国へ医療職の労働環境是正を呼び掛けています。
 

病院が抱える「ストレスチェックを実施する難しさ」
……「身近な同僚のストレス」を扱うことがストレスに

医療職のストレスを緩和するため、安全配慮義務や労働環境の整備、特にストレスチェックなどのメンタルケア・メンタル不調予防の普及が急がれています。
病院という「専門家」が集まる団体ならば、実施も分析もスムーズなのでは?と考えられるのですが、実際ストレスチェックを内部関係者だけで行う場合、様々な悩みが伴います

当社が以前お話をお伺いした医療職の皆様からは、具体的に以下のような悩みが寄せられました。
 

【ストレスチェックを自分の病院で行うとき、ここが困った!】

  • 産業医を職員の中から選ばなければならない/もしくは外部から新たに依頼しなければならない
    …2017年より病院長等の「管理者」が産業医を兼任することは禁止されました。産業医または実施者を新たに外部に依頼しなければならず、対応を急ぐ方も。
  • 病院スタッフである医師が産業医となった場合、
    ストレスチェックに関わることへの心理的負担が大きい
    …毎日顔を合わせる医師・看護師間の関係がストレスに。
     ・一緒に働く同僚のストレスの状態を把握しなければならない
     ・高ストレス者への医師面接による負担感・相談のしづらさ
  • 内部の人が担当だと、ストレスチェックの回答が正確ではなくなる可能性が高くなり、適切な職場改善につながらないおそれがある

病院内部でストレスチェックを行う際には他にも色々な課題があると考えられますが、注目したいのは「実際に担当になった産業医にかかる負担が大きい」、それによって「病院内でストレスチェックを適切に行うことが難しい」ということでしょう。

他の職種でも同じことがいえますが、同僚として共に働く方の心情やストレス状態を知ってしまうことは、守秘義務の他にも大きな精神的負担が生まれます。
 

「外部委託」で解消できる不安点とは

ストレスチェックはガイドラインや指針で「外部委託が可能である」と明記しています。現在では、専門的に取り扱う業者や独自の分析を行えるサービスも数々登場し、選択の幅もぐんと広がりました。

せっかく医師がいるのに少々もったいないような……とお考えの方もいらっしゃると思いますが、ストレスチェックを外部委託するメリットはどんなところにあるのでしょうか。
 

【ストレスチェックを外部委託するメリット】

  • 産業医を派遣してもらったり、実施者を代行してもらえるなど
    必要な人的サービス・スムーズな連携を取ることができる
  • 受検に必要なシステムを選ぶことができるため、
    PC、スマホ、紙マークシートなど、受検しやすい方法が用意できる
  • 個人情報漏洩を防止するセキュリティ・リスク管理
  • サポート体制・分析が充実している
  • 保健師や精神保健福祉士といった専門家によるケア・支援の相談が可能

この中で大きな導入メリットは、産業医の派遣や実施者など「専門業務を外部スタッフに任せることができる点」です。
ストレスチェックの実施者や産業医業務を担当する外部のスタッフに置くことにより、スタッフ間の懸念や精神状態を知ってしまうことによるストレスの軽減を図ることが可能でしょう。

またストレスチェックに関わる事務などを格段に減らすことができる・専用に設けられたシステムやセキュリティを使用できるため、業務への支障を最小限に抑え、情報管理のリスク対策もしっかりととることが可能に。
特に様々な職務に携わる従業員が多い病院ではそれぞれが受検しやすいシステムを複数導入することで、全員の受けやすいストレスチェックを提供できます。

実施者や産業医について問題がない場合も、心療・精神分野の専門家のいない病院も多いかと思いますので、外部委託を行うことにより資格のある専門スタッフからの一環したケアや分析、提案を受け取ることができるメリットもあるのです。

忙しい病院だからこそ、「気兼ねなく専門的な知識を相談できる環境」、「スムーズで簡単、手間がかからない実施」の重要性は高いでしょう。
 


ストレスチェックは受検者が安心して取り組むようにできることが大切です。

せっかく受検しても正確な結果を得ることができなければ、個々人のストレス対処、組織の運営といった場面に上手に活かすことは難しいでしょう。
これからますます大切さを増すメンタルヘルスケア。医療の専門家として、まずはご自身の働き方・セルフケアと向き合ってみませんか。

 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2019年09月5日 / 編集:2023年04月17日

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