運輸業:ストレスチェック業種平均値レポート2021

【運輸業】身体的負担がTOPレベルに不良も、「仕事量、仕事質」は比較的良好。支援策に課題あり?:AltPaperストレスチェック業界平均値2021レポート

波乱の幕開け(?)を迎え、様々な問題を抱えながらも乗り越えてきた2022年も下半期に突入しました。

世界情勢の混乱・感染症による制限・市況の高騰……
日本社会で働く私たちのストレスは社会のさまざまな影響を受けています。

変化する情勢の中でよりよい環境を保つには、「定期的な現状分析」と「継続的な改善」が常にセットで欠かせないということは何事においても当てはまるのではないでしょうか。
 
先行きが不透明で将来の予測が困難な ” VUCA(ブーカ)”時代において、ストレス禍など数字にできない要素に対する判断は難しいもの。実際に働く従業員の方々の声から「どう改善策を導き出すのか」、データの読み方だけでなく、その数値や多様な情報からどのように職場環境の見えない部分・弱い部分を想定するかが重要となります。

本コラムでは、当社サービス「AltPaperストレスチェックキット」をご利用の皆様からご提供いただいた2021年中実施データから、運輸業界を例にとって “情報をどう読み取るか” を考えます。
 

※株式会社情報基盤開発は、2021年中に「AltPaperストレスチェックキット」をご利用いただいたお客様からデータをご提供いただき※1、「高ストレス者」※2の割合・「総合健康リスク」※3・「各種ストレス尺度」について業種別に平均値を算出した 「ストレスチェック業界平均値レポート2021」を公開いたしました。(【調査方法】 については、記事の末尾に記載しております。)

 

 

運輸業界のストレス、コロナで「業界内の差」が大きく開く結果に

昨年度は引き続き感染症対策として外出や旅行、イベント等に大きな制限がかけられていた地区が多く人員や貨物輸送を担う運送業界は業界内でかなり大きな環境差が起こっていたのではないかと考えられるでしょう。業務によっては制限の影響をダイレクトに受けてしまい、収入や就労環境、労働条件が変化する不安もあったかと思います。
 

「過労死等防止対策推進法及び過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づいて、厚生労働省および独立行政法人労働者健康安全機構が労災・公務災害認定事案の分析とアンケート調査を行った報告を確認してみましょう。

業界で働く方々がどのような不安を感じているかアンケートをとった結果を見てみると、業務に関連したストレスや悩みの有無について、「ある(あった)」と回答した割合は 64.2%、職種別でみると「バス運転者」が他の職種と比べてストレスや悩みに関する回答が挙がっています。

業務に関連したストレスや悩みの内容については、「賃金水準の低さ」(44.1%)が最も多く、次いで「事故等の恐れ」(39.4%)、「不規則な勤務による負担の大きさ」(35.7%)という割合でした。
 

職種別にみると、以下の通りです。

 

業種別 ストレス内容に対する回答割合

★トラック運転者
「賃金水準の低さ」(40.2%)
「職場の人間関係」(35.5%)
「事故等の恐れ」(34.1%)
 
★バス運転者
「不規則な勤務による負担の大きさ」(59.0%)
「賃金水準の低さ」(55.1%)
「事故等の恐れ」(53.5%)
 
★タクシー運転者
「賃金水準の低さ」(47.6%)
「売上・業績等」(45.7%)
「事故等の恐れ」(45.2%)


業界の特徴的な点だと感じるのが、少なくない割合で「事故等の恐れ」がランクインをしていたことです。

業務内容的に他業種で発生することはまれなストレス因子が上位に挙がっているのは、業務内容の特殊性によるものかと推測できます。
 
実際に労災認定された事案を具体的出来事別にみると、「事故や災害の体験」や「重大な事故人身事故を起こした」の割合は約40%、日本人の生活イベントでは「身近な人の死・傷病」「仕事上のミス」はとても強いストレス要因になることからも事故やケガを身近に感じる=ストレスを感じやすい環境下での就業状態といえるのではないでしょうか。
 
そのような環境では事故の原因やヒューマンエラーを引き起こす要因についても対応することで、ストレス環境全体をレベルアップさせることができます。過労や長時間労働といった「疲弊」対策は心身の活力を養い良いサイクルを始める・維持するための重要なポイントです。

労災の要件にもなる長時間労働ですが、アンケート結果からは「業務上発生する手持ち時間」や「目標賃金に達しない」ための自発的な残業が常態化しているのではないかという分析がなされています。「労働時間の把握はしっかりされているという状態の下で、意図的または仕事上の問題で残業が発生している」状況が恒常化しているのではないでしょうか。

厚生労働省の分析では背景に慢性的な人員不足等があるとされていますが、取引上の都合により組織としても措置が円滑に進まない等、様々な制約が考えられるという指摘もありました。

特に運輸業では「自主的な残業」を行っているという回答が目立ちます。それに対して各組織では賃金や運行管理の見直しなど業務改善で対応を行っていると回答した組織が多いようです。
分析結果やアンケート回答結果から、将来の人材不足を見据えて、今現在から就業環境・ストレスの問題へ組織全体で対応しようという業界のモチベーションが感じられました。


運輸業の業界平均値、特徴は?

2021年度の運輸業業界平均値は総合健康リスク103・高ストレス者割合13%となりました。
 

業界平均値(全体)と「H.運輸業, 郵便業」の高ストレス者・総合健康リスク
 

A. 農業・林業, B. 漁業, D. 建設業 E. 製造業 F. 電気・ガス・熱供給・水道業 G. 情報通信業 H. 運輸業, 郵便業 I. 卸売業, 小売業 J. 金融業・保険業, K. 不動産業・物品賃貸業 L. 学術研究, 専門・技術サービス業 M. 宿泊業, 飲食サービス業 N. 生活関連サービス業, 娯楽業 O. 教育, 学習支援業 P83. 医療業 P84-85. 保健衛生、社会保険・社会福祉・介護事業 Q. 複合サービス事業、R. サービス業(他に分類されないもの), S. 公務(他に分類されるものを除く) T. 分類不能の産業

 
これは厚生労働省の提供している全国平均値より少々不良な数値です。

21年度の業界平均値が20年度と比較して全体的に不良傾向に傾いていることも踏まえると、「平均的」と考えて差し支えないかと思う数値とみられます。

各尺度ごとに全国平均・各業界平均値を比較すると、運輸業は「仕事量、仕事質」が他業種と比較しても良好なようです。特に「仕事質」は本データ全業界中TOPで、精神的な負担なく働くことができる環境だと考える方が多いようです。仕事環境からくるストレスの値と合わせて、課されている作業や業務内容をストレスと感じている方は少ないのではないかと考えられます。
 
負担なく働けていると考えられるものの、身体的負担が業界間でもTOPレベルに不良な数値が出ていることは考えなければなりません。心身のストレス反応や身体愁訴の値と合わせて、「業務自体の身体負荷が高い」「長時間または不規則な新無形態に従事されている方が多い」という可能性が考えられます。
これは、運輸業従事者を男女で分析を行った際に「上司の支援」「同僚の支援」「家族友人の支援」が不良な点からも察することができます。
 

 

この支援に関する項目の不良は、職場で関係性を構築しにくい(コミュニケーション不足→関係性の構築の難しさ)ということでもあるので、ミスや事故の報告や身体の不調その他悩みは問題を共有しにくい環境に共通する内容です。

ドライバーであれば車内で過ごすことが多く交流を持ちにくい環境の改善や、組織的な支援でコミュニケーションをとるという風土の構築が有効ではないかと考えられます。

また、併せて技能の活用度が他の尺度と比較して目立って不良な数値にあることも改善のための重要な要素と見ることができます。一般的にこの尺度は資格職・技能職であると良好になることが多いものですが、ドライバーという変形的ではあるものの「資格職」であるのに不良な数値であるのは、一種「資格があることが当たり前」である運輸業ならではとも言えるでしょう。

その他に業界の特徴的な面が多く出ている部分としては、「仕事の裁量度・上司からの支援度」に関わる尺度の男女差が大きい点が挙げられます。特に「上司の支援」について、女性は偏差値52と他業種と比較しても良好なのに対し、男性は全国平均を下回る数値です。

就業内容が男女間に開きがあることを踏まえると、組織として施策をとっていることが現場まで伝わっていない・現場の求める施策ではない可能性が高いのではないでしょうか。

組織としての活動を周知すること、現場の声をきちんと取り上げて「なにが組織として対応すべきことか」「現場と経営が一体になって改善すべき問題は何か」を考えるタイミングにあるのかと思います。
 

改善のためには「現場の声」に耳を傾けて

白書からでもわかる通り、同じ業界の中でも業種によって働いている人が実際に「ストレス・負担だ」「問題だ」と感じている点が大きく異なります。
 
業界平均として業界全体の傾向や他社・他業種との環境比較よりわかる傾向も、実際の環境改善につながらなければ「ストレス軽減」「働きやすい職場」への有効な働きかけとはいいがたいでしょう。

白書でもそうだったように業種によってかなり行かれている環境に違いがあるという事実は変えられません。そのため、これからの環境改善は「業務改善」のように何か一つ答えがあってそれに向かっていくような、改善方法というよりも「フィードバックとアクションを繰り返して」「その時その時の環境にあった方向性にこまめにかじを切っていく」ことが求められるのではないでしょうか。
 
特にメンタルという目に見えない指標の改善には、定量化と比較が欠かせません。
その際には、まずストレスチェックなどのサーベイに従業員が正直に答えてもらわないと正確な状況が把握できません。

心理的安全性を高めてベースの信頼関係をしっかりと常日頃から保つことが、職場改善のキモになるでしょう。
 

「ストレスチェック業界平均値レポート2021」掲載資料 をご案内

最近であればシステムやアプリなどの定期的なサーベイを補助する機構などがかんたんに手に入りますが、まずは一年に一度義務付けられているストレスチェックを活用してみませんか?
今年で五年になるストレスチェック制度にはストレス環境を改善するため現場から声を集める・現場からの改善を進めるための場として応用するのがおすすめです。
 

下記フォームより「ストレスチェック業界平均値レポート2021レポート」掲載資料のご案内をお申込みいただくと、メールにて送付いたします。
 

 

【調査方法】
この度算出いたしました2021年「業界平均値」データは、当社サービス「AltPaperストレスチェックキット」を2021年中にご実施いただいた事業者を対象に、集団分析結果のご提供の承諾を個別に伺い、同意いただいた事業者のデータのみを用いて分析を行ないました。
2021年12月末日までに当社で集計を完了した1525事業者の男性207,679名、女性162,568名を含む約37万名のデータが含まれます。
※2021年単年の「AltPaperストレスチェックキット」導入事業者数は約33,00法人、受検者数は約90万人比較の基準としている「全国(厚労省データ)」は、“厚生労働省科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業「職業性ストレス簡易調査票及び労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストの職種に応じた活用法に関する研究」平成19年度総括・分担報告書 表4 職業性ストレス簡易調査票下位尺度の職種別平均値及び標準集団との比較”が出典です。

集計につきましては、事業者様のデータについて全参加者データ・男性参加者データ・女性参加者データの3軸に分け、高ストレス者の出現割合、健康リスク、各尺度の平均値を業種ごとに算出しました。なお全参加者データにつきましては、「男性」の基準値を用いて総合的な数値の算出、比較・分析を行っております。
 
※1 データの取り扱いについて:
・各事業者様にご提供いただいたデータにつきましては、業種・規模・地域をお伺いして分類することとし、個々の事業者様・受検者様を識別できないようにして取り扱っております。
・各受検者様の回答につきましては、性別・職種と57項目・80項目の回答データのみ使用することとし、個人を識別できないようにして取り扱っております。

※2 「高ストレス者」とは:
厚生労働省(令和元年7月)が公表したマニュアルに基づいており、以下(1)及び(2)に該当する者を指します。(1)及び(2)に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度を基準とします。
 (1)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
 (2)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」
  及び「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下

※3「健康リスク」とは:
基準値として設定された全国平均値100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」とは、 男女別に求められた量-コントロール判定図と職場の支援判定図から構成されます。この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。

 

 

 

 

〔 参考文献・関連リンク 〕

 

初出:2022年07月20日

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