緊急事態宣言が全国に広まるなか、ビジネスの各所でも「オンラインコミュニケーション」における稼働が、一気に身近になりました。最近はWeb会議を利用した飲み会やテレワークなども普及し、「コミュニケーションはオンラインで」がありふれたものとして受け入れられつつありますね。
オンラインでやり取りを行う際、中心になるのがメールやチャットを使った「テキストコミュニケーション」。顔が見えない/声が聞こえないツールでのやり取りは、慣れていてもすれ違いが生じやすいもの。ビジネスで、プライベートでと、活用する場面が増えるチャットや文章でのコミュニケーションを円滑にするための「注意点」とはなんでしょう ?
文章で、伝えたいことを見やすくする
メラビアンの法則、というのをご存じでしょうか?『人間は、矛盾したコミュニケーションを行う時、50%以上視覚や声色といった「情報以外の部分」からその人の本意を受け取っている』という法則です。
よくこの法則を引き合いに出して「情報の内容よりも、伝える時のビジュアル・口ぶり・言い方が重要」と言われることがあります。しかし、実はそれはこの法則の正しく意味するところではありません。この法則は「笑いながら怒る」などの『文章や言葉とその人の表情言動が異なる場合、人間は情報以外の部分を重要視する』ということを表す法則なのです。
つまり、チャットやメールといった顔が見えないコミュニケーションは、相手の態度や口調・身振り手振りに左右されない客観的・本質的なお話ができる方法と言えるでしょう。記録も取りやすく、きちんと利用できれば、誤解を解くためのツールとして私たちのやり取りをストレスフリーにしてくれます。
逆に言えば、態度や表情で「言外に」示していた部分は確実に伝わらなくなるということ。「チャットにしたらコミュニケーションがとりづらくなった」「情報の行き違い・トラブルが多くなった」という時は、本当に伝えたい・理解してほしい情報は何か、無意識に相手に理解を求めていた部分はないかを見直しましょう。
「言葉・時間・気持ち」のズレをなくそう
誤解・伝達ミスのほとんどは、コミュニケーションを行っている人との間にある「ズレ」が原因です。テキストコミュニケーションでのズレは、原因別に分けると、「言葉・時間・気持ち」の3つにわけられます。それぞれの解決方法を見てみましょう。
■言葉のズレには「わかりやすさ」を
文章がメインとなるやり取りでは、「言葉」や「表現」によって情報の伝わり方が左右されます。「読んでもらう」ことができなければ、たくさん情報を入れた文章も役に立ちません。相手の負担を減らすためにも、「なるべく一目で読める・わかる」ような文章作りが必要です。読んだ相手が「わかった! 」と思える文章の基本として、以下のポイントを押さえましょう。
・一番伝えたい内容を冒頭に、理由や経緯は後半で簡潔に
・主語や「誰が・誰に・何を」は省略しない
・専門用語や職場だけで通じる言葉でなく、一般的な表現で
・質問はなるべく「YES・NO」「単語」で答えられる形で記す
また、文章だと書かれている内容がフラットに見えるため、優先度や強調したい部分がわかりにくくなります。「!」「?」といった記号を使う他、上記のように箇条書きにしたり太字・色をつけるといった文章独自の表現も効果があります。
■時間のズレは「相手への配慮」を
テキストコミュニケーションは「今、相手が何をしているのかがわからない」ツールです。対面の会話やオンライン会議と違って、「ちゃんと読んでくれたのか」「今席にいるのか」など、どんな状態なのかがわからないということは相手に不安を与えがちです。この「不安」が積み重なると、気持ちのズレにも発展します。不安を完全になくすことは難しいですが、相手と自分の中に「ここにいる感」を作ることで相手との関係・やり取りをスムーズにすることは可能です。
チャットなどを利用する場合、まずは相手がメッセージを送ってきたら「必ず何かしらのリアクションをする」ことを心がけましょう。時間がなくて手一杯でも「確認します」や了承のサインは送れるよう、変換候補に登録しておくと便利です。
続けていれば返信をすぐに打てない場合でも、相手も「離席中かな? 」と納得して次の作業に移ることができるなど、時間のロスを減らし仕事上の信頼関係が生まれます。
また、そこで気を付けたいのは、リアクションの「即答」を相手に無理強いしないこと。相手がこちらの様子を知ることができないように、こちらも相手が抱えている仕事量や状況(もしかしたら急な電話や接客対応をしているかもしれません)がわかりません。早く返事が欲しい場合は、電話など直接連絡できる方法をとるか、早く対応してほしい旨をメッセージに明記しましょう。
■気持ちのズレは「ツールを変える」ことで解消
テキストコミュニケーションは、情報を客観的に見られるツールです。しかし、どういう意図で発言をしたのか捉えにくく、感情やリアクションが見られないという一面もあります。また、言葉から感じる印象などに関しては、気を付けていても個人個人で差があります。どうしてもムッと思うことや、議論を重ねた時に言葉尻が乱暴になってしまう時がどこかであるでしょう。
テキストでもその他のツールでも、コミュニケーションの基本は「挨拶」と「傾聴」です。相手に話しかけるときには、チャットでも挨拶を欠かさず、対応してもらった時には「ありがとうございます」の一言を忘れずに。また、大概のムッとする一言は「文脈・本心の読み間違い」から端を発しています。反射的に感情をテキストにしてしまう前に、「やり取りした文を振り返ってみる」「相手の仕事量や状況が今どんな状態なのかを聞いてみる」など「今のやり取り以外の情報」に目を向けてみましょう。
文章がしっかりと理解されているのかがわからない時には、本人に「どう思われましたか? 」「私は××と思ったのですが、この部分についていかがですか」など、直接考えを確認するのが手っ取り早く、良い解決策になります。
生じてしまった感情のズレに対して、テキスト上で「自分の思いを伝えよう!」と一生懸命取り組む行動は、マイナスの結果につながることが多いです。冷静にやり取りをしても問題が大きくなってしまう時には、テキストのみのやり取りにこだわるよりも、電話やオンライン会議といった「よりその人の言動が直接見えるツール」に切り変える方がトラブルを避けられるでしょう。
慣れている方には「こんなの当たり前だよ」と思うことでも、慣れていない人とコミュニケーションを行う時には、想定外のトラブルがあるもの。特にオンラインでのやり取りは、個人個人の「当たり前」の差が大きく影響します。「言わなくてもわかる」部分こそ言葉にするよう、心がけていきたいものですね。
本記事は、「マイナビニュース ワーク&ライフ」連載の20~30代の若手一般社員の方々を対象にしたメンタルヘルスケアコンテンツ「ストレスに負けない働くオトナのメンタルケア」の記事を連動掲載しています。
初出:2019年09月26日 |