障害を持つ人は任意で障害者手帳を取得できます。
障害者手帳には障害の内容別に「身体障害者手帳」「精神障害者福祉保健手帳」「療育手帳」の3種類に分けられ、それぞれの手帳取得者はあらゆる福祉サービスが受けられます。
では、どんな疾患が障害者手帳の取得対象となり、具体的にどのような福祉サービスが受けられるのか。
障害を持つ人はもちろん、身の回りに障害者がいる人、また障害者雇用率の引き上げに伴い、事業の担当者も障害者手帳の制度について理解しておかなければいけません。
障害者雇用促進法 の改正に合わせて、これから注目度の高まる「障害者」。
今回は、障害者手帳の種類から対象疾患、障害者手帳を利用することによって受けられる福祉サービスについて解説していきます。
障害者手帳とは?
障害者手帳とは、障害があると認められる人に交付される手帳です。
障害者手帳の取得は任意で、障害が認められるからといって必ずしも手帳を取得しなければならないというものではありません。
とはいえ、障害者手帳を持っていれば、障害者であることが証明され、医療費の助成がおりるなどさまざまな福祉サービスが受けられます。また、企業に就職するときは障害者雇用枠で応募することができるのも特徴です。
一般採用ではなく特別な募集枠から応募できるため、就業の選択肢が広がります。
しかし、手帳を取得するためには医療機関の受診や申請を行うなどの手続きがあり、サービスを利用するためには手帳の提示が必要など「障害がある」ことを開示しなければならない面があります。
手帳を利用するかどうかは本人の意思に基づく自由選択なので、障害者手帳取得者でも一般採用枠で募集することも可能です。
障害者手帳の3つの種類
障害者手帳には以下3つの種類があります。
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
どの種類の手帳も申し込みは各都道府県で行いますが、それぞれ対象となる疾患に違いがあります。
ここからはそれぞれの障害者手帳の対象疾患や概要について解説していきます。
身体障害者手帳
身体障害者手帳の対象疾患は以下のとおりです。
【対象疾患】
- 視覚障害
- 聴覚又は平衡機能の障害
- 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
- 肢体不自由
- 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
- ぼうこう又は直腸の機能の障害
- 小腸の機能の障害
- ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
- 肝臓の機能の障害
身体障害者手帳を取得するためには、以上の対象の疾患があり、かつ一定以上その疾患が永続することが条件です。
身体障害者手帳を利用すれば、税金の減免や公共料金の割引などのサービスが受けられます。疾患の重い順に1級〜7級までの等級があり、等級によって所得税や住民税、自動車税などの控除額が異なります。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳の対象疾患は以下のとおりです。
【対象疾患】<精神疾患>
- 統合失調症
- うつ病
- てんかん
- そううつ病などの気分障害
- 高次脳機能障害
- 薬物やアルコールによる急性中毒又はその依存症
- 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠陥多動性障害等)
- その他の精神疾患(ストレス関連障害等)
【対象疾患】 <発達障害>
- 言語障害や学習障害など、広義の「発達障害」
精神障害者保健福祉手帳には1級〜3級の等級があります。
1級が認められているのは、精神障害によって常に誰かの援助がなければ生活が送れないと判断された状態です。
2級の手帳取得者には単純な仕事に従事する人もおり、3級となれば企業で一般就労を行なっている人もいます。
ただし、障害の内容は人それぞれで、ストレスを感じる・環境が合わないなど一人で解決できないことも少なくありません。環境によっては3級でも就労が難しいケースもありますので、雇用時には本人に合うかどうか、コーディネータなどを挟んで検討しましょう。
療育手帳
療育手帳の対象疾患は以下のとおりです。
【対象疾患】
- 「知的障害あり」と判定される場合
(児童相談所、知的障害者更生相談所で判定されます。)
主に子どもに対して発行される手帳で、知的障害のある人が療育や援護を一貫して受けられる制度です。
ただし療育手帳は他2種類の手帳とは異なり、法律で定められた制度ではないため、全国的に決まった基準がありません。
全国的には「療育手帳」とされていますが、たとえば東京や横浜では「愛の手帳」と名称がつけられているなど、各地方によって呼び名や手帳の色などが異なります。
さらに、手帳を利用して受けられるサービスや、取得基準なども各地方によって違いがあるので、具体的な内容は住んでいる地域に確認が必要です。
障害者手帳によって受けられるサービス
障害者手帳によって受けられるサービスはそれぞれ違い、共通のものから種類別のサービスがあります。
【共通で受けられるサービス】
- 一部直接税の減免
- 利子所得の非課税
- 健康保険適用時の医療費の助成
- 障害者求人への応募
- 生活保護の障害者加算
- NHK受信料の減額
- 博物館や映画館など公共施設の利用料の減免
など
【その他種類別サービス】
- 自動車税・自動車取得税・軽自動車税の減免(身体障害者と精神障害者共通)
- 高速道路など有料道路の料金割引(身体障害者と知的障害者共通)
- 車椅子や補聴器の補助金(身体障害者)
- 都営地下鉄の運賃割引(知的障害者)
など
このように各種障害者手帳を所持し、それを定時知ることによって、公共サービスの割引やサービス料金の優遇などが受けられます。
また、等級によってもサービスの程度が異なりますし、地方自治体によってもサービスに差があります。
そのため、障害者手帳によるサービス利用の際は、各地方自治体や施設、および交通事業者に確認することが必要です。
障害者の雇用義務
日本では障害者の雇用を守るために「障害者雇用促進法」が定められており、対象となる事業主は障害者を雇用する義務があります。
障害者を雇用する上で、具体的に以下3つのルールが定められています。
- 障害者雇用率制度
- 障害者雇用納付金制度
- 障害者の差別禁止および合理的配慮の提供義務
従業員が45.5人以上いる民間企業は、全従業員の2.2%は障害者を雇用しなくてはいけません。
この法定雇用率を満たしていない事業主は、不足1人につき毎月50,000円の障害者雇用納付金が徴収され、法定雇用率を達成している企業へ調整金・報奨金・助成金として支給されます。
法定雇用率を満たしている企業は、たとえば常用労働者100人超えの場合、超過した人数分月額27,000円が調整金が支払われます。
また事業主は人材募集や採用において、障害者と障害を持たない人へ分け隔てなく均等な機会を与えなければいけません。
賃金や教育訓練、福利厚生などの待遇においても、障害者に対して不当な差別的な扱いも禁止です。
このように、障害者手帳を取得している人は一般の人と同等の雇用機会が与えられており、働ける人は平等に働けるように決められています。
障害者手帳には以下3つの種類があり、それぞれ共通、および種類別の福祉サービスが受けられます。
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
一般的には公的機関の料金が割引になり、企業の採用も障害者枠として採用されます。
しかし、手帳の取得および利用は個人の自由で、「障害者ということを知られたくない」という人などは無理に取得や利用する必要はありません。
とはいえ、日本では障害者に対して手厚い支援を行なっており、それら福祉サービス受けるためには手帳の取得が必要です。
初出:2019年09月26日 |