「産業医の署名捺印」不要!健診・ストレスチェックの報告が簡単に:改めてチェック!ストレスチェック制度

健診・ストレスチェックの報告が簡単に!「産業医の署名捺印」が不要になりました。

労働者を雇用する企業に課せられた安全配慮義務、その中には一年に一度の健康診断やストレスチェックといった施策が含まれます。これらの「従業員の健康を守るための検査」は義務として定められているため、所定の様式を使用して労働貴軍監督署へ報告を行わなければなりません。

総務や人事の経験がある方であれば、報告を経験した・様式は目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

健康診断やストレスチェックの報告書にも実施者として対応した産業医の署名や記名押印が必須と定められていました。

2020年8月、担当者と産業医の悩みの種だったこの「記名押印」が不要となり電子・紙両方の申請が格段に楽になります。
 

報告様式が変更!
「産業医の押印」廃止で電子申請がより使いやすく

従来であれば健康診断・ストレスチェックの結果を労基署へ報告する際、従来の法律では「産業医の署名捺印」が必須項目でありました。

そのため、健康診断やストレスチェックの実施報告を作成する際に
・押印のために企業担当者が産業医や実施者と繰り返し書面のやり取りを行わなければならない
・産業医が電子署名に対応していない場合、一度印刷して押印署名し、またデータ化をしなければならない
・電子申請を利用する場合であっても、「電子署名」に対応できていない
……など産業医や担当者双方にかかる「電子化するための手間」がネックとなって電子申請の普及は遅れていました。
 

※電子署名……電子文書を本人が作成したとを証明する「本人証明」のシステム。取得のためには認証局へ申請を行わなければならない。


行政側からも押印の必要性の見直しやオンライン利用率の向上を求める動きの中で「産業医の電子署名の取得等が企業負担となって電子申請が進まない」といった意見を踏まえ、令和2年8月28日からじん肺法・労働安全衛生法規則の一部を改正し、産業医による押印等が「不要」となりました。

厚生労働省においても様式を自動で記入できるサイトを公開し、ペーパーレス申請・書類様式の電子化を推奨・奨励するなど電子化の方針を進めています。
 

対象は健康診断・ストレスチェック
担当者ベースでの申請が可能に

押印等が不要になる対象は、企業が行う義務のある全ての健康診断とストレスチェックの個人票や結果報告書です。

同様に、
・じん肺法や労働安全衛生法などに基づく各種健康診断やストレスチェックを実施した場合の健康診断個人票
・労働基準監督署長などに提出しなければならない定期健康診断結果報告書

などについても「医師・歯科医師の押印、電子署名」が不要になり、氏名や意見欄の記入も担当者の代筆・印刷での対応が可能になります。

押印の必要性を示す印マークの削除された様式は、厚生労働省HPまたは 労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス をご利用ください。

移行措置として、旧式の様式も当面の間使用・受理が可能です。
また、改正以前に実施された健康診断やストレスチェックも改正以降に申請する場合、報告書の作成・提出は新法令に沿って対応されます。

この改正の大きなポイントは「産業医の氏名を担当者サイドで記入してもよい」とされた点です。

医師からの意見やアドバイス等も担当者による代理記入が可能になりますので、これまで何度も書類のやり取りをしていた部分が「産業医とオンラインで確認し、パソコンで報告書を作成・提出」というワンステップで完結します。
 

 

「産業医の氏名」は継続して必要
【 変わらない点 】に注意を

今回の法改正はあくまでも「報告書の提出を簡便にする」ためのものです。

新様式に変更され産業医の押印署名が不必要となっても、健康診断やストレスチェックにかかる企業の義務や責任については変更がないことに注意が必要です。
 

担当者が記入できても、「産業医の確認」は必須
診断・面接の実施はしよう

この改正は「産業医などの押印を不要にしただけ」であり、報告書の提出様式が変更となったに過ぎません。

「産業医との面接」や「資格者による結果の確認」などは引き続き義務の一部として実施しなければなりません。

企業側の安全配慮義務や産業医といった産業保健との連携の必要性などはまったく変わらず、「検査の実施」「健康状況の把握」「高健康リスク者を医療へつなぐ」といった企業の担う責務や責任は今後ともしっかりと行っていくべきこととなります。

定期的な検診やストレスチェックの実施はもちろん、業種や勤務形態の内容によって定められる特殊な健康診断の実施や健診結果の確認がきちんと行われるように取り計らうことも企業の責任です。

また、高ストレス者など産業医面接の実施や勧奨、集団分析などは引き続き企業が実施すべき対応となります。

安全配慮義務としても、きちんと専門家の意見や医師の確認をとり職場改善に取り組んでいきましょう。
 

産業医紹介のオプションサービス、あります。

産業医紹介 や、医師面接代行実施者代行 など、まずはご相談ください

 

署名は不要だけど、「氏名の明記」は必要です
報告内容の確認は労基の指導ベースに

従来必要とされていた押印・署名・電子署名は不要となりましたが、実施した産業医や担当した医師・歯科医師などの「氏名の記載」は継続して必要になります。

「担当者による記入」が可能になったとはいえ、詳細の情報や確認はおろそかにしないよう気を付けて作成にあたりましょう。

また、押印・自筆の署名によって確認を行っていた「報告内容の確認、証明」「産業医への情報提供状況」等は今後労基署の指導をベースに各個別の対応が行われることでしょう。

担当される労基署によって対応が異なると予測されますが、今以上にきちんと「企業が実施状況を把握している」状態が求められると考えられます。
 


電子での報告は、時間や担当者の手間を大幅に削減するとともに、重要な情報の確認・活用をスムーズにします。

結果の管理保管や参照・比較も簡単になるため、今後さらに「電子化」を選択する企業の増加が見込まれます。

これを機に、職場改善のひとつとして「申請や書類の電子化」に注目してみてはいかがでしょうか。
 

 

〔参考文献・関連リンク〕

厚生労働省:健康診断、ストレスチェックに関する健康診断の個人票及び定期健康診断結果報告書等について、医師、歯科医師、産業医の押印が不要となりました。(令和2年8月28日施行)
厚生労働省:リーフレット(健康診断個人票や定期健康診断結果報告書等について、医師等の押印等が不要となります。)
厚生労働省:労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス
厚生労働省:「じん肺法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」の諮問と答申
 

初出:2020年9月29日



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