改めてチェック!ストレスチェック制度:法定義務のストレスチェック、できないときの罰則は?

ストレスチェックの未実施や、実施報告を怠った時の罰則は?罰金や社名公開も。

近年、メンタルヘルスの問題を抱える従業員は増加傾向にあり、会社としても対策が必要な課題の1つです。

従業員がメンタルヘルス不調に陥るのを防ぐために 「職場環境の改善」「日頃から従業員の健康状態を把握する」といった職場ごとの対策のみならず、従業員自身が自らストレスに気づく機会をつくることも重要です。

従業員の精神的な健康状態を知るひとつの方法が、ストレスチェックです。
この記事ではストレスチェックについて、実施において定められている実施期限、もし実施しなかった場合の罰則について説明します。
 

ストレスチェックの実施は法律で決められている 

年1回のストレスチェックの実施は、労働安全衛生法の改正により、2015年12月1日から事業者の義務となりました。ストレスチェック調査で調べられるのは、以下の3点から見た労働者の精神状態です。

  • 仕事内容や量を自分でコントロールできるか、業務内容との相性など
    仕事に対する心理的・身体的な負担に関すること
  • 「疲れている」「よく眠れない」など心身の症状に関すること
  • 家族に相談ができるか・上司や同僚は困った時頼りにできるかなど、
    周囲からのサポートに関すること

ストレスチェックを実施できる人は、医師や保健師等と労働安全衛生法で決められています。また、人事についての決定権のある人や判断する権利のある人は、その影響力を考慮してストレスチェックの事務をすることはできません。
 

ストレスチェックの実施期限は前回の実施から1年以内

ストレスチェックは前回の実施日より1年以内に実施しなければなりません。
(法改正が施行された当時は、経過措置として、「2016年11月30日までに実施」と猶予期間が設けられていました。)

実施期限が1年と決められていますが、「前回実施した日から1年に1回」というような厳密なものではなく、実施した日から1年以内の間ならいつでも行うことができます。
下記の当社コラム「ストレスチェックに実施期限があるのはご存知ですか?」にて解説をしていますので、ご参照ください。


 

ストレスチェックを「実施しやすい」「人がそろう」時期に調整を

ストレスチェックの正確性を求めるなら、前回と同じ条件で実施することをお勧めしますが、
「最初は法改正に合わせて急いで実施したが、秋冬は繁忙期でストレスチェックをしていられない……」
「採用時期がずれているため、入社後すぐにストレスチェックのタイミングが来る」
といった悩みを抱える企業なら、「半年などスパンを多少縮めて実施する」「年度内で複数回実施する」など、毎年のストレスチェックの時期を調整してみてはいかがでしょうか。

ストレスチェックは体調や仕事の心理的な負担に関する調査内容があるため、実施した時期の忙しさや環境によって、平時より悪い結果が出たりする可能性があります。
繁忙期は多くの人にとって、普段よりもメンタルヘルスにかかる負荷が大きくなるのは当然ですので、日ごろからハラスメントや悩みを抱える人がいることに気づく手がかりや、組織にとって本当に必要な対策を検討する際に支障が出てしまう可能性もあり得ます。

ストレスチェックは従業員の健康管理のために行っていること。従業員が自身の心身の健康と向き合えない時期は避けるのも一手です。
 

ストレスチェックを期限までに実施しなかった場合、どうなるの?

ストレスチェックは1年以内に実施しなければなりませんが、できなかった場合はどうなるのでしょうか。
労働基準監督署の対応や、罰則が科せられるなど何かペナルティはあるのでしょうか?
 

労基署から「お知らせ」が!注意や勧告の対象にも

期限までに実施ができない場合、労働基準監督署から注意・勧告が行われる場合があります。

従業員数が50人を超える企業は、同じく義務となっている「健康診断の結果報告」と合わせて、ストレスチェックの実施結果の報告も労働基準監督署に行うとスムーズでしょう。

パワハラ防止法の兼ね合いもあり、厚生労働省としてもメンタルヘルス政策推進の一端として「ストレスチェックの実施徹底」に力を入れ始めています。当社のお客様の中からも「労基署からお知らせが送られてきた!」というお話がちらほら……。所轄の労働基準監督署ごとに対応が異なるとはいえ、報告・実施が遅れることは避けたいですね。
 

報告を怠れば罰金、社名の公開も

労働安全衛生法では「労働基準監督署への報告を怠ったり虚偽の報告をしたりすると、50万円以下の罰金」と決められています。

第一二〇条
次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
五  第百条第一項又は第三項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は出頭しなかつた者

労働安全衛生法 
 

これはストレスチェックをしなかったこと自体の罰則ではなく、労働基準監督署への報告をしていないことに対する罰則です。
もし前回の実施より1年以上間が開いてしまった場合は、まずはできるだけ速やかに実施することが重要です。

その際は、労働基準監督署へ実施ができなかった旨とその事情を説明し、速やかに実施・報告をしてください。
勧告後も意図的にストレスチェックを行わない場合は上記の罰則の対象となります。

ストレスチェックの報告時期についてですが、「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」 では明確な期限は設定されていません。
事業所ごとに設定することができますので、各年度の終了後など対応しやすい時期に定期的に行いましょう。
 

遅れてしまったら、まず労基署へ相談を

もし産業医の選定が間に合わない・実施の計画をしているといった理由があって労働基準監督署への報告が遅れている場合は、お近くの労働基準監督署に直接相談をしてください。

労働基準監督署によって対応が異なるため、それぞれ確認する必要があります。
ストレスチェックを実施しなかった場合、労働安全衛生法だけでなく、労働契約法の安全配慮義務に違反するおそれもあります。
従業員の心身の健康のためにもストレスチェックは忘れずに実施しましょう。

なお、従業員50人未満の事業所においてストレスチェックの実施は努力義務です。
努力義務なので絶対に行わなくてはいけないわけではありませんが、これからの従業員の健康を考えて導入を検討してみてはいかがでしょうか。
 


今回はストレスチェックの実施において決められていることや実施期限、実施しなかった場合の罰則について紹介しました。

ストレスチェックはメンタルヘルスの不調を事前に防ぐという、一次予防の意味があります。
従業員が働きやすい環境を作ることは長期的に見れば会社全体の業務の効率化にもつながりますので、ストレスチェックを忘れずに実施しましょう。

 

〔 参考文献・関連リンク 〕

初出:2019年8月27日 / 編集:2023年4月12日

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