「ピープルアナリティクス」とは?これからの人事は分析から始めよう。

少子高齢化にともなって労働人口が減少し、さらに従業員の多様化や働き方の多様化が進み、企業にとって正しい人材活用が大きな課題となっています。優秀な人材を採用して離職率を下げたり、また優秀な人材を育成したりなどによる企業成長が必要です。
ですが、自社に合った人材の採用や人事、育成といった重要な戦略部分の決定はいまでもかなりの企業が「フィーリング・経験則」や「経歴などのプロフィール」といった旧式の情報に頼っているようです。

より正確で、成果の出せる意思決定が求められる今、注目を集めているのが「ピープルアナリティクス」です。 「ピープルアナリティクス」 は、従業員のデータを正しく収集・分析して判断材料を集める、人材マネジメントの質を高める新たな意思決定のあり方です。
経験や主観に頼らない、データから客観的に行われる意思決定は公平性や理解を得られやすく説明も容易です。移動や人材の入れ替わりのある企業では、 担当者によるブレがなくなるため、明確な判断基準を設けることができます。

今回は、ピープルアナリティクスの概要やメリット・デメリット、活用事例について紹介していきます。
 

人材は「代えがきかない」時代

近年ピープルアナリティクスが注目されているのは、労働人口の問題が原因とされています。

少子高齢化によって就労が可能な能力を持つとされる15歳以上の人口、特に 生産活動の中核となる生産年齢人口(15歳から64歳の人口) に当たる成人は年々減少の傾向を見せています。また、それに伴いGDP( 国内総生産 )の成長率も鈍化し、社会保障費の増大・税収の低迷といった日本の抱える問題は深刻化していくこととみられています。

そのような中では現在働いているノウハウを持った従業員の重要性は高まり、いまや「なるべく長く・健康的に」働いてもらうための施策は欠かせなくなっています。また現在主力を担っている団塊・団塊Jr世代が高齢化する今「後継者」となる新規人材の獲得と教育は喫緊の問題と言われ対策を急いでいる企業も多いのではないでしょうか。
人材を獲得するのにも、また獲得した人材を教育するのにも大きなコストが必要となります。せっかく人材を教育しても人材配置に失敗すれば、離職のリスクのほか企業の利益が低下する可能性も少なくありません。

人材に関する問題の頻発している昨今、質の高い人材マネジメントが多くの企業における課題となっています。
そこで、緻密に分析して人材マネジメントの質を向上させる、ピープルアナリティクスが注目されいているのです。
 

「今あるデータ」でも分析・活用できる!

ピープルアナリティクスとは、さまざまなデータを収集・分析することによって、人材に採用や配置をはじめとした企業の人材マネジメントを効率化させることをいいます。人材活用に関わるデータを活用して、企業におけるそれぞれの問題を解決し、最終的には企業の利益を上げることを目的として利用されています。
ピープルアナリティクスを行うことによって、人材採用や人材配置および人材育成の効率と質が向上します。
 

  • 自社と相性の良い人材の採用
  • 優秀な人材の採用
  • 社内における優秀な人材の発見
  • 優秀な人材に共通する行動特性を把握・共有
  • 各従業員を適切に評価      など


たとえば、社内に埋もれている優秀な人材を見つけて適切に評価すれば、優秀な人材の離職を回避できるでしょう。また、優秀な人材に共通する行動特性を把握して、各従業員に共有することによって人材の育成も可能です。
現在自社で活躍している方の共通項や評価履歴を見ることで、「これからのエース」を雇用時に見つけ出すことも可能です。

ピープルアナリティクスによる人材マネジメントの品質向上は、結果的に企業の利益上昇が期待できます。
 

取り扱いが可能なデータの種類

ピープルアナリティクスで一般的に取り扱われるデータとは、どんなものがあるのでしょう。
  

  • 基本データ
    性別や年齢をはじめとした、個人情報にまつわる基本的なデータ
  • 能力データ
    各人の持つタレント・スキル、業務によって身につく能力のデータ
  • 行動データ
    成果やその人の提案、希望などどのように行動するかのデータ

そのほか、能力データとしてIQや資格などの各種試験結果が、行動データとして会話や勤怠管理、また位置情報などのデータが用いられます。

データ分析というと千万を超えるビッグデータが必要だと思われますが、 ピープルアナリティクスの実施は自社内で獲得できるデータだけで十分です。ピープルアナリティクスを成功させるには、情報量よりも「情報を適材適所に利用する事」が大切です。求めている回答につながらない余計なデータを取り扱えば適切な結果が得られない可能性があります。

そのため、「必要なデータが何か」「効果を出すために必要な情報は何か」を考える必要があります。
 

ピープルアナリティクスの実施には知識が必要

ピープルアナリティクスを的確に活用するためには、「従業員のどんな行動・要素が成果につながるか」についての知識が欠かせません。
 

  • 行動科学・心理・経済に関連する知識
  • 統計学、分析についての知識
  • テクノロジーや社内のシステムについてのリサーチ

モチベーションアップやデータの的確な分析を行うためには専門的な知識が求められるでしょう。また、データの取得や分析を自動化することでより効率的でさせることが可能です。
必要なデータの収集や結果の分析、施策の実行において、 それぞれの知識を有した人材のチームをづくりを行いましょう。
 

分析するメリットと必要なセッティング

ピープルアナリティクスには以下のようなメリットと、必要になるセッティングがあります。
 

メリット

  • 根拠のある意思決定ができる
  • 分析と施策実施のスピードが向上する
  • 社員の説得材料になる

必要な事前セッティング

  • データ分析を行える人材が必要
  • プライバシー情報の取り扱い方法やその保守に関して充分な説明が必須
  • データの集計や分析で満足する可能性がある


ピープルアナリティクスの活用ではデータを用いた根拠のある分析結果が得られるので、意思決定に説得力が増します。また、明確な分析結果であれば迷いなく施策を進められるため、人材マネジメントの施策実施までのスピードにもつながります。
人材マネジメントにおける意思決定は担当する方の経験にもとづいて行われるのが通常ですが、その大きな欠点は個人的な主観や価値観を含めてしまうことです。個人的な価値観などが意思決定に含まれると、誤った判断を行う可能性が高まります。データに基づいた評価や決定ならば客観性も保証されるので、決定後の検証やフィードバックの正確さも向上します。評価を受ける際にも納得して受け止めやすくなります。

ピープルアナリティクスの正確な実施には、データ分析を行える人材が必要です。正しいデータの収集や分析が難しく、従業員のプライバシーの補償などをきちんと説明して、データ収集の目的と使い道を透明にして従業員の不信感を取り除かなければいけません。
データの集計や分析に労力がかかってしまうと、「実施して満足」してしまう可能性もあります。正しい評価や決定につなげるためにも、きちんとした分析計画を用意したいところです。
 

Googleが行ったピープルアナリティクス

ピープルアナリティクスはさまざまな企業で活用されていますが、中でもGoogleは世界で初めて「ピープルアナリティクス」としてデータ分析に基づく人事評価を行ったとされています。
その後世界のIT企業を中心に広がりはじめた 「ピープルアナリティクス」 の先駆けとして、Googleが行った分析では以下の発見がありました。
 

Googleがピープルアナリティスクでは……

  • 「心理的安全性」の発見
  • オフィスの配置
  • 採用面接の効率化   などに、意思決定に関する要素が見つかりました。


Googleは既存のリサーチデータを分析し、企業が成功するための要因として人材に必要なのは「心理的安全性」や「相互信頼」「構造と明確さ」など全5つの因子が必要だと特定しました。
また、従業員がオフィス内の好きな場所で働く形式から、各チームごとに集まって働く形式に変えたことによって業務の効率化・生産性の向上を実現しました。
 


ピープルアナリティクスは、人材マネジメントの質を高める方法です。

性別や年齢などの基本的データから、勤怠管理の行動データなどあらゆるデータを集め、それらを分析することによって、人材マネジメントにおける正しい意思決定が可能となります。
労働人口の減少が進む現代日本では、質の高い人材マネジメントが求められているため、ピープルアナリティクスの活用は大きな効果が期待できます。
自社にある既存のデータを正しく活用し、ピープルアナリティクスで企業成長につなげましょう。
 

初出:2020年1月15日

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