業務を行っていく上で、一緒に仕事をする上司・部下・同僚とのコミュニケーションは重要です。良い関係性を構築できたチームは連携や仲間のモチベーションを高め、ひいては仕事の効率アップにもつながります。
そのためにも「普段のコミュニケーションから良い関係を築いていきたい!」と考える方も多いはず。特に部下や後輩をもつ立場にある方は、世代や価値観の違いや付き合い方に悩まれることもあるでしょう。
自分のコミュニケーション方法が相手を傷付けていないか、ちょっと立ち止まって振り返ってみましょう。
職場あるある……になってませんか?
ギャップを感じる【シーン】をチェック!
CHECK ①
励まそう・元気づけたい!も方法をよく考えて
関係性で異なる距離感があります
何だか調子が悪そうだったり、ちょっとした失敗をして落ち込んでいる部下がいる。大事なスタッフだからなんとか元気を出してほしい・気合いを入れてほしいと思い、励ますことにした。
就業前に肩を叩いて「がんばれ!」と気合を入れ、「どうした、らしくないじゃないか。彼女となんかあったのか?」と気さくに話しかけた……
上記のような場面は、様々な組織でよく見られる光景かもしれません。ですが、このような「よくある場面」にも、ハラスメントの芽が隠れています。
新入社員であったり、指導される立場にあるメンバーにとって、励ましの言葉が「自分ではがんばっているつもりなのに……」「成果を求められているのではないだろうか」とプレッシャーを感じることがあります。
職場外の事情を気にする発言も、「親切に生活面まで気にしてくれる!」とポジティブに受け止める方もいれば、「プライベートを詮索された」とネガティブにとらえる方もいます。
また、肩を叩くなど親しみを表現するためのボディタッチやいわゆる「気合い入れ」も、人によって感じ方に大きな差がある行為です。
不快だな、やめてほしいと思っていても、とっさのことで口に出せない・職場では言い出しにくいという声もありますので、職場では「触れる」という行為は避けた方がいいでしょう。
うれしく感じる声のかけ方は千種万別です。
誰にでも同じ声掛けをするよりも、声をかける人との関連性でその方法を変えた方がいいでしょう。
特に圧を感じやすい立場にいるスタッフには、「事前のがんばれ!」よりも「事後のがんばったね!」のほうがプレッシャーを感じずに励ましの言葉として受け取ってもらいやすいです。
「がんばっているね」と経過を評価するのも一手です。
調子や具合が悪そうなときは、本人も「素直に受け取る力」が弱っています。
事情を知って力になってあげたくても、ぐっとこらえて
・「どうしたの?」と心配していることを伝える
・「病院には相談した?」と医療やケアへつながることを勧める
と自分から話してくれるまで待つ姿勢を示しましょう。
CHECK ②
あだ名や呼びかけ方にも注意
ビジネスマナーを守ろう
新しく部に入ってきたスタッフと早く親しくなりたい、馴染ませてあげたい……
職場のスタッフは、チームとして働く・一緒の職場で過ごす「仲間」です。
新入社員や転勤・配置変更で新しく加わったメンバーに対して、積極的に働きかけて迎え入れてあげたいと思う気持ちは、ひとつのあたたかな「おもいやり・配慮」かもしれません。
ですが、「その人の特徴からあだ名をつける」「下の名前で呼ぶ」というのは、ちょっと考えものです。
子供の頃、嫌なあだ名をつけられて悩んだ経験はありませんか?
その人の特徴をあだ名にすると、本人にとって苦痛を感じることがあります。あだ名や下の名前で呼ぶことは、かなり親しい人でないと呼ばれる側が違和感を感じますし、ビジネスの場としてふさわしくないこともあるでしょう。あまりにいきなり親しくされれば、「軽んじられているのではないか」と感じることも。
勤務時間や就業環境での呼びかけは「苗字+さん」がビジネスマナーとしても適しています。
また、あだ名でなく、きちんと「さん付け」で呼ぶと喧嘩や言い争いなどのヒートアップを抑えることができます。
関係性や親密さの表れとして呼び方が変わることはありますが、その逆、呼び方を変えることで親密になることはほぼないと思ってください。
普段の会話や挨拶、コミュニケーションを重ね一歩ずつ絆を築いていきましょう。
CHECK③
配慮や思いやりも時にハラスメント
「してあげたい」と思うこともまずは本人に確認を
「うちの課唯一の女子社員だから、男だらけの飲み会はつまらないんじゃないのか。声をかけないでおこう」
「○○さんが妊娠した。身重の体で長時間の移動は辛かろう、出張や業務量を調整しておこう」
「××さん、小柄だから重いものは持たせられないな」……
体の具合やその人の事情に合わせて業務を調節することは、部下を預かる立場として行うべき「仕事」です。一緒に働くメンバーとしても、その人の生活や体調を慮って互いに思いやることでスムーズに業務が回ります。
ですが、その配慮は「本人が望んだ」ものですか?
一人だけ飲み会に誘われないことは、「仲間外れにされたのかも……」と不安にするかもしれません。
妊娠しても体調がよく、これまで通りバリバリ働きたい方もいるでしょう。
体格の良い方でも細かい作業が得意であったり、小柄でも力があって体を動かす作業の効率が良かったり……
見た目での判断や、型どおりの配慮では力が発揮できないスタッフもいます。
「配慮をしよう」「活躍できる場にしよう」という心は何よりも強い職場環境改善の原動力、それを「ハラスメント」にしないためには本人との話し合い・意思確認が重要になります。
特に妊娠や体調、健康に関わる事で配慮を行う場合はより注意が必要です。
本人の「働きたい」という意思、身体の具合・状態、可能な業務上の配慮の選択肢を総合的にみて対応を考えなければなりません。医師の意見・診断・検査の結果をきちんと本人・企業双方が把握し、その上で「どういう対応をしてほしいか・できるか」考えましょう。
「○○だから」「××だから」とステレオタイプで判断せずに、本人と向かい合って言葉を交わすことが、配慮の「はじめの一歩」です。
ハラスメントのほとんどが、「双方の関係性の捉え方に差があった」ことから生じています。
「親しいと思っていたのに」「これくらい普通」と思う気持ちが、知らないうちに相手の負担になってしまっている……というケースがとても多いです。
大事なのは、もし距離感を計り間違ってしまっても、「嫌だと言われたことはやめる」ことです。
その人との関係性やその人が望んでいるか、就業の範囲を超えていないかを客観的に見る・間違っていたら注意できる視点を育てていきましょう。
初出:2020年12月09日 |