5月25日に5都道県の緊急事態宣言が解除されたものの、「新型コロナウイルスの流行が落ち着いた」と断言できないもどかしい状況は続いています。
経済活動の本格的な再開とともに、「Withコロナ時代」や「ニューノーマル」とされる新たな生活様式を各業界・各社で手探りする状態が当面続くものと思われます。また、時節がら、猛暑対策も並行して行っていく必要があるといえるでしょう。
経済活動の維持や従業員の安全と健康を守る上で、Withコロナ時代の「感染症とともに生きていく」生活様式や対策の継続は欠かせません。また、日本特有の気候を踏まえた対策には、専門的な指針やこれまでのデータを踏まえた対策も重要です。
今回は、厚生労働省が発表した新型コロナウイルス感染拡大防止ガイドラインを踏まえた、一人一人ができる「新しい生活様式」について解説します。
新型コロナウイルス感染拡大防止の「新生活様式」とは
「感染しても無症状の人が多い」のは新型コロナウイルスに限った話ではありませんが、大きな問題として挙げられるのが、現状においては「職場や店舗利用者で感染が広がった場合、 事業活動や店舗営業が停止する可能性がある」こと。さらには肺疾患などの持病や免疫力低下などで急速に重篤化する危険性があり、意図せずに感染を広げて「他者の命の安全を脅かすことにつながる」という恐れがあります。
そのために一番力を入れたいのが、「日頃からの感染拡大防止に向けた取り組み」の徹底です。
厚生労働省が発表した日常生活において取り組むべき「熱中症予防」と「コロナ感染防止」を具体化した「新しい生活様式」をもとに、職場で周知するべき“職場・家庭で実施する熱中症予防×コロナ感染防止策”について見ていきましょう。
「新しい生活様式」の実践に向けた4つのポイント
厚生労働省が掲げる「新しい生活様式」の実践例は大きく分けて4種類となります。
- 一人ひとりの基本的感染対策
- 日常生活を営む上での基本的生活様式
- 日常生活の各場面別の生活様式
- 働き方の新しいスタイル
経済活動が再開される中で避けられない出勤や、学校・職場への集合、高齢者や乳幼児・妊婦への接触……
これからは感染の第2波・第3波を抑えるための「長期的に、生活しながら予防する」ことが大切です。
まずは「一人ひとりの基本的な感染対策」の徹底、そしてこれから戻ってくる日常に向けて、「 働き方の新しいスタイル 」を取り入れていきましょう
基本的な感染対策は、「距離・マスク・手洗い」
まずは社員の生活に感染予防の知識を
感染対策に最も有効なことは、「一人ひとりが基本的な感染対策を行う」ことです。感染対策の原則は次の3つとなります。
- 身体的距離の確保
・人との間隔をできるだけ、2m以上空ける
・真正面で人と会話、食事をしない - マスクの着用
・十分な間隔が取れない時は、症状がなくてもマスクを着用する
・屋内でも複数が発声を行うような場所では、マスクは外さない - 手洗い
・帰宅後、まず手や顔を洗う、うがいをする
・手洗いは水と石けんで30秒以上時間をかけて丁寧に洗う
・人混みの多い場所に行ったら、できるだけシャワーを浴びてすぐに着替える
といったことが挙げられています。
これらにプラスして企業として従業員に周知したいのは、「地域間の移動に関する注意」です。
「感染状況に注意して、地域間の移動は避ける」ことは変わらず順守すべきですが、経済活動が活発になるにつれ、県境をまたぐ長距離の出張・旅行・レジャーの増加が想定されます。
他地域に持ち込まない・持ち込ませないために、まずは以下のポイントの周知を行い、業務での移動を命令する際にはきっちりと守らせるようにしましょう。
- どこで誰と会ったかメモしておくこと(接触確認アプリの活用)
- 電車やバスといった移動中にはなるべく発声を慎む
- 公共機関の乗車中はマスクや手袋の使用を継続する
また、職場の感染予防は、何をおいても従業員の健康から。
「基本的な感染対策」に加え、日常生活を営む上で「これからの基本」とすべき生活様式について下記が挙げられています。
- こまめな換気、手洗い・手指消毒、咳エチケットの徹底
- 3密の回避、フィジカル&ソーシャルディスタンスを保つこと
- 毎朝の体温測定、体調の管理
- 三食食べる、睡眠をとる、軽い運動をする等健康的な生活の順守
- 発熱や風邪の症状がある場合には、自宅療養
基本的にはこれまで推奨されてきた「三密」(換気の悪い密閉空間、 多くの人が密集する場所、 密接場面での会話・発声・飲食 )を避け、手洗いうがいを継続して行うことが主体となります。消毒薬を併用した「物理的な洗浄」は第一の感染対策、習慣として定着するよう奨励しましょう。
「三密」回避の有効性はWHOからも認められ、全世界に知られるようになりました。 WHOは7月18日、フェイスブックページで「三密」の英訳から頭文字をとった 「3つのCを避けよう(Avoid the Three Cs)」と題したメッセージを画像とともに発信し、 さらなる感染拡大の防止を呼びかけています。
通勤時間は要注意!継続的な「距離の確保」を
日常が戻ってくるにつれ、テレワークやオンライン授業の解除・通勤通学が再開された方も多いと思われます。通勤などで大勢が公共交通機関を同時に利用する状況が再開される事はかなりのリスクといえるでしょう。
企業であれば自社内でのクラスター感染は避けたいもの、通勤時間をずらす「オフピーク通勤」・テレワークの継続などが「緊急対応」ではなく「普通に、選べる」制度となるよう普及に今後も努めていくよう求められる時代になったといえます。
テレワーク体制が解除され、オフィスへの出勤・公共交通機関を利用する従業員へは、まず以下の3点を周知しましょう。
- 徒歩や自転車の利用を検討する
- なるべく混んでいる時間帯を避けること
- 会話を控えめにすること
厚生労働省や経団連などでは、「働き方の新しいスタイル」として職場での “空間を開ける” ための方法を以下のように提案しています。
~働き方の新しいスタイル~
・テレワークやローテーションワークの推進
・時差通勤を行う
・オフィスでも物理的距離を空ける
・会議はオンラインで行う
・対面で打ち合わせをしなければならないときには、マスクをし、部屋を換気する
この他にも、厚生労働省や経団連から感染症予防についての対策案が発表されています。家庭はもちろん職場にもウイルスを持ち込まないために、徹底するべきことや接触機会を減らすなど対策するべき点は多いのではないでしょうか?
新型コロナウイルス感染防止(マスクの着用)と熱中症予防について
感染の拡大防止に欠かせないマスクやフェイスガード。
くしゃみや咳、発声などで起こる飛沫の飛散防止に有効で、外出の際はなるべく装着するよう推奨されています。業種・職種によっては、「オフィス内でも常時マスクを直用する」などの感染対策をとられているところもあるでしょう。
ですが、マスクによって口や鼻が覆われていると、呼吸器や身体活動に負担がかかることが研究によって報告されています。
特に不織布やガーゼを口元に当てる(マスクをつけた状態にする)ことは、体感温度が上昇する・喉の渇きを覚えにくくなるなど 脱水・体温調節がしづらくなり 「熱中症」を重症化させる要因になります。
総務省消防庁の報告によると、気温・湿度の高くなった2020年6月第4週だけで、 前年同期比約1.6倍の1,651人が熱中症で救急搬送されました。
このように急激に熱中症の患者が増加した背景には、
・運動、外出の機会が少なくなったことによって例年より体力・体調が暑さに慣れにくい
・換気をするために、屋内でも暑い外気を取り入れエアコンなどの空調機を使用しない 状況が増えた
という要因に加えて「マスクの着用」があるのではないか、と予想されています。
熱中症予防にプラスして「マスクを外せる」環境を
この夏の熱中症対策は、例年より注意が必要になります。屋外作業従事者のいる企業に限らず、これまで取られてきた対策に以下のような「プラス」を検討してみてはいかがでしょうか。
☆涼しい服装、日光を遮る帽子などの服装を推奨
クールビズなどの過ごしやすい服装での出勤を。
☆定時的な水分摂取・小まめな休憩の奨励に加えて、「塩分の補給」を周知。
従事者が手に取りやすいよう、休憩場所などに常備することが望ましいです。
☆屋外活動時は、定期的に体調の確認を行う
あわせて体調不良時に休める涼しい場所の確保、準備運動などで体を慣らす時間を設けましょう。
☆換気を行っていても、 エアコンなどで室内温度を調整する
エアコンの吹き出し口にファンをつけるなど、効率的に温度を下げる工夫が効果的。
厚生労働省は屋外・ 人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できるといった条件を満たした時には、なるべくマスクを外して外気で呼吸をしましょうと推奨しています。
また、マスクを着用しているときには以下の3ポイントを守り、こまめに・日頃から注意することが大事になります。
- マスクを着けたままでの、激しい運動や長時間の外出を避ける
- 喉が渇いていなくても、定期的にこまめな水分補給
- 気温・湿度・天候に気を付け、予定や行動の管理をする
- 決まった時間に体温や体調を記録し、自分の健康状態を確認する
熱中症の注意すべき点は、「頭痛」「発熱」「 倦怠感 」「苦しさ」といった熱中症の症状が、新型コロナウイルスの発症状態と似通っている点です。 呼吸器関連の持病がある方がもし熱中症になった場合、より一層区別は難しく複雑な検査や対応が必要になります。
医療機関や本人の身体にいらない負荷をかけさせない、適切な対応を素早く行ってもらうためにも熱中症の対策は早めに、小まめに行っていきましょう。
最初に述べた通り、また新型コロナウイルスは人によって症状の差が大きく、感染しても無症状であったり、軽い風邪のような症状であったりすることもあります。そのため、クラスター感染を防ぐためにはそのような「軽症状の方」をまず休ませ、感染源としない・症状が軽いうちに治してもらうことが重要です。
少し微熱が出た時、職場ではどのような対応が求められていますか?
企業の対応としても、体調不良を訴えた従業員を就業させることは何よりのリスクです。そもそも、そのような状態で業務を続けることは、ミスの増加や効率の悪化=プレゼンティズムの低下が起こり、業務上の損失につながる場合もあるでしょう。
また、感染へ不安や、仕事や生活の変化からストレスを感じている人は少なくありません。従業員のメンタルヘルスケアにはこれまで以上の配慮が必要です。
1年に1回と義務付けらているストレスチェックについても、セルフチェックやセルフケアを励行することで、メンタル不調者を早めに発見することができますので是非検討してみてください。
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〔参考文献・関連リンク〕
- 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について 新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」の実践例を公表しました
- WHO:Avoid the Three Cs(Facebookページ)
- 日本経済団体連合会:オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン
- 日本精神神経学会 精神保健に関する委員会 産業保健グループ:「新型コロナウイルス感染症:働く人のメンタルヘルスケアや産業保健体制に関する提言」
初出:2020年07月21日 |