当記事は、2022年11月7日~11日に開催したセミナーイベント「組織改善Weekオンライン」2日目、11月8日の堤明純氏オンラインセミナー「職場のストレス対策と職場環境改善」を書き起こしたアーカイブレポートです。
当アーカイブは、該当セミナーを全4回に分けてご案内する第1回となります。
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堤明純氏オンラインセミナー「職場のストレス対策と職場環境改善」アーカイブレポート » 第2回
「ストレスチェックなんて、やる意味あるの?」と、従業員のみならず、経営者や人事・労務ご担当者からもご質問いただくことがあります。
この質問に対する当社の見解は「やる意味はあります」です。
更に付け加えるとすれば、「義務付けられているからやる、とただ実施するだけでは意味がありません。職場の課題を踏まえて取り組むことで、しっかりと効果を上げた事例が増えてきました。事例に基づく論文も出ています」とご案内しています。
北里大学医学部教授で、日本産業ストレス学会の理事長も務める堤明純氏は、ストレスチェック制度の検証や実効性向上に尽力され、職場のメンタルヘルス対策に関する論文・著書も多数出されている研究者です。
今年2022年(令和4年)3月に 厚生労働省が公開した「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」では、検討会の委員として作成に携わり、全国の事業場がストレスチェックを含むメンタルヘルス対策や、集団分析を活用した職場環境改善に取り組む際の参考となるよう、業種や事業場ごとの課題や解決のための工夫例をまとめられました。そんな堤先生に、今回『職場のストレス対策と職場環境改善』についてお話を伺いました。
働く皆様が心も体も健康に活躍できる環境を作り、企業業績の改善につなげるセミナーイベント「組織改善Weekオンライン」より、講演の模様をお届けします。
堤 教授:
皆さん、こんにちは。北里大学の堤と申します。
私のお話は少しテクニカルな部分になるかもしれませんけれども、ご関心のある方がお集まりかと思いますので、できるだけお役に立てるようなお話ができればと思います。
どうぞよろしくお願いいたします 。
では、画面共有してスタートをさせていただきます。
ストレスチェック制度は皆さんご興味がおありだと思いますが、できるだけ効果的に運用をしていただくためのヒントとなる材料を持ってきました。今日のお話は、だいたい三つのパートからなります。
最初はストレスチェックの位置づけということで、確認の意味でお話をさせていただきます。
皆さんもよくご存知のストレスチェックの流れでございます。
ストレスチェックの実施があって、このストレスチェックの結果を労働者にお返しになられると思います。労働者は結果をご覧になって、セルフケアに努めていただくというのがまず第一歩です。
ストレスチェックの中で、「高ストレス者」という形で抽出される方々がいらっしゃいます。その方々の希望を伺って医師らによって面接指導を行っていただいて、その方々のケアにかかるという流れです。
もう一つは、現在では努力義務ですけれども、今日のタイトルにもあります「職場の集団分析を職場環境改善につなげる」という流れがあります。この大きな二つの流れがあるのはご存知かと思います。
ストレスチェックの位置づけ
さて、職場のメンタルヘルスの中でのストレスチェックの位置づけということで、このスライドの中ではまとめさせていただいております。職場のメンタルヘルス対策には、「一次予防」「二次予防」「三次予防」という分け方があります。
「一次予防」は、病気にならないようにしようという主旨で、従業員や管理監督者の教育、それから職場環境改善があります。
「二次予防」は、スクリーニングとよくいわれます。早期発見、早期治療です。早期発見して、早期に対応すると予後がよいということで二次予防をします。
そして「三次予防」は、復職や、具合が悪くなってもそれ以上に悪くならないように、また元に戻れるようにといったところを三次予防といいます。
厚生労働省も公表しておりますけれども、ストレスチェックの位置づけ、主目的は一次予防です。
労働者のメンタルヘルス不調の未然防止が主目的であります。具体的に申し上げると、労働者にこの機会にストレスに気づいて対処していただく支援をすること。それから、ストレスの元を断つという意味で、職場環境改善が挙げられています。
そして、もう一つ「副次目的に二次予防」となっています。
先ほど少しご紹介しましたが、「高ストレス者」が抽出されます。中には医療的なケアが必要な方もいらっしゃいますので、そういう方々の早期発見、早期ケアといった意味で「二次予防」を挙げております。繰り返しますけれども、ストレスチェックの主目的は一次予防で、副次目的は二次予防です。
今日はこのお話をさせていただくことになります。
ご存知の『心の健康の保持増進のための指針』です。
職場でメンタルヘルス対策を進めていく上での計画を立てて、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフのケア」それから「事業所外資源によるケア」も組み入れて、職場全体でメンタルヘルスを進めていこうということで、皆さんそれぞれに役割を持っていただく。労働者、管理監督者、産業保健スタッフ、それから事業所外の資源の役割が挙げられています。
もうご存知だと思いますが、ストレスチェックはこの図の赤字の部分をサポートするという形になっています。
ストレスチェックをやるだけでメンタルヘルスがよくなるわけではなくて、職場でメンタルヘルスケアを進めていく上で、(スライドの)赤で示している部分を、ストレスチェックというツールを使って進めていくという考え方になるかと思います。
ストレスチェック制度の科学的根拠とは?ーストレスチェックにはエビデンスがある?
さて、ストレスチェック制度に関しても医学的根拠が積み重なってきております。
そのいくつかを今日ご紹介する予定でございます。
まず、二次予防です。早期発見、早期治療に関してどのようなエビデンスがあるか、もしくはないかということを紹介して、その後に集団分析に関連するエビデンスをご紹介します。
二次予防に関連して、先程ご紹介しました「スクリーニングとして、どの程度『職業性ストレス簡易調査票』が使えるか」について研究が行われています。また、この「職業性ストレス簡易調査票」で「高ストレス者」が抽出されますが、その抽出された方々がいかに将来的に具合が悪くなるかに関しても、調査が行われています。
さらに、ストレスチェックを行ったあと、多くの会社ではストレス調査結果を労働者の方に返却し、その上で面接指導を行うなど色々なフィードバックをされていると思いますけれども、そのフィードバックについてもいくつか知見がございます。
ストレスチェックで多く使われているものとして、「職業性ストレス簡易調査票」があります。
こちらは平成7年から11年、当時の労働省が大きな研究を行いまして、現在使われているストレスチェックの調査票を作成しました。計57問で回答時間は約10分程度でできます。
職場での「心理的な負担の原因」、労働者の「心身の自覚症状」、そして、いわゆる負担から自覚症状に影響を与える「修飾要因」が測定できるため、予防に有効に利用できるということで調査票が作成されています。
もう一つ、この調査票の利点は、この中の12項目を使って「仕事のストレス判定図」を作ることができて、職場のストレス度を可視化できます。
「仕事の量的な負担」と「仕事のコントロール」という軸があって、職場の状況が、標準的な値からどの程度離れているかが見えてきます。例えば、スライドの左の図で、黒丸(●)の位置を見てみると、「仕事の量的負担」が高く、「仕事のコントロール」が低い職場だということを表す図ができます。
右の図は、横軸が「上司の支援」・縦軸が「同僚の支援」で、◇が標準(全国平均)です。
標準から見て、「上司の支援」が大分下がっている職場であることを示しています。このデータを基に職場の改善をしていきます。
量的な負担を減らしていくか、コントロールを上げるか。ベクトルとしては図の白い方に持って行く方法を考えます。支援の図も同じです。「上司の支援」「同僚の支援」を向上させて、同じく図の白い方に持っていくことを考える。これが職場環境改善の考え方です。そのツールとして「仕事のストレス判定図」がございます。
さて、スクリーニングの話ですが、こちらが「高ストレス者」を選定するときのストレスチェック上でのイメージです。
労働者の「心身の自覚症状」が一定程度高いグループと、職場の「心理的な負担の原因」と「労働者への支援」の具合が悪い状態、いわゆるストレスフルな職場を得点化して集め、図のように逆L字型を作ります。
この①②のグループに該当する方々が、好ましくない状況にあるのではないかということから、ストレスチェックでは「高ストレス者」という形で定義されています。
では、この高ストレス者のスクリーニング(網掛け)がどの程度有効なのかのご紹介です。
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〔参考文献・関連リンク〕
- 厚生労働省:ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて
初出:2023年03月02日 / 編集:2023年05月29日 |