「職場環境改善」はすぐできる?集団分析で見えてくる職場の改善点:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム

「職場環境改善」はすぐできる?ストレスチェックの実施と集団分析で見えてくる職場の改善点

「職場環境改善には、増員や設備投資が必要ではないか」と感じる人事労務担当の方は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか?

全従業員数が50人に満たない法人企業・団体や、全体としては50人を超えるものの店舗など複数拠点(事業場)の従業員が50人に満たず、労働安全衛生法の改正から初めてのストレスチェック実施に向けた情報収集を行っているご担当者で、「人手も時間も予算にも余裕がない」と頭を抱えている方が多いのではと思われます。

しかし、改善の対象は設備だけではありません。
仕事の分担、指示の出し方、相談のしやすさなど、日常業務の見直しから着手できるものもあります。その手がかりになるのがストレスチェックの集団分析です。

ただし、ストレスチェックの集団分析を行えば、職場のストレス要因や解決策が自動的にわかるわけではありません。

ここでは、厚生労働省資料で「小規模事業場」の名称で情報掲載する従業員50人未満の法人企業・団体、並びにこれまで諸事情からストレスチェックの実施を行っていなかった法人企業・団体のご担当者に向けて、厚生労働省の公式サイトや関連機関が発信する情報を参考に基本的な進め方をまとめてみました。
 

ストレスチェックは「実施して終わり」ではない

ストレスチェック制度の主な目的は、メンタルヘルス不調の未然防止です。
従業員本人のストレスへの気づきとセルフケアを促すとともに、必要な医師の面接指導や就業上の措置、集団分析を通じた職場環境改善につなげます。

精神疾患の診断や、不調者の選別を目的とする制度ではないことにご留意ください。
 

労働安全衛生法施行に基づく2015年12月のストレスチェック制度施行以来、常時50人以上の従業員(労働者)を使用する事業場では、年1回のストレスチェック実施が義務付けられています。

50人未満の事業場も、これまで「ストレスチェック実施は不要」だったわけではなく、「努力義務」となっていました。これが、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法によって2028年4月1日から従業員数にかかわわらず義務化されることとなります。

一方、集団分析とその結果に基づく職場環境改善は、従業員数などを含む事業場規模にかかわらず「努力義務」です。「実施義務」と改善に向けた「努力義務」を区別して理解する必要があるものの、しましょう。

改善すべき“職場環境”とは?
手を付けやすい改善は、結果が「見える」ところから

米国・国立労働安全衛生研究所(NIOSH)※(1) は、職場環境等の改善を通じたストレス対策のポイントとして、以下のようなことを挙げています。
 

  1. 過大あるいは過小な仕事量を避け、仕事量に合わせた作業ペースの調整ができること
  2. 労働者の社会生活に合わせて勤務形態の配慮がなされていること
  3. 仕事の役割や責任が明確であること
  4. 仕事の将来や昇進・昇級の機会が明確であること
  5. 職場でよい人間関係が保たれていること
  6. 仕事の意義が明確にされ、やる気を刺激し、労働者の技術を活用するようにデザインされること
  7. 職場での意志決定への参加の機会があること


特に仕事に求められるスキルや専門性に見合う裁量度は「仕事によるストレス」の緩和・減少に影響するようです。

職場レイアウトの改善、チームワークや小グループ活動の活性化、作業のローテーション化が従業員のストレス緩和に効果的だとする国際労働機関(ILO)※(2) の報告もあり、職場環境改善によってインシデントや業務上必要な報告・コミュニケーションの心理的ハードルを下げる効果が期待されるとしています。

また、職場環境等の改善というと、 組織、人間関係などを想像する方が多いと思われますが、労働時間や作業方法・照明や空調、レイアウトといった「物理的な職場環境」も改善の対象です。特に作業環境の改善・再検討は「やりにくいな」「面倒だな」 と知らず知らずのうちにためているストレスやヒヤリハットの事案防止に有効です。
 

※(1)国立労働安全衛生研究所…
National Institute for Occupational Safety and Health: NOISH。
米国・保健社会福祉省(United States Department of Health and Human Services: HHS ※保健福祉省、厚生労働省と訳されることも)管轄下の疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)内の1組織。1970年に米国・労働安全衛生法(Occupational Safety and Health Act: OSHA)の法制化を受けて創設され、以来、米国内の労働安全衛生分野における研究、情報、教育、および訓練の提供を通じて、働く男女のための安全で衛生的な労働環境の確保を支援することを目的とした研究および勧告を行っている。
 
※(2) 国際労働機関…
International Labour Organization: ILO。
1919年に国際連盟内で創設された後、1946年に国際連合(現・国連)初の専門機関となった歴史を持つ、労働基準の制定を通じて世界中の労働者の労働条件ならびに生活水準の改善を目的とする専門機関。スイスのジュネーブに本部を構える。すべての女性と男性にディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を実現することを目指した労働基準を定め、政策プログラムを策定している。同期間が定める「国際労働基準」は、加盟各国の担当当局が労働政策を実施する際の指針としている。
 

 

職場の改善点を“集団分析”からチェック

職場や部署単位でストレスチェックの結果を集計・分析することにより、ストレス負荷の高い部署やその原因を探るのが「集団分析」です。 集団分析は「努力義務」とされていますが、できるだけ実施することが望まれています。

集団分析の結果を見るときには、部署の業務内容や労働時間などストレスチェック以外の他の情報と合わせて評価をすることが重要となります。仕事量や精神的な負担が高い業務が偏っていたり、社会的な支援や 周囲からのサポートが得にくい場合には、 関係する 部署・企業全体での環境改善が必要です。

改善策を考えるにあたり、働く人のメンタルヘルスポータルサイト「こころの耳」では、職場改善に使えるツールやヒント集、改善策の有効性を図るメンタルヘルスアクション・チェックリストを公開しています。
その中からいくつかを見てみましょう。
 

  • 少人数単位の裁量範囲を増やしたり、一人当たりの作業量を減らしたりする
  • 必要な情報が全員に正しく伝わるような場を設ける
  • ノー残業デーの運用などにより、長時間労働の恒常化をなくす
  • 繁忙期の仕事の負荷が過剰にならないよう、人員配置を見直す
  • 個人の生活条件に合わせたフレックスタイム制を導入する
  • 仕事をしやすいように、仕事場のレイアウトを変える
  • 空調・照明・防音などに工夫して、快適に作業が行えるようにする
  • 受動喫煙防止のため、分煙を行う
  • 快適で衛生的なトイレ・更衣室を確保する
  • 社内でコミュニケーションが取りやすいよう、情報共有体制を整える
  • 懇親会や研修を通じてチームワーク作りを進める
  • 従業員が仕事に対する適切な評価を受け取ることが出来るようにする
  • 悩みを相談するための窓口を設けたり、セルフケアのための研修を実施する
  • 従業員に昇進やキャリアアップの機会を公平に与える
     


いかがでしょう、明日から使えるアイデアはありましたか?

なお、厚生労働省では、働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」や同省サイト、所管する独立行政法人 労働者健康安全機構のサイト上などで、職場環境の整備・改善を希望する中小企業や事業者に向けたさまざまな資料を提供しています。
 

  

 

〔参考文献・関連リンク〕

初出:2015年12月11日 / 編集:2026年10月28日

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