ストレスチェックの集団分析:職場環境改善着手前に確認したい「集団分析の使い方」

ストレスチェックの集団分析③:「職場環境改善スタート!」の前に確認したい、集団分析の使い方

集団分析をせっかく実施したのに
「分析結果に基づいていない・いつもの改善案しか出ない」
「改善案を立てたのに、なんだかみんなが非協力的・目標がいつも達成できない」

ではもったいない!

集団分析をすぐ職場環境改善に活かすためには、分析の方法だけではなく「実施の準備」や「目標の立て方」にもちょっとしたコツが必要です。

集団分析を職場改善案に上手に活用するための、人事・労務ご担当者が実践できる “コツ” について、2021年2月9日に開催したエムスリーキャリア共催「職場改善・産業保健オンラインセミナー」で解説した内容から抜粋してご紹介します。
 

当記事関連のオンラインセミナー開催!

 

 

信頼できるデータが取れていますか?

職場改善の対策案を考える際に、用いるデータが正確であればあるほど「結果の出る対策」へとつながります。そのためには分析や検討の方法だけでなく、いかに正確なデータが得られるかに関しても注意をしましょう。

特に「受検率」は大きな指標です。

80%以上あれば十分に信頼できるデータと取れますが、なるべく90%以上あることが理想的です。「ストレスチェックの実施」の周知・励行は毎回しっかり行いたいですね。

「受検率が低い」ことの裏側には、
「ストレスチェックの結果の取り扱いに不安を感じる」
「受検はしたけど、回答方法がわからなかった・設問を飛ばしてしまった」

という従業員がいることも考えられます。

ストレスという「個人の内面」を取り扱う以上、「この回答によって評価が変わるのでは?」と感じる人もいることでしょう。

「見えない」「感覚的な」データを採取する際にはなるべく素直に偽りなく答えてもらうことがデータの前提条件になります。また、不完全なデータが多ければ多いほど分析結果の信頼性も下がってしまいます。

結果の取り扱いには、不安を感じる人がいることを念頭に実施方法・結果によって不利益な取り扱いが生じないことを事前に、充分に周知しましょう。
 

数値化されたデータは図示・グラフ化しましょう

ストレスチェックは「見えないストレスを定量化」できるシステムです。得られたデータはより分かりやすくなるように「グラフ化・図解化」をしましょう。

各点数をグラフにすることで、直感的に把握しにくい数字データも視覚化されて比較・整理がしやすくなり、数字の意味や傾向・状況が人事労務以外の部署担当者でも直感的に理解しやすくなります。

お勧めは「総合健康リスク」と「高ストレス者割合」を用いた「分布図」の作成です。

各部署のストレス原因が「職場」「個人的背景」のどちらにあるのかと、「対応の優先度」との2軸で表現され、同じデータ・同じ傾向にあるような部署のストレス状況を一目で把握できます。
 

「健康総合リスク」と「高ストレス者割合」から、対策優先度の高いグループと講ずるべき対策の傾向を把握することができます。
 

持続的な職場改善策の実施を目指しましょう!

職場環境改善は、短期目標で達成できるものが少なものです。

「継続して続けられる」「習慣として定着させる」ためには、「できる目標」を設定し、成果が実感できる・達成感が得られる環境下でモチベーションを維持する必要があるでしょう。

職場環境改善の目標、特にストレスや人的関係に関わるものは「一般的・イメージ的」なものでストップしてしまいがちになります。

継続のためには、イメージ的な目標からさらに一歩、より具体的に踏み込んだ「ステップ」を設けましょう!

明日からできる・誰でもできることから小さくステップを設定することで、「自分でもできた」「今日もできた!」という達成感が生まれます。
「自分で変えることができる・会社は変わることができる!」という実感がより大きな目標に挑むベースになります。

また、より具体的で実行可能なステップを立てるためには、目標の立て方に注意が必要です。

参加人数の大きなグループになるとデータはより「平均」に近くなり、特徴が見えにくくなります。
また、自部署と近しい部署と比較すると、
「あのデータの特徴は○○さんでは?」
「▲▲部の傾向はあの部特有のものだから、うちの部署の参考にはならないだろう」
と特徴の要因を個別のものとしてとらえてしまうケースがあります。

目標を立てる際には、自部署が今会社の中でどの位置にいるのかを見つけることが大切です。

そのためには、「一つ上のサイズ」のグループとの比較が役立ちます。部署⇔部署だけではなく、部署⇔所属部門/部署⇔部署のある地域・似た業務内容でまとめたグループで比較分析を行ってみましょう。
 

 

 

 

 

 

初出:2021年01月29日 / 編集:2023年04月12日

関連記事

  1. M-ORIONプロジェクト:東京大学大学院医学系研究科デジタルメンタルヘル講座准教授・今村幸太郎氏セミナー「職場のメンタルヘルスにおける管理監督者の役割」

    【9月22日(金)16時】東京大学大学院医学系研究科 特任准教授・今村…

  2. ストレスに負けない働くオトナのメンタルケア:緊張を力に変えるために行いたい「サイキングアップ」とは

    緊張を力に変えるために行いたい「サイキングアップ」とは

  3. 12月6日(水)14時開始「ストレスチェック大賞2023」記念ウェビナー開催

    【12月6日(水)記念ウェビナー開催】ストレスチェックの活用と日ごろの…

  4. AltPaperストレスチェックキット(パッケージ)

    【サービス紹介】AltPaper(アルトペーパー)ストレスチェックキッ…

  5. 集中力を高めて業務効率アップ!「VDTガイドライン」を活用してテレワーク環境を改善

    集中力を高めて業務効率アップ!「VDTガイドライン」を活用してテレワー…

  6. 改めてチェック!ストレスチェック制度:『毎年の疑問』をピックアップ!ストレスチェックの実施後に企業が取るべき「対応」のポイント

    『毎年の疑問』をピックアップ!ストレスチェックの実施後に企業が取るべき…

  7. キングコング梶原さんが「飛んだ」心身症とは?しくじり先生で語った失踪事件の精神医療的考察

    キングコング梶原さんが「飛んだ」心身症とは?しくじり先生で語った失踪事…

  8. ストレスチェック制度義務化の背景

    ストレスチェック制度義務化の背景

Pick Up 注目記事 メンタルヘルスケアコラム
  1. “職場の常識”は非常識?ハラスメントにつながる「アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)」とは?:ハラスメント対策
  2. AltPaperストレスチェック業界平均値レポート2019を公開
  3. ストレスチェック業種平均値レポート2023:総合健康リスクは改善の兆しも、高ストレス者割合は増加傾向―「職場の支援」強化と「負担感」の軽減がカギ?
  4. ストレスチェック業種・職種別レポート2018:職種別高ストレスランキング
  5. AltPaperストレスチェック業界平均値レポート2021速報公開!
  1. 人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム:まずは知ってみよう、職場で見られる「メンタルの不調」の種類
  2. 「適応障害」と「うつ病」は違うの?その違いや、企業の対策を解説:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム
  3. 新型コロナ禍で「自殺者」が増えた?背景にある「つらさ」と企業ができる自殺予防策とは:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム
  4. 人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム:たまった気持ちも大掃除!「忘れる技術」を駆使してストレスの棚卸をしよう

最近の投稿記事