【製造業】高ストレス者割合ワースト1ほか、「働きがい」など複数項目で最下位。コロナ禍でも大きな変化なし?:AltPaperストレスチェック業界平均値2021レポート

本コラムでは、「運輸業」「宿泊業・飲食サービス業」に続き、高ストレス者割合・総合健康リスクともにハイリスクと見られる結果が出ている「製造業」について、解説いたします。
当社発表の「ストレスチェック業界平均値2021」の結果に加え、現場からの声や業界が直面するリスクとその特徴を交えて分析します。ストレスチェックの集団分析結果から「職場環境改善につなげる」ポイントも併せてお伝えしますので、ぜひご自身の職場環境を振り返る際の参考にしてみてください。
 

※株式会社情報基盤開発は、2021年中に「AltPaperストレスチェックキット」をご利用いただいたお客様からデータをご提供いただき※1、「高ストレス者」※2の割合・「総合健康リスク」※3・「各種ストレス尺度」について業種別に平均値を算出した 「ストレスチェック業界平均値レポート2021」を公開いたしました。(【調査方法】 については、記事の末尾に記載しております。)

 

製造業の業界平均値、「働きがい」「同僚からの支援」「家族・友人からの支援」「職場環境によるストレス」がワースト1!?

「製造業」はかなり幅広い職種が対象となり、2021年平均で約1,037万人、全就業者(男女計6,667万人)の約16%を占める大きな業界です。当社のストレスチェックでも最多の366企業88,674名の方にご協力いただいております。

そんな「製造業界」で働く方々のストレスチェックの結果を、まずは当社サービス「AltPaperストレスチェックキット」をご利用の皆様からご提供いただいた2021年中の実施データを通して、見ていきましょう。
 
「製造業」の2021年度業界平均値は、総合健康リスク112高ストレス者割合17.8%となりました。

業界平均値(全体)と「E. 製造業」の高ストレス者・総合健康リスク

A. 農業・林業, B. 漁業, D. 建設業 E. 製造業 F. 電気・ガス・熱供給・水道業 G. 情報通信業 H. 運輸業, 郵便業 I. 卸売業, 小売業 J. 金融業・保険業, K. 不動産業・物品賃貸業 L. 学術研究, 専門・技術サービス業 M. 宿泊業, 飲食サービス業 N. 生活関連サービス業, 娯楽業 O. 教育, 学習支援業 P83. 医療業 P84-85. 保健衛生、社会保険・社会福祉・介護事業 Q. 複合サービス事業、R. サービス業(他に分類されないもの), S. 公務(他に分類されるものを除く) T. 分類不能の産業


昨年度以前から引き続き、総合健康リスク・高ストレス者割合ともに全国平均(総合健康リスク:100、高ストレス者割合:10%)や他業界と比較しかなり高い(不良な)傾向にあります。特に高ストレス者割合は15%を超え、全業界中最も高く、注意が必要な事業場が多くあったとみられます。
上のグラフは、全体(男女総合)の結果を数値化したものですが、男性の高ストレス者割合は20%に迫るほど(男性:19.2%、女性:14.5%)高い数値でした。

業界平均値の各尺度(「E. 製造業」)

各尺度ごとに比較すると、「自覚的な身体的負担」「同僚からの支援」「家族・友人からの支援」に、男女ともに注意が必要な値がでていることが特徴です。 心身のストレス反応の項目では「身体愁訴」が、男性に限っていえば「抑うつ感」「不安感」「疲労感」なども総じて平均を下回っています。この数値は、「なんとなく体調がすぐれない」「病院に行くまでではないが、元気はつらつな状態ではない」など、すでに心身の不調を抱えながら働いている方が多くいらっしゃることを示しています。
 
その他、業界の特徴的な面が多く出ている部分としては、「技能の活用度」が男女ともに不良である点が挙げられます。同一の現場であっても事務・製造ライン・品質管理・技術研究などさまざまな職種が含まれるため一括りにすることはできませんが、「自分の貢献度がわかりにくい」「働きがいを見出しづらい」と感じている方がいらっしゃることが結果から読み取れます。
生産工程従事者や、単純作業・決まった作業の繰り返しが業務の大部分を占める方は、業務の特質上「スキルを身につけられている実感が得にくい」「実績や貢献度がわかりにくい」部分があるため、ある程度「技能の活用度」 が低く出てしまうのは想定できます。その場合、「働きがい」の数値には、その仕事や普段の生活に満足しているかどうかも関係してくると考えられます。身の回りに起こる「ストレスとなる出来事」をストレスと感じるか否か(ストレスの感受性)や、ストレスを上手く処理できる力(ストレス耐性)には個人差がありますが、一般的に、「働きがい」 を見出すことが難しい場合、ストレスを感じやすくなる傾向にありますので注意が必要です。
 
上記のグラフでは、男性に比べ、女性の方が「働きがい」の値はよい結果となっていますが、実は男女合わせた全体の数値を他の業界と比べてみると、製造業界の「働きがい」の数値(48.7)はワースト1です。すでに特徴として挙げた「同僚からの支援(47.3)」「家族・友人からの支援(47.5)」 に加え、「職場環境によるストレス(48.7)」も同じく、全業界中最も不良な数値が出ている点は、管理監督者の方々には特にお伝えしておきたいポイントです。
 
なお、全業界通して最も多くの企業様にご協力いただいている「製造業」界の2021年ストレスチェック受検率は、90.08%でした。もちろん各企業様ごとに異なりますが、全体として9割以上の方々にご回答いただけたということになります。この結果からは、従業員の方々がストレスチェックに協力的で、信ぴょう性のあるデータとなっている可能性が高いことがいえます。
ストレスチェックの集団分析は、回答者数が多ければ多いほど、各事業場の傾向を正確に把握することができます。せっかくのストレスチェックをやりっぱなしで終えることなく、職場環境改善等に効果的に活用するためにも、この高い受検率を維持していただき、さらなるご周知を進めていただけるようお願いいたします。
 

職場環境改善のポイントは?「高ストレス者予備軍」と 「組織の疲労体質改善」対策

高ストレス者割合の高さと、他の業界と比べて不良な値となっている項目を総合して考えると、 次の5項目を優先して職場環境改善に取り組むとよいでしょう。

「身体愁訴」
「働きがい」
「同僚からの支援」
「家族・友人からの支援」
「職場環境によるストレス」

それぞれの職場の環境や業務内容、人間関係、仕事だけでなく私生活も含めた個々のストレス状況により必要な対策は異なりますので一概にはいえませんが、
・心身の負担をきちんと回復する時間の確保と、それができる環境
・ストレスをため込まず、周囲に打ち明けることのできる関係性

これらを職場内に浸透させる「組織の疲労体質改善対策」が必要です。
 
例えば、定期的な休暇取得の推奨、各人の残業やノルマ・労働時間を見直すなどの対策は、従業員それぞれが心身の負担を回復する時間を確保できるだけでなく、仕事以外に目を向け交流をする機会を増やすことにもつながり、「家族・友人からの支援」も得やすくなります。
 
職場内のコミュニケーションや、従業員同士の関係を円滑にすることに意識を向けるのも効果的です。安全・衛生管理上、勤務中は雑談やコミュニケーションが制限されている現場もあるでしょう。かといって、人間関係が円滑でないと同僚や周りからの支援が十分に得られず、結果的に業務に支障をきたし、ミスが発生してしまうリスクも高くなります。そのような状況では、心身の不調を感じていたとしても周囲に打ち明けづらくなるだけでなく、チームの一員として組織に所属している・貢献しているという実感すら持てず、「働きがい」を見出しにくい環境になってしまうでしょう。
自分の担当する仕事や業務外の悩み・不安も含めて、気軽に相談できる場や機会を定期的に設けることや、一緒に働く同僚同士お互いに気を配り、意識的に声かけをするなど、協力して仕事を進めるために必要な職場環境づくりに積極的に取り組むことで、改善が期待できます。

また、すでに身体愁訴(なんらかの身体の不調)が表れている方は、「高ストレス者予備軍」である可能性もありますので、日ごろから従業員のケアも大切なポイントと思われます。不調を抱えたまま就業することは、働くことへの不安やイライラ感、疲労感にもつながり、ケアレスミスの増加や作業効率・集中力の低下が危ぶまれる状態、つまり【プレゼンティーズム(presenteeism)による生産性の低下】などを引き起こします。不調が本格化する前に未然に防げるよう、産業医やメンタルヘルスの専門家に相談できる体制を整えることも検討してみてはいかがでしょうか。
 

コロナ禍、業務負担増加を実感した事業場も。業界平均値への影響は?

製造業界、雇用は減少傾向。 業務量・環境の変化は業界問わずストレス要因に。

2020年後半から2021年にかけてを振り返ると、新型コロナ感染症流行の影響により、生産規模の縮小や業務の遂行方法の検討を迫られるなど、合理化やコスト削減を行わなければならない苦しい状況にあったことは記憶に新しいかと思います。
厚生労働省の公表している「労働経済動向調査」でも、令和2・3・4年度は「正社員・パートタイムの雇用が減少した」と回答する企業が多くあったとの報告があります。コロナ禍でメンタル不調者の増加がみられていることも、経済的な不況や雇用契約の不安定さなどからくる不安感や、人員削減による負担の増加とも無関係ではないでしょう。

当社のお客様からも、

  • 「生産規模の縮小に伴い、先行きが見えない中で期間工の雇い止めを行った。その後、急速に需要が回復したため改めて新規採用を行ったが、新人教育と業務量の増大の2つの対応に追われた現場に負荷が一気にのしかかり、ストレスが高まっていった」
  • 「中国の物流の乱れから、サプライチェーンが毀損。それが生産管理に支障をきたして現場が混乱し、納期調整や生産品のラインの組み換えなどの対応で残業が発生した」

といった、現場の実状をうかがう機会があり、コロナ禍で製造業界が直面した課題やストレス状況がとてもよく伝わってきました。
これは、おもに自動車部品工場や精密機器メーカーなど輸出入の影響を強く受けた現場の方の一例ではありますが、人員削減分の業務調整や負担が、残った従業員の肩にのしかかる……と、頭を悩ませた現場も少なくなかったことと思います。
 
実際、新型コロナウイルス感染拡大の影響下では、複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった」「上司が不在になることにより、その代行を任された」などの出来事が、それ以前と比べてより強いストレスとなっている可能性が示唆されている調査結果もあります。さらに、ハラスメントなどを含む上司・同僚との関係性のトラブルをはじめ、給与の大幅な減少や、非正規雇用労働者であることによる雇用契約への不安などについても、職種・業界に関係なく、強いストレスとなっている傾向にありますので、ストレスが高まる要因として意識しておく必要があるでしょう。
(参考:一般社団法人 日本産業精神保健学会「令和 2 年度 ストレス評価に関する調査研究報告書」)
 

製造業の業界平均値、コロナ前後で大きな変化なし?

こうした現場の実感が聞こえてくる一方で、当社発表の「ストレスチェック業界平均値」の推移を見てみると、新型コロナウイルス感染症の流行以前から、総合健康リスク・高ストレス者割合ともに不良な数値が目立っていた製造業界は、数値上、大きな悪化はみられませんでした。2020年に関しては、「仕事の質的・量的負担」が一時的に若干改善し、平均を上回る数値(もしくは、同程度)となったものの、2021年はコロナ流行以前とほぼ同じ値に戻り、依然としてストレスが高い状態が続いているようです。
 
いずれにしても、さまざまな社会情勢・職場環境の変化に関わらず、普段の業務内容や職場の環境からくるストレスの負担感を少しでも軽減し、その負担感が実際の体調不良や心身の健康を阻害してしまう前に、できる対策から始めることが各企業に求められているのではないでしょうか。

なお、この数値にはコロナ禍で職を離れざるを得なくなったり、勤務時間・雇用形態が変わりストレスチェックの受検対象でなくなってしまった方(休職中の従業員も含む)は含まれていない可能性があるため、ストレス状況の変化を正確に比較することは難しく、あくまでも数値上の分析として考えていただければと思います。
そして、今回の「製造業」の業界平均値の分析と併せて、それぞれの現場の状況やストレス状況の変化を、日ごろのコミュニケーションやストレスチェックの集団分析等でご確認いただくことをおすすめいたします。
 

「ストレスチェック業界平均値2021レポート」資料を無料ダウンロード配布中

下記フォームよりお申込みいただくと、「ストレスチェック業界平均値2021レポート」資料(PDF)をメールにて送付いたします。

 

【調査方法】
この度算出いたしました2021年「業界平均値」データは、当社サービス「AltPaperストレスチェックキット」を2021年中にご実施いただいた事業者を対象に、集団分析結果のご提供の承諾を個別に伺い、同意いただいた事業者のデータのみを用いて分析を行ないました。
2021年12月末日までに当社で集計を完了した1525事業者の男性207,679名、女性162,568名を含む約37万名のデータが含まれます。
※2021年単年の「AltPaperストレスチェックキット」導入事業者数は約33,00法人、受検者数は約90万人比較の基準としている「全国(厚労省データ)」は、“厚生労働省科学研究費補助金労働安全衛生総合研究事業「職業性ストレス簡易調査票及び労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリストの職種に応じた活用法に関する研究」平成19年度総括・分担報告書 表4 職業性ストレス簡易調査票下位尺度の職種別平均値及び標準集団との比較”が出典です。

集計につきましては、事業者様のデータについて全参加者データ・男性参加者データ・女性参加者データの3軸に分け、高ストレス者の出現割合、健康リスク、各尺度の平均値を業種ごとに算出しました。なお全参加者データにつきましては、「男性」の基準値を用いて総合的な数値の算出、比較・分析を行っております。
 
※1 データの取り扱いについて:
・各事業者様にご提供いただいたデータにつきましては、業種・規模・地域をお伺いして分類することとし、個々の事業者様・受検者様を識別できないようにして取り扱っております。
・各受検者様の回答につきましては、性別・職種と57項目・80項目の回答データのみ使用することとし、個人を識別できないようにして取り扱っております。

※2 「高ストレス者」とは:
厚生労働省(令和元年7月)が公表したマニュアルに基づいており、以下(1)及び(2)に該当する者を指します。(1)及び(2)に該当する者の割合については、概ね全体の10%程度を基準とします。
 (1)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が12点以下
 (2)「心身のストレス反応(29項目6尺度)」の合計が17点以下で「仕事のストレス要因(17項目9尺度)」
  及び「周囲のサポート(9項目3尺度)」の合計が26点以下

※3「健康リスク」とは:
基準値として設定された全国平均値100からどの程度乖離しているかで算出されます。また、健康リスクの数値を表す「仕事のストレス判定図」とは、 男女別に求められた量-コントロール判定図と職場の支援判定図から構成されます。この二つの調和平均が「総合健康リスク」となります。

 

 

 

 

 

〔 参考文献・関連リンク 〕

初出:2022年10月04日

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