「共感疲労」とは?つらいニュースから心を守る対処法:人事・労務担当者のためのメンタルヘルスケアコラム

「共感疲労」とは?つらいニュースから心を守る対処法

「共感疲労」という言葉を聞いたことはありますか?

今はインターネットやSNSを通じ、リアルな情報がどんどん入ってきてしまう時代です。
戦争や災害、衝撃的な事件・事故などが起きると、自分が求めていなくてもショックな映像やニュースが次々と流れてきます。情報に接するなかで不安な気持ちになったり、眠れない・憂うつな気分になった経験はありませんか?それは「共感疲労」からくる症状のひとつかもしれません。
 

共感疲労とは?ー誰にでも起こる可能性がある「ストレス反応」

共感疲労とは、他者が経験した困難な出来事やトラウマに共感することで、自分が経験したことではなくても疲労を感じてしまう状態、心理的なストレス反応です。以前は医療や介護の現場に関わる人に多いとされてきましたが、最近は誰にでも起こる可能性があるといわれており、「ストレス反応」のひとつと考えられています。他には「思いやり疲労」や「思いやりコスト」と呼ばれることもあるようです。
 

<共感疲労の研究について>
もともとは、Joinson(1992)が看護師のバーンアウト(燃え尽き症候群)について、共感ストレスや二次的なトラウマ体験などに焦点を当てて言及したのが始まりといわれています。その後、Figley (1995)らが共感疲労の概念を確立し、「他者が経験したトラウマティックな出来事について知ることによって引き起こされる自然な帰結としての行動と感情 – トラウマを抱え苦しんでいる他者を助けることによるストレス」と定義。また、バーンアウトは感情的に疲弊してしまった結果徐々に現れるのに対して、共感疲労は何の前触れもなく急激に・短期間に発現し、症状回復ペースも速く、無力感や困惑・孤立無援感があると指摘されています。

 

まず知っておいていただきたいのは、共感疲労は「自然な心の反応」だということ。
特に感受性が強い人、気遣いができる人、使命感が強い人、過去にトラウマとなるような出来事があった人などはこうした反応が起こりやすいといわれます。
しかし、誰しも「衝撃的な映像・音などを繰り返し見聞きすることは、ストレスを高めてしまう」原因となりますので、自分で情報との付き合い方を考えることが必要だと指摘されています。
 

共感疲労の対処法は?ー自分の心を守るために必要なこと

では、実際に「もしかしてこれは共感疲労かな?」と感じたら…どう対処すればよいのでしょうか。
もし今はまだ感じていなくても、今後の自分の心と身体を守るために、対処方法を知っておくことは大切です。
 

 

  • 必要な情報を得たあとは、なるべくテレビやSNSを無理に見ないようにすること

テレビのニュースやSNSは、災害現場や被害を受けた方の話などの映像が、繰り返し何度も目に入ってきます。必要な情報を得たあとは、なるべく無理に見ないようにすることも大切です。
 

  • ニュースのつけっぱなしもNG。情報はラジオや新聞から得ることを推奨

意識して見ていなくても、情報量が多く、比較的刺激の強い映像がつけっぱなしのテレビのニュース番組などから無意識に入ってくる状況は極力避けた方がよいでしょう。テレビではなく、新聞(活字)やラジオなどから情報を得ることも推奨されています。
 

  • 一定時間、パソコン・スマホから離れる時間を確保し、自律神経を休める

目や耳から入った情報やデジタルな光(ブルーライト)は、自律神経の緊張に影響します。そのため、共感疲労の予防に限らず、日ごろから「一定時間、パソコンやスマホから離れる時間をつくる」ことは心身を整えるために不可欠です。
不安な気持ちが大きくなると眠れない、身体が凝るなど全身に何かしらの反応があらわれることも多いので、自分なりのリラックス方法を持っておくとよいでしょう。
 

  • 睡眠・栄養・適度な運動。いつもどおりの日常生活を送ることを意識する

なるべく、いつもどおりの日常生活を送ることを意識していただければと思います。
美味しいものを食べて、きちんと睡眠をとり、適度な運動をすることが肝心です。
「辛い状況にある人たちがいるのに、自分は楽しんでもよいのだろうか」など、罪悪感や自粛ムードが起こりがちですが、まずは自分のケアをすることが、ストレスケアの基本になります。一人で抱えずに誰かに打ち明けることができる場合はそれも大切。自分の心を大切にできてはじめて、周りや誰かのために行動できるのです。 
 

共感疲労を防ぐための基本は、”普段よりも自分に優しく

 

共感疲労を防ぐための基本は普段よりも自分自身に対して思いやりを持ち、温かく接してあげることが大切だといわれています。
この点はセルフケアなど個人の対処に限らず、ときに会社など組織的な協力・取り組みが必要な場合もありますので、人事労務のご担当者の皆さまは知っていただけたら幸いです。
 
地震や津波など自然災害の多い地域に住む私たち日本人は、将来的に自分の身を守るためにも、被災地の状況や教訓は知っておく必要があります。その一方で、特に近年問題視されているデマや憶測による不確かな情報、良くも悪くも意図的に編集されたニュースや偏向報道も少なくないのが実状です。なかには、新たな被害を引き起こしかねない危険性も潜んでいます。
無作為に飛び込んでくる情報に惑わされずに、きちんと信頼できる複数のニュースソースから現場で起こったことを多角的に捉え、一呼吸おいて正しく認識・伝達することが大切です。
 
共感できる力はとても素敵なことですし、その共感が大きな強みになって人を動かすことがあるのも事実。その上でビジネスパーソンにとっては尚のこと、「情報に触れる頻度と量を自分でコントロールすること」もメンタル不調を予防する確かな手立てになるのではと考えます。

今回ご紹介した共感疲労への対処法を参考にしながら、まずは意識的にセルフケアを行うことが第一歩となりますが、従業員の方から辛い気持ちや症状が長引いているといった相談を受けた際には、専門の産業医や医療機関等にかかることを勧めてください。
 

 

〔参考文献・関連リンク〕

  • Joinson, C. (1992): Coping with compassion fatigue. Nursing, 22(4), 116-218.
  • Figley CR.(Ed.)(1995):Compassion fatigue,Coping with secondary traumatic stress disorder in those who treat traumatized,Brunner/Mazel,New York,p1-20,1995.
  • Figley, C.R. (1999) :Compassion Fatigue: Toward a New Understanding of the Cost of Caring. In: Stamm, B.H., Ed., Secondary Traumatic Stress, Sidran Institute, Towson, MD, 3-28.
     

 

初出:2024年01月18日

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